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第9話 暗中模索すぎてヤバい!

 一体どれほどの時が経っただろうか

 先生が現れる条件を考えるため、思考の海に沈んでいた俺だったが、皆目見当も付かない手詰まりで(シロ)に縋りたいなぁと屑なことを思い始めた辺りでミリアの声が意識を海上へと引き上げた。


「全然関係ないんだけどさ、マリアちゃんの転移が無かったらもうちょっと残ってる人居たと思うんだけど、どうかな?」


「あ、確かにそうですね。 あれは何というかベストタイミングとしか言い様がないです」


 待ち続けているのも暇だったのだろう。

 シロが速攻で食いついた。


 まぁ先生の奇行により思考が真っ白になった状態でのマリアの転移だ。これを認識した殆どのクラスメイトはマリアが先に先生を捕まえてしまうと思っただろう。

 加えて最初に動いた《竜人族》の彼の行動も素早かった。マリアの転移から間髪入れずに教室から出たため、残された者達は、彼やマリアに先生が捕まってしまうと焦り始める。


 人間というのは行動する前にどう行動しようかとある程度の行動目標を定める。

 今回であれば先生が何処へ行ったのかのある程度の目星だ。

 しかし、彼らには時間がない。何せもう2人も動いており、しかもその内の1人はマリアだ。


 そうすると彼らは自分も早く動く為、自分の考えを作るフェイズを先に動いた2人の行動から予測することで短縮し、即座に動こうとする。


 先に出た2人は両方とも教室から出て行った。であればこの教室ではない本棟のどこかに行ったと考え、この教室以外をしらみ潰しに探し始めるだろう。


 つまり、あの思考が奪われていたタイミングでマリアの転移が無ければ、他の人達はもう少し状況を冷静に考える余裕が生まれたという事だ。


「確かになぁ、でもあそこで自分こそがって探しに行ったのはこのクラスの成長だと思うぞ」


「言われてみればそうだね。 私も前だったらマリアちゃんが動いた時点で競争心なんて出てこなかったもん」


 そういえば俺が教室でマリア殺しを宣言した時、ミリアは驚いてる側だったっけか


「ところでミリアはメア先生が出そうな方法思いついたか?」


「これがさっぱりでして、もう他の子が教室に戻ってきたら一緒に考えて貰えばいっかなとか思ってる次第です」


 こ、この女、他力本願かよ

 気まずそうに言ってはいるが大方内心は考える事が面倒くさくなっただけだろう。


 ……いや、悪くないな。現状手詰まりなのは間違いないし、藁と言ってもシロを掴んじゃ元も子もない。

 ならいっそクラスメイトを頼ると言うのもありじゃないか?


「俺もそうするかぁ」



 ──ヒントになる事はしないと決めたのに、ほんの少しだけだが頰が緩んでしまう。


(気づいてくれたんだ。流石レイさんとミリアちゃんだ!……っといけない、いけない。ポーカーフェイスよシロ)


 2人も親友の表情が明るくなった為に少し察してしまうが、見なかった事にして記憶から消しておく。

 頑張ってるシロの好意を無下にする事は、少なくとも彼らには出来なかった。



 暫くすると、最初に動いた大柄な男が教室へと帰ってきた。

 頰や手の甲からうっすらと見える青みがかった鱗、筋肉が特に発達している為、丸太のように太い腕と足、トサカに見立てたかのような黄色のモヒカンヘア。

 正直、その体格で真っ先に扉から出たという俊敏さには脱帽だ。


「お疲れ! メア先生は見つかったか?」


「メア先生……? あぁあの奇行教師メアって言うのか。 他はとこは全部探し切って残ったのがこの教室だったから来たんだが……居ないっぽいな」


 教室を見回し終えると直ぐに出て行こうとしたため慌てて


「待て待て待て! 多分先生はこの教室に居るから、取り敢えずこっちに来い!」


「あぁ? 一体どういう事だよ」


 怪訝な顔をして入るが、話を聞く気にはなったのだろう。マリアが座っていた席に腰を下ろす。


 さてさて何処から話したものだろうか


「えぇっと先に聞きたいんだが、なんですぐ教室から出たんだ?」


「何でってそりゃ先生を追ったからに決まってんだろ」


「なら俺たちが先生がここに居ると思った理由から話した方が良さそうだな。

 まず先生がドアを開けたところは覚えて居るか?」


「むしろ忘れていたらそういつの頭はネジが数本抜けてると思うぞ」


 わお辛辣


「そして先生の姿が消えた。 この後先生が何処へ行ったのかなんだが、まず真っ先に考えられるのはこの教室から出て行ってどこかへ行ったパターン。えぇっとすまん、お前の名前を忘れてしまったんだが、お前が考えたのはこのパターンだろ?」


 自己紹介の時言っていたはず何だが、他にあった事が濃すぎて完全に《竜人族》の彼の名前が抜けちゃっている。


 そんな彼だが、名前を忘れられていたはずなのに、口元を吊り上げ、にぃっと笑う。

 ぶっちゃけ顔がごつい事もあって犯罪を計画しているヤバい人にしか見えない。


「くくく……いやすまん、その通りだ。いや《ヒト族》屈指のバケモノさんでも忘れる事ってあるんだなと思ってな。それじゃ改めて

 ランキング89位 《竜人族》のガウルだ。

 改めてよろしくな」


「はぁ? マリアならともかく俺までバケモノ呼ばわりされる筋合いは無いんだが?」


「レイ君自覚持った方がいいよ? レイ君の戦い方って地味だけど十分バケモノじみてるからね? みんなレイ君と戦うと精神的に疲れるからすぐ倒してくれるマリアちゃんの方が相手にするのは楽だ〜って言ってたよ?」


 な、なんだと……


「……まじ?」

「まじ」


 即答……ですか……いや確かに性格悪いやり方だなぁって少しは思ったことあったけどさ……


「もういいよ……話し戻すぞ。んで俺達が考えているのがこの教室に先生が残っているパターンな。

 まぁなんでそんな事を考えているかというと……ミリアさんお願いします」


「は、はぁ!? 今私に振る!?」


 思いっきり目を開いてこっちを見るミリア。まさか振られるとは露にも思っていなかったのだろう。


「いやだって思い出してみるとミリアとここら辺の話ししてなかったじゃん? 俺と理由が違うかもしれないし」


「だったら先にレイ君から喋ればいいじゃん! 違ってたら私も言うから」


「えぇ……まぁそれもそうか。 んじゃ俺の考えな、まず先生が消えた理由だが、俺は2つ考えられると思っている。

 一つ目が教室の外に出た後どこへ行ったのかを分からないようにする為、この場合途中で魔法を解除するのが前提条件になる。

 ただなぁ、これだともし捕まったら威厳のいの字の無くなっちゃうからリスクが凄いし、幾ら実力者だからって20人に本気で追われて狭い校舎を逃げきれるとは思えないんだよなぁ」


 少し言い疲れて一息つこうとするとミリアが残りを引き継いでくれた。


「私もそう思うよ。 んでもう一個のパターンね。 実はこの教室にいましたーってパターン。

 一応扉はずっと閉めてるから途中で出たって可能性は省くね。こっちだと攻略法は2つで一個はトンデモ魔法を攻略する方法。 ただここら辺はさっき3人で話したんだけど、明らかに精霊魔法が使えるキャパを超えているんだよね。

 そんな理解に範疇外にあるような魔法を攻略するのは無理だし、そうなるともう一個が本命になってくるんだよね。それが先生を満足させて自分から出て来てもらうこと。よくよく考えると時間制限もしてなかったし、こっちの方が濃さそうなんだよね」


 気付けば引きつった笑みを浮かべたガウルが、お前らそこまで考えてたんだなとドン引いてらっしゃった。


 まぁだが、本気で捕まらないように動いている可能性は省いている。

 例えば教室から出た後にずっと魔法を発動したままだったりする可能性、こんなの無理ゲーだ。


「そういえば時間制限をしていなかったな。

 これで教室外に逃げてるパターンだと捕まえられる直前で辞める事も出来るのか」


 もし本気で実行したならメア先生は性根腐ってると言っていい。二度と敬語で話さない事を誓うレベルだ。


「いやもうこの教室で隠れたままって考えでいいと思うぜ? もし教室外にいるなら絶対姿を現してるんだろ?

 一応全部探し切ったけど、見つけてないし、誰も見かけて無いって言ってたからな」


「見落としてるっていう可能性と見かけたけど情報を渡したくなくて嘘をついている可能性があるな……とりあえず先生が現れる条件を一緒に考えてくれると嬉しい」


 ふーむ、外に行っている可能性もやはりあるかぁ。

 この教室に帰ってくる人が来るたびに同じ説明をして妙案が浮かぶのを待つしかない気がする。



 2人、3人と最後の捜索場所として教室に帰ってくる人に同じ説明をする。

 マリアを除く全員のクラスメイトへと説明が終わったが、先生の目撃情報は一切なし、話しに納得して教室に残って考えているあたり本当に誰も先生を見かけていないのだろう。


 これは片っ端から意見を出し合った方が良さそう。

 ギギーッっと椅子を引いて教壇へと向かう。みんなの視線が集まって心臓がどくどく言っちゃってるけど仕方ない。


 教壇からの光景って色々見えるけどパンツは見えないんだなぁ……

 せっかくのミニスカだし一人くらい見えると思ったんだけど……っとこんな事をする為に注目されにきたんじゃない。


「いきなりすまん。 もう全然思いつかんし、取り敢えず思いついた事があったら片っ端から言ってくれ。 3人寄れば何とやら、俺たちは19人も集まってるんだ。何か思いつくはずだ」


 みんな納得顔だが誰に喋ろうとしない。割と本気で誰も思いついてないのだろう。

 誰も意見を出さない事により、ちょっと前に立つのが辛くなってきた頃、ミリアが手を挙げる。


「さっすがミリア! 何か思いついたか!?」


「うーんごめん。思いついては無いんだけどさ、マリアちゃんは何処に行ったのかなぁって」


 ……完全に忘れていた。よくよく考えれば一番足掛かりになり得る人物じゃ無いか。


「えぇっと誰かマリアを見かけた人はいるか?」


 ……全員に呼びかけたが帰ってきたのは沈黙。 まじか……全員が本棟を探した筈だ。考え得るはこの本棟には俺たちの知らない場所がいる事か、


「この本棟にいない……?」


 誰が言ったのだろうか、呟きだった筈のその一言は嫌なまでにこの教室響き渡った。



「あらぁ、私はずっとここにいるわよぉ〜」



ここまで読んで下さった皆様に格別の感謝をm(_ _)m

次話は3/15日0時投稿予定です!

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