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711.~720.

711.

くしゃみをしたら鼻から鼻の穴サイズの赤ん坊が飛び出した。顔中真っ赤にしてオギャアオギャアと泣き叫び、うるさいったらないので握り潰してティッシュに包んで捨てた。その瞬間、何かを忘れてしまった。くしゃみの度に赤ん坊が鼻から飛び出て、潰して捨てる。そのたびに何か忘れた。


712.

這い寄ってきた混沌が、力任せに骨を切ろうとして刃毀れした包丁を弄ぶ。「ねえねえ知ってる?殺人犯の殆どはねえ、主食がパンなんだよ!パン食べちゃダメだよ!殺人犯になるよ!」口のない顔でも満面の笑みなのが良く分かる。「私は白米派なんで」「あらら、殺人鬼なのに変なの!」


713.

真夜中の洗面所、黒い鏡に映り込んだのは自分の顔だった。テレビやPC、ゲーム機がブラックアウトすると必ず映る、自分の顔。背後に幽霊の顔が、というのはよく聞く話。けれど私の場合、時々顔が映らない。今夜ついに見た。鏡の中の自分の顔が、すうっと闇の中へ消えていくところを。


714.

いつも大人しい飼い犬が異常に吠える声で目が覚めた。寝惚けたまま声のする方へ向かううち、吠え声は怯えが混じり、ついには絶叫に変わった。慌てて居間へ飛び込む。ギラギラと光る赤い丸い目。逆光に浮かび上がる大きな翼。暖かくなってきたから、秋に蛹になった夫が羽化したのだ。


715.

我が一族は必ず三つ子で生まれる。ひとりはまともな人間の姿、ひとりは死産、そしてもうひとりは名状し難い姿で。魂のない体に、冒涜的な弟妹が棲みつき、双子として育てられる。どちらが『ふたりぶん』なのかは誰も知らない。母は狂うか自殺するし、産婆は目を潰されているから。


716.

小鳥は寿命が短いから、すぐに死んでしまうよ。両親から何度も言われて覚悟は決めていた。鳥籠の底に落ちて冷たくなった小鳥を優しく取り出し、丁寧に首を切り落とす。貌のない黒いおじさんがくれた針と糸で、首のない母に縫いつける。ピピピと鳴きだす。これで数十年一緒にいられる。


717.

桜が散り続けている。アスファルトの路面をピンクに埋め尽くしてもなお止まぬ花びら。雪のように降り積もり、車も人も歩けなくなり始め、やっと人々は異常に気づく。益々舞う量が増し、外に出られなくなり、ついには陽光も遮られて―雪が降り始めた。ピンクと白が世界を埋めていく。


718.

空からブランコが下がっていた。頑丈そうな鎖は、青い空の中に曖昧に溶け込んでいる。でもどうやって乗るのだろう。座面が顔ぐらいの位置にあるのだが。手でそっと押してみる。軽い手ごたえ。キーィキイと揺れて、止まった。強く押す。ギイイイギイ。揺れる。誰か乗っているみたいに。


719.

シーモンキーを買ったつもりだったのだが、水槽の中に大発生したのはクトゥルフの落とし仔だった。オリーブオイルで調理可能と聞いたが、育てるうちに愛着が生まれ、今や庭の池いっぱいに触手をびちびち振り回している。隣家を襲って人を喰うようになったがそれもまた可愛い。


720. #滅亡モンスターズ参加作品

人々が忌まわしい悪夢の中で、或いは素晴らしい夢の中で見た化け物たちが本当に現れた。カッコイイものおぞましいもの大きなもの小さなもの、みんな大暴れしている。夢としか思えず、人々は恐怖に震え上がった。いつ目が覚めて、現実へ戻らねばならないのか、と。#滅亡モンスターズ

715話を妙に気に入っている。

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