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291.~300.

291.

深夜2時にインターフォンが鳴る。最初はイタズラかと不気味に思い、次は電波が影響しているのかと調べたが、原因は分からなかった。気になって眠れない日が続き、疲れ果てた頃、急に鳴らなくなった。これで眠れる…訳ではなかった。玄関に座り込み、今夜も鳴るのを待ちかまえている。


292.

突然誘っても「いいよ!」とノッてくれる友達というのは貴重だ。彼女はちょっと準備が大変なのだけど…映画の試写会のチケットを会社の先輩から貰ったので、メールすると即行で「いいよ!」と返事。家に迎えに行くと、今まさに玄関に慌てて出てきて、転んで背中の半開きのファスナーから転がり出てきた。落ち着いてよ。


293.

夫と息子が海釣りにはまってから、週末は新鮮な魚が食卓に並ぶ。メバルの煮つけの身をほぐしていると、真珠に似た玉が出てきた。内臓ではなく身の中にあるのは不思議だが綺麗なのでとっておくことにした。翌朝顔を洗っていたら大きな真珠に似た玉がころりと落ちた。右目が見えない。


294.

縮緬の手触りが好きと言うと、祖母はアメリカ由来の着せ替え人形のために縮緬で素敵な服を作ってくれた。成長と共に人形は失い、祖母も亡くなり一周忌。和箪笥の中に髪を振り乱し皺くちゃになった人形を見つけた。「ありがとうね」耳元で祖母の声がして、人形がガサリと立ち上がった。


295.

タッチウッドというお呪いがある。唱えたり、木のテーブルなどに触る事で災厄を祓う。けれど木の方から触るのはどうなのだろう。命がけで逃げた先、木の根元にしゃがみこんだ。ドバドバと頭に熱い粘液が滴ってきて、腿より太い木の蔓に掴み上げられ…ていうかこれ木じゃないからダメか。


296.

図書館の奥で、大きな本を見つけた。分厚くて硬い装丁で、人が殺せそうなほど重い。開こうとすると指が切れて血が滲んだ。字は読めないが不思議な景色や生物が描かれている。捲り難くて指が切れる。いや切れて血が出ると捲れるのだ。集中して読みたいので、私は人を探すことにした。


297.

喉から手が出るほど欲しい、という言葉がある。けれど私の場合は目から出た。欲しくて欲しくて堪らなくて、でも話しかける勇気などなくて、物陰から見ていたら「視界」だけがぐるんぐるんと落下した。おたおたしている「私」を見上げる私、そして眼孔からにゅっと飛び出した二本の手。


298.

薄汚れたパンプスが目に入った。何か楽しいことでもあるのか弾んだ足取りだ。恋人の浮気を知ったばかりで気分が悪かった私は、パンプスの足の甲に鋏を突き刺した。自由な方の足で頭を蹴られた。以来パンプスが串刺しの場所を通る人が頭をぶつけては不思議そうにしている。


299.

彼女には女優という夢がある。その為に、寝る間を惜しんで練習している。忙しくとも水やりを忘れられたことはなく僕は日々成長し、彼女は…細くなっていく。枯れ木のように細くなった彼女は、僕が植わった鉢の上で喉を裂いた。僕は彼女の血を啜る。「これで美しくなれるわ」


300.

雨戸を閉め忘れたのに気付いたのは、窓の外から覗くモノに気づいたからだ。窓枠に肘をついてニコニコ笑う彼の髪には海藻が絡みつき、ヒトデやフジツボが肌を覆う。まるでファンタジー海賊映画のよう。海で消えた元婚約者の唇が動く。「ただいま」冗談じゃなさそうだ、まだ3月だし。

3月31日で300の大台に乗りました。

とりあえず毎日1個というのを守り続けるのみで、推敲とか正直してませんが、ちりも積もれば山になる、更にこれくらいの山を築けると我ながら頑張ったなあと感じます

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