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991.~1000.

991.

古びた物干し竿に、美しい白い小鳥が止まっていた。思わず窓を開けて近寄ったが逃げない。手を伸ばすと乗ってきた。日本の鳥とは思えないし手乗りで飼われていたんだろう。ベビーベッドから可愛い我が子がびょうっと舌を伸ばし、白い小鳥を絡め取る。こんなに伸びるようになったのね。


992.

友達が自宅マンションの屋上から飛び降り自殺した。理由は分からない。いじめはないし、家庭も円満。ただ祭で掬った金魚の死骸の写真をSNSにUPしていたのが気になる。煌めく赤い鱗、虚ろな目。似ていた。彼女の最後の姿に。同じ日に掬った金魚が死んだ。SNSにUPする。


993.

我が家の家宝は不気味極まりない。人間大の異常な大きさの瑪瑙に、妊婦の解剖模型が沈み彫りされている。娘は初潮の前に、嫁いできた嫁は初夜の前に、解剖模型と一晩同じ部屋で過ごす。それさえ済ませば全く普通に生きていける。怠れば、産まれる子は少しずつ石化する。私のように。


994.

「だめだ乗るな!」終電に飛び乗った私に向かって、グラサンに黒スーツの男が叫んだ。その鼻先でドアが閉まる。不気味に思いながらも空いている席に座った。読み止しの文庫本を開く。一時間ほど経ったが駅につかない。まさか車庫行き?!驚き慌てているうちに、早三年の月日が流れた。


995.

私は養父母の家の井戸から見つかった。正確には井戸水を汲み上げたら桶に入っていたのだ。心ない親に憤りつつ、私を育ててくれた。水との因縁か、泳ぎの才能が開花した私は競泳選手を目指している。水中で呼吸の必要がないことと、長時間水中にいると溶けてしまうのを隠しながら。


996.

その日、未来を見通せる全ての存在が自害した。本物の予知能力者や占い師、科学者や数学者から、スーパーコンピューターにAIまで、あらゆる存在が自らの機能を終わらせた。彼らやそれらに関わるものは原因を究明しようとし、次々死を選んだ。今はもう、誰もその出来事すら知らない。


997.

夜な夜な聞こえる変な声。一体なんの声なんだろう。「ヤモリじゃない?」「近所の変な人とか」「普通に水道管とか生活音でしょ」好き勝手言うばかりなので録音してみんなに聞かせることにした。聞かせると、一様に戸惑った顔をする。「なんだと思う?」「きみの声だよね?」


998.

その人骨には翼があった。解体された古民家から見つかった、古い骨。ほぼ人間の骨だが、一部が変形し翼としか見えない形をしている。贋物ではなさそうだ、という調査結果が出た。古民家は山奥だが、海水が付着しており、骨のところどころに頭足類の吸盤の跡と思しきものがついていた。


999.

TVから長い髪を振り乱してズルズル出てきたのは、3年前に行方不明になった兄だった。すっかり痩せ細り、髪も髭も伸び放題だし、出方が明らかにアレだったので絶叫した。兄はTVの世界を彷徨っていたという。そして映画やドラマのシーンを指差す。確かに兄が映っていた。


1000.

「お終い。続く。お終い。続く」可愛らしい声が夜の闇に沈む公園に響く。赤錆びた滑り台に座った幼女が膝の上に抱えた女の生首から髪を引き抜いていく。生首女の眼鏡の奥の目は虚ろ。幼女は楽しげに生首に訊く。「続ける?」生首の目は虚ろ。幼女は大人びた仕草で首を振る。「お終い」

ひとまずこれで、一区切り。

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