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月影の万華鏡 ~魔法のプリズム、輝くシークレットライブ~  作者: 輝夜
第三章:芽吹きのプレリュード

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第十八話:共犯者の設計図と、秘密のショータイム

 月島暦つきしま こよみの衝撃的な告白――自分が13歳であること、そして魔法のような力を持つこと――を、東雲翔真しののめ しょうまは静かに、しかし真摯に受け止めた。

 割れた花瓶の破片が散らばる控え室で、二人の間には、もはやプロデューサーとアーティストという言葉だけでは表せない、特別な空気が流れていた。それは、互いの秘密を共有し、共に未知なる未来へと踏み出す「共犯者」としての、最初の緊張感と、そしてかすかな高揚感だった。


 こよみの瞳から涙が乾き、少しだけ落ち着きを取り戻したのを見計らい、東雲しののめは改めて口を開いた。

「暦さん、先ほどお話しいただいた『絵』の才能…それが、今後の私たちにとって、非常に重要な鍵になるかもしれません。あなたのプライバシーを守り、Kとしての活動を円滑に進め、そして何よりも、月島暦さんとしての日常を穏やかに保つための、最高の『カバーストーリー』を構築できる可能性があります」

 その言葉に、こよみは少し戸惑いながらも、真剣な眼差しで東雲しののめを見つめた。


 東雲しののめは、自身の構想を語り始めた。

「月島暦さんを、類稀なる美術の才能を持つ若きアーティストとして、公に評価される機会を作ります。そして、その才能を支援するという形で、Kとしての収益の一部を、暦さん個人に正当な形で還元するのです。これならば、ご両親にも納得していただきやすいですし、法的な問題もクリアできます。そのためには、まず、あなたの絵を拝見し、その才能を客観的に評価してくれる『権威ある第三者』の存在が必要になりますが…その手配は、私にお任せください」

 自信に満ちた東雲しののめの言葉に、こよみは、まだ半信半疑ながらも、わずかな希望を感じ始めていた。


 そして、その計画の第一歩として、また、今後のKのプロモーション活動を円滑に進めるため、東雲しののめはその日のうちに、Kとしての宣材写真と動画素材の「超効率的」撮影を敢行することを決定した。

「暦さん、あなたのその素晴らしい『力』を使えば、通常では考えられないほどの効率で、最高の素材を収集できるはずです。スタッフには、あなたの『特殊な撮影技法』として説明し、厳重な秘密保持契約を結ばせます。ご負担をおかけしますが、一度集中的に撮影を行えば、しばらくはKとしての露出をコントロールしやすくなります」


 東雲しののめが厳選し、改めて最高レベルの秘密保持契約を結ばせた、口の堅い最小限の撮影スタッフが、プライベートスタジオに集められた。

 スタッフたちの目の前で、K(暦)は、その変身能力を存分に発揮した。

 瞬時に変わる髪型、メイク、そして数えきれないほどのバリエーションの衣装。まるでファッションショーの早着替えを、CG合成で見ているかのような光景だ。背景も、Kのイメージに合わせて微妙に変化しているように見える。

(すごい…これが、Kの『特殊な撮影技法』…いや、もはや魔法だ…)

 スタッフたちは、その人間離れしたパフォーマンスと、生み出される素材の圧倒的なクオリティに、ただただ息を呑むしかなかった。撮影中、スタジオは興奮と緊張感に包まれ、時折、誰かが「信じられない…」と呟く声が漏れるほどだった。

 東雲しののめは、その様子を冷静に、しかし満足げに見守り、的確な指示を飛ばしていく。

 わずか数時間で、通常なら数日、いや数週間かかるような膨大な量の高品質な宣材素材が、完璧な形で収集された。それは、今後のKのプロモーション活動において、絶大なアドバンテージとなるだろう。


 全ての撮影が終わり、スタッフたちが機材の撤収作業を始める中、東雲しののめは、少し疲れた表情を見せながらも、どこか達成感に満ちたこよみに、温かいハーブティーを差し出した。

「お疲れ様でした、暦さん。本当に素晴らしいショーでした。これで、当面のプロモーション素材は完璧です。しばらくは、暦さんにご足労願わなくても、十分すぎるほどの活動が展開できます」

 そして、彼は真剣な眼差しで続ける。

「Kとしての報酬の件ですが、先ほどお話しした通り、暦さんの美術活動を支援するための文化振興財団(仮称)の設立準備を、並行して進めています。そこを通じて奨学金や活動費という形で、月島暦さん個人に正当にお渡しできるようにいたします。つきましては、近日中に、暦さんの類稀なる才能に感銘を受けた『支援者』の一人として、一度ご両親にご挨拶に伺わせていただいてもよろしいでしょうか。もちろん、Kのことは一切伏せ、あくまで月島暦さんの美術の才能に対する純粋な支援としてお話しするつもりです。その際、先ほどお話しした『権威ある第三者』からの推薦状なども、効果的に活用できるかと考えております」

 その手際の良さと、自分を守ろうとしてくれる誠実な姿勢に、こよみは改めて深く感謝した。

(この人なら…本当に、大丈夫かもしれない…)

 秘密を共有したことで生まれた、確かな信頼感。それは、これから始まるであろう、波乱に満ちた未来への、何よりも心強い道標となるはずだった。

 月島暦つきしま こよみ東雲翔真しののめ しょうま。二人の「共犯者」の、未来への設計図が、今、この密室で、確かな形を取り始めていた。そして、その最初のショータイムは、圧倒的な成功のうちに幕を閉じたのだった。

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