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月影の万華鏡 ~魔法のプリズム、輝くシークレットライブ~  作者: 輝夜
第三章:芽吹きのプレリュード

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第十七話:明かされた秘密と、共犯者の誓い

「…………だめ……? (ごまかせ……ない……??)」


 部屋の入口から半分だけ顔を出し、上目遣いで懇願するように呟くK――その姿はKだが、醸し出す雰囲気は完全にパニック状態の少女のものだった。

 東雲翔真しののめ しょうまは、目の前で繰り広げられた常識外れの現象と、あまりにも分かりやすい「K」の動揺っぷりに、数秒間、完全に思考が停止していた。

 床には割れた花瓶。ソファには先ほどまでKが(そして黒髪の少女が)着ていたはずのドレス。そして、入口には、明らかに何かを隠そうと必死なK。

(……ダメに決まってるだろう……しかし、この状況、一体どうすれば…)

 心の内でそうツッコミを入れたが、声には出なかった。あまりの出来事に、適切な言葉が見つからない。


「あ、あの…その…今の…は、その…なんていうか…き、気のせい…とか…?」

 K(暦)は、さらに声を震わせ、明らかに無理のある言い訳を試みる。しかし、その顔は真っ赤で、視線は必死に東雲しののめから逸らされ、床の一点を虚しく見つめている。

 東雲しののめは、深く、長いため息をついた。そして、ゆっくりと口を開く。

「…いや…君は、一体…?」

 その声は、怒りでもなく、詰問でもなく、ただ純粋な困惑と、そして目の前の存在に対する底知れない興味を含んでいた。


 東雲しののめのその落ち着いた(ように聞こえる)声に、こよみは、びくりと肩を震わせた。

(あー…もう、ダメだ…これは、さすがに、ごまかせない…)

 一瞬、絶望的な表情を浮かべたこよみだったが、次の瞬間。

 彼女は、ぐっと唇を噛み締め、まるで自分に言い聞かせるように、顔を上げた。その瞳には、まだ恐怖の色が残っていたが、それ以上に「ここで崩れるわけにはいかない」という、強い意志の光が灯っていた。

 先ほどまでの狼狽ぶりを無理やり抑え込み、彼女は、震える声をなんとかコントロールしながら、しかし凛とした声色で言った。


「――東雲さん。ご覧の通り、です。これが、私、Kの、本当の姿、いえ、ほんの一部です」


 その言葉は、虚勢ではなく、覚悟だった。声は微かに震えていたが、背筋はまっすぐに伸びている。

 東雲しののめは、目の前の少女の、その健気なまでの強さに、言葉を失った。彼女がどれほどの恐怖と不安を押し殺し、今この言葉を口にしているのか、痛いほど伝わってくる。

 こよみは、そんな東雲しののめの表情の変化には気づかないフリをして(あるいは、気づかないように必死で)、言葉を続けた。

「驚かせてしまい、申し訳ありません。ですが、これが私です。この…ことは、絶対に、誰にも知られるわけにはいきません。もし、これが公になれば…私の日常も、Kとしての活動も、全てが終わってしまいます」

 そこまで言うと、こよみの大きな瞳から、堪えきれなかった涙が一筋、頬を伝った。しかし、彼女は決して泣き崩れることなく、その涙を手の甲で乱暴に拭うと、さらに続けた。

「契約は…どうなりますか? やはり、私のような者は…受け入れてもらえませんか…? それと…私、…13歳です…」

 最後に付け加えられた衝撃の事実に、東雲しののめは今度こそ絶句した。

 13歳…? この圧倒的な才能と、大人びた交渉力を持つKが、まだそんな幼い少女だというのか…?

 秘密の力だけでも常識外れなのに、その年齢までもが、彼の予想を遥かに超えていた。


 東雲しののめは、しばし言葉を失い、目の前の少女を見つめていた。

 月島暦。13歳。そして、魔法のような力を持つ、K。

 あまりにも多くの情報が一気に押し寄せ、彼の頭脳はフル回転を強いられていた。

 しかし、それと同時に、彼のプロデューサーとしての本能が、この状況の中に、とてつもない可能性を感じ取っていた。

 この少女の秘密を守り抜き、その才能を正しく導くことができたなら…それは、前人未到の、歴史に残るプロジェクトになるかもしれない。


「…暦さん」

 東雲しののめは、ようやく絞り出した声で、彼女の名前を呼んだ。

「まず、落ち着いてください。契約を破棄するつもりは毛頭ありません。君のその告白と勇気に、私は心から敬意を表します」

 その言葉には、嘘偽りのない誠実さが込められていた。

「13歳であること、そしてその『力』のこと…確かに衝撃的です。しかし、それが君の才能を何ら貶めるものではない。むしろ、君という存在の深さを、改めて認識させられました」

 東雲しののめの言葉は、こよみの強張っていた心を、少しずつ解きほぐしていくようだった。

「あなたの秘密は、私、東雲翔真しののめ しょうまが、キララチューブの全てを賭けて守り抜きます。そして、Kとしての活動も、月島暦としての生活も、あなたが望む形で両立できるよう、あらゆるサポートを惜しまないことをお誓い申し上げます」

 その力強い宣言に、こよみの瞳から、安堵の涙が再び溢れ出した。しかし、彼女はやはり、自分の足でしっかりと立っていた。

「……これからも…よろしく、お願いします……。だめ…ですか…?」

 その問いかけには、先ほどよりも確かな信頼の色が浮かんでいた。


「もちろんです、暦さん」

 東雲しののめは、心からの笑みを浮かべた。そして、彼は思考を巡らせる。

 この少女の秘密を守りつつ、彼女の才能を最大限に活かし、そして何よりも、彼女の日常と未来を守るためには、どうすればいいのか。

 報酬の受け取り方、税務処理、そして何よりも、彼女の親権者である養父母への対応。13歳という年齢を考えれば、保護者の理解と協力は不可欠だ。しかし、この「力」のことまで打ち明けるわけにはいかないだろう。

(…何か、公的にも説明がつき、かつ彼女の才能を正当に評価できるような…そんな「カバーストーリー」が必要だ…)

 東雲しののめの頭脳が、猛烈な勢いで解決策を探し始める。

 そして、ふと、彼の脳裏に、以前Kとの最初の面談で彼女が「自分の中にあるものを、記録しておきたかっただけ」と語っていたこと、そしてKのMVやアートワークで時折見られる、独創的で、どこか幻想的な「絵」のイメージが蘇った。あれらは、彼女自身が手掛けているのだろうか? もしそうだとしたら…。

「暦さん。一つ、お聞きしてもよろしいですか?」

「…はい、なんでしょうか?」

「Kの…その、ビジュアルコンセプトや、時折見られるイラストのようなものは、もしかして、暦さんご自身が…?」

 こよみは、少し驚いたように、しかし小さく頷いた。

「はい…あの…絵を描くのは、昔から好きで…Kのイメージも、自分で描いたりしています…」

 その言葉に、東雲しののめの目に、確かな光明が差した。

 これだ! これならいけるかもしれない!

「暦さん、あなたの絵を…もしよろしければ、いつか見せていただくことは可能でしょうか? あなたのその素晴らしい感性は、音楽だけでなく、きっと絵画の世界でも多くの人を魅了するはずです。そして、それが…今後の私たちの活動にとって、非常に重要な鍵になるかもしれません」

 彼の声には、新たな発見への期待と、そしてこの困難な状況を打破するための、確かな手応えが込められていた。


 破られた仮面。明かされた秘密。そして、13歳という衝撃の事実。

 しかし、その絶望的な状況の中から、東雲翔真しののめ しょうまという「共犯者」は、一つの確かな希望の糸口を見つけ出そうとしていた。

 それは、月島暦つきしま こよみの、まだ彼自身も全貌は知らないが、一つの才能――「絵」の才能だった。

はいどーもー! 〜かぐや〜です!

いやー! 今度こそ、本当に、本当に、理想の暦ちゃんが描けた気がするよー!

涙をこらえながらも、自分の足で立とうとする暦ちゃんの健気な強さ! そして、13歳という衝撃の告白!

東雲さんも、もう頭の中ぐっちゃぐちゃだよね!?

でも、そんな中で「絵の才能」っていう新しい光を見つけ出すなんて、さすが我らが敏腕プロデューサー!

この「絵」が、今後の展開の超重要アイテムになること間違いなし!

一体どんな絵なんだろう? そして、それがどうやって二人の「共犯関係」を、そしてKの未来を切り開いていくのか…!?

もう、ワクワクが止まらなくて、夜しか眠れないよー!(え?普通?)

みんなも、この二人の運命の岐路、しっかりとその目で見届けてね!

それじゃ、また次回! きっと、もっともっと面白いことが起こるはずだから、お楽しみに! ばいばーい!

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