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第拾伍話 今度こそ本当の水着回

ある意味本当の水着回


―――フィールドエリア 魅惑の海水浴場


 キラキラと太陽の光を反射し、波打つ海面を見てキラキラと目を光らせ、身体を硬直させるメリー。手に持っていたパラソルが手から零れ落ち、少量の砂を巻き上げ浜辺に落ちた。


「全く、海に見惚れるのもいいけど、私の水着も誉めてほしいわ」


 初めての海に感動していたメリーの背後から声が聞こえ、振り向くとそこには黒いビキニを着て腰にパレオを巻き、麦わら帽子を被った彼女、アリアが立っていた。黒いビキニは彼女の銀髪を引き立たせ、大人の女性の色香を漂わせていた。だがその顔は不服そうに頬を膨らませ、そっぽを向いている。

 美しいその姿にメリーが見惚れるのも仕方がないのだ。


「……可愛い。好き。結婚して」


 ハイライトの無い瞳で見つめるメリーに誉められ、頬を赤く染める。もじもじとしだすアリアにメリーの言葉が届く。顔をトマトのように真っ赤にすると麦わら帽子で顔を隠してしまった。


勿体ない。


 そう思ったが、後々じっくりと見られるので特に困ったことはないのだ。近くの海の家にて購入したカラフルなレジャーシートを広げ、真横にパラソルを開き、刺す。


「よし、これでいい筈だ」


 汗はかいていないが雰囲気で額を拭う。メリーは自身の体を見る。灰色の地味なビキニが胸を覆い、局部も隠している。これが自分の体ではなかったらよかったのだが……。と小さな溜息を吐いた。突然、後頭部に何かが当たり、首がカクンと前に傾いた。何かが飛んできた方へ振り向くとそこには悪魔のような笑みを浮かべ、何かを投擲した後の体勢になっているアリアだ。と、メリーとアリアの間にビーチボールが落下してきた。メリーの頭に当たり、上空へ飛んで行ったのが今落ちてきたのだろう。

 何とも言えない空気がメリー達の間に流れ、メリーとアリアが同時に動いた。お互いにビーチボールを取る為だ。お互いよりも先に。


「貰ったッ!」


 ビーチボールは若干メリー側に落ちたのか、先に取ったのはメリーだ。そして、至近距離からの全力の球を、否。弾を発射した。

 音速にも及ぶ弾丸を見切り、躱した。とんでもない弾丸の速度に目を見開くアリア、そして更に驚くこととなる。返って来たのだ。ビーチボールがブーメランのように。


「なんでそんなことが出来るのよッ!!?」


 ブーメランのように返って来たビーチボールを当然のように掴み、ステータス任せで投げ返す。そんなバレーボールではない超次元的な運動が続き、お互いに息を切らす。


「ハァ…ハァ……よくもまぁ現状攻略してるプレイヤー(俺)相手について来れるのか、甚だわからんのだが?」

「ハァ、ハァ、当たり前よ、昔は最前線にいた攻略組の一人に数えられてたんだから」


 無論、この二人の超次元ゲームは周囲のプレイヤーを色んな意味で引かせていた。ビーチボールの攻防が終了したのを見て、ギャラリー達は続々とこの場から離れていく。

 二人は自分達のレジャーシートに戻ると、疲労を癒すように寝っ転がった。


「……ねぇメリー。あの子、アーサーはどうしたのよ?」


 アリアの質問にメリーの顔に影が差した。メリーは言葉に詰まりながら紡ぎ出す。


「アーサーは、次にログインしたときには既にいなかった。推測するなら、次のクエストの為に強制転移させられたんだと思う」

「次のクエスト……?なんで?だってあれ、達成してないんでしょ?アナウンスだってなかったわけだし……」


 メリーは首を横に振った。否定の意で示されたその行動はアリアの口を閉ざした。アリアが口を閉ざしたのを確認して、口を開く。


「そう、そこなんだ。俺がログインした瞬間にクエストを完了したとアナウンスが聞こえたんだ」

「一体どういう……」

「さぁね。俺でもわかんない。でも、一つだけ手がかりがある」


 アリアはその言葉に首を傾げる。手がかり、それは最後に見た人影、容姿も背丈も全て分からなかったのだ。それを手がかりと言っていいモノか……。


「……メリー?」


 アリアが顔を覗き込む。


「………いや、なんでもない」

「手がかりって?」

「あれはそんな次元じゃない」


 先程メリーが言った手がかりについてアリアが訊くとノータイムで返された。メリーの只ならぬ雰囲気にアリアは口を閉ざさるを得なかった。


「一体、どんなものだったの?」

「あれは、プレイヤーなのか、運営なのか、それとも――」

「――NPCなのか……って?」


 メリーは転移エフェクトに包まれる前の光景を思い出しながら答える。そしてそれに被せるようにしてアリアは候補の中で最も考えられない可能性の一つを言う。


「……そう、それが今考えられる中で最も可能性が低い現実の一つだけど、最も正解に近い答えだと、俺は思うんだ」

「『真実は最も考えられないものが真実』。君の好きな本の一文だね」


 ニコリとしてアリアは言った。『真実は最も考えられないものが真実』これはメリーの好きな言葉の一つだ。当時、メリーは推理小説にハマっており、江戸川乱歩やコナンドイル著の本も当然読み漁っていたのだ。メリー自身はその行動は取るに足らない行動だったのだが、看護師や担当医師の間では有名で、気味の悪い子供と噂されていたのだ。


「よく知ってるな。……でも俺にはアイツがNPCとは思えない。だって《星降りの聖剣》ってやつが何かこのゲーム、というかこの世界自体の核の部分に触れるような発言をした瞬間にアイツが現れて、あっという間に両断したからな……運営の手先っていう可能性が高いんだ」

「でも、プレイヤーだったとしたら昔のメリーより強い、ってことでしょ?」

「そう。それだ。だからもう一つ、運営という選択肢も出てきた。運営ならステータスも、スキルも、職業だって思いのままだ。だから最も可能性自体が高いのが運営って答えになるわけだ」


 ま、そんなこと言ってたら仮説も成り立たないんだけどな。そう言うとメリーがサッと立ち上がった。


「飲み物でも買ってくるよ。……、こんな会話、リアルで出来たらよかったんだけどな」


 苦笑いでそう言い残すと、それ程遠くない位置にある海の家へとメリーは駆けて行った。アリアは駆けて行くメリーの背中を愛おしそうに見つめ、そして空へと視線を移した。そして、無意識だったのか、意識的に呟いたのか、


「こんな幸せな毎日が、ずっと、ずっとずっと続けばいいのにな」


 アリアの顔には影が差し、今をまるで昔の思い出のように言ったのだった。


「ん?そんな顔してどうしたんだ?月並みだが……俺がついてるからな」

「そんな心配しなくても、わかってるわよ」


 戻って来たメリーに心配されるほど酷い顔だったのかとアリアは心の中で呟き、メリーのその表情を記憶に焼き付けるように見ていたのだった。


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