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雨さまは消費者から直接出資を受けて繁殖牛のオーナーになってもらい、子牛売却益を配当として支払うというビジネスを始めました。実質的に金融業であるこのビジネスは大当たりして雨さまはさらに大儲けすることができました。
しかし、肝心の子牛の売却益が期待通りに上がらず出資金を配当に回す自転車操業が常態化し、ついには倒産して一文無しどころか莫大な借金まで抱え込むことになったのです。
「牛肉自由化のせいなんだ。あれさえなければ、まだおっぱいはきっと……」
「分かるわ。だからFXに手を出しちゃうのよ」
「織姫の転落人生も同情できなかったけど、これはそれに輪をかけてダメだわね……」
「だけどね、TPPなんて決まったらもっと死者が出るよ!」
「うるさいわ。真面目に働いてる農家と一緒にしないでくれないかしら?」
「で、FXは? FXやったんでしょ!」
さっきから織姫さまが雨さまにFXの話を聞きたがっています。織姫さまは前にFXで借金を作ったと言っていましたが、仲間ができたと思っているのでしょうか?
「お金が足りなかったんだよっ。友達はFX会社を作って大儲けしてたってのにぃ」
「FX会社を作る……?」
「そうだよ。FXはね、やばくなったら相場をちょちょっと操作してやれば絶対に負けないんだよ。しかも、和牛なんかより儲かるん、ギャー、痛い痛い。髪引っ張らないでー」
雨さまが調子に乗ってFXの話をしていると、織姫さまが突然雨さまの髪の毛を引っ張り始めました。しかも割とマジで引っ張ってます。あ、今ぶちって音がしました。
「織姫」
「止めないで」
「ううん。それより、これを使うといいわ」
そう言ってお姉さまが渡したのは爪切りです。一体爪切りを何に使うんでしょう?
「さ、雪。ここからは大人の時間よ。あちらに行きましょう」
「え? あ、はい」
「墨も美雷さんも」
「ご、ご主人ざばー」
雨さまが助けを求めていますが、お姉さまはそれを無視して私たちを連れて外に出ました。地下の防音室だったのでドアを閉めると中の音は全く外に漏れてきません。
「雨さま、大丈夫でしょうか?」
「大丈夫よ。腐っても高位神だし、織姫くらいの神力じゃ痛がらせるくらいしかできないわ」




