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再会の日々 ~仕合わせ~  作者: マツバラ
7/20

07

自宅までの30分程の間に今日を振り返っていたが、あまりにも

多くのことがあリ過ぎて、頭の整理がつかないまま自宅に着いた。


妻にどんな顔をして会えばいいのか少し考えてしまったが、別に

浮気をしたわけでもないのでいつもどおりでいい!普通に!

そう自分に言い聞かせて玄関を開けた。


「おかえりなさい」


娘の美和がトコトコやってきた。せがむので抱っこをして、そのままリビングに入る。


「おかえり、お疲れさま」


夕飯の準備をしながら台所で妻の美智子がこちらを見る。


「ただいま」


いつもの会話だが、目を合わすのが気まずかった。


美和と少し遊んでから一緒に風呂に入り、三人で夕飯を食べた。

いつもの我家だった。


夕食後、僕はリビングでTVを見てくつろいでいた。美和を寝かせつけた美智子がリビングにやってくる。

そして横に座り、一緒にTVを見る。


いつもどおりの夜の風景だが、そこには特に笑いも無く

会話もまばらだ。

しかし自然体でいられるこのひと時は心が休まる。この大切な空間を一緒に過ごせるのはやはり妻しかいない。


男は恋人から妻になった女を徐々に同居人に変えたがる。女は子供が生まれると妻から母になり、そして強くなっていく。

男と女の関係は変わっていくが、そういうことも含めて僕はこの家族を守っていきたいと思っている。


裕美とのドキドキ感は刺激的だし、裕子との懐かしさはまるで自分があの頃に戻ったような錯覚にさえ陥る。

だが僕の居場所はここであり、パートナーは妻である。

当たり前のことかも知れないが、今日のことがあってあらためて

その当たり前に気づかされた。


しかしその反面、妻や娘を裏切らないでこれからどのように裕子や裕美と接していこうか考えている自分がいた。

もちろん関わり合わないのが一番なのかもしれないが、僕にはもうその選択肢は無かった。



昨晩は気持ちが高ぶっていたせいなのか、なかなか寝つけず

今朝は寝不足気味だ。

だがいつもどおり車に乗り、会社へ向かった。


昨日の朝までは名前すら知らなかった裕美。たった一日で沢山の話をして、沢山のことを知った。


そんな裕美とすれ違う地点に近づいてきた。昨日のことがあるので少しの気恥かしさと、何かを期待するような気持ちが入り混じっていた。


遠くに裕美が見えた。足に白いものが見える、包帯だろうか。

どんどん近づいてきてすれ違う。

裕美はハンドルの上で手を振って笑顔だが、いつもと同じだった。


拍子抜けしたような気分だったが、よくよく考えれてみれば前後に同じ学校の生徒がいるのだからそんなものかもしれない。

何を期待していたのか自分で自分が可笑しくなった。


その後、裕美とは車越しの挨拶を毎日のように交わして時々携帯

メールのやりとりもしている。

メールの内容はほとんど学校での話だが、それはそれで楽しい。

僕の時代は携帯電話を持っている高校生などいなかったので新鮮な感じがする。


しかし裕子からは全く連絡がこない。こちらから連絡を取ればいいのだけど、何となく躊躇してしまう。

裕美の顔は見ているが、裕子とはあの日以来会っていない。

顔も見たいし、若い頃の話をもっとしたいと思っていた。

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