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再会の日々 ~仕合わせ~  作者: マツバラ
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08

今日は休日の土曜日。僕は駅で電車を待っていた。


裕子が大事にしてくれている写真があまりにも劣化していたので

昔からの写真仲間である青本の自宅にある暗室を貸りてプリントをやり直そうと思ったからだ。


先日連絡をとって事情を話したら青本は快諾してくれて、当時の

ネガもほぼ保管してあったので探して見つけた。


東京の下町へ向い、駅を降りて歩いて10分ほどで青本宅に着いた。

挨拶もそこそこに青本宅にあがり暗室を見せてもらう。


ちょっと狭いが使いやすそうな暗室は、すぐに作業できるように

準備万端になっていた。

青本に感謝しつつ、時間も限られているので早速作業に取り掛かる。


久しぶりの暗室作業なので最初はおもうようにいかなかったが

作業しているうちに段々と昔の感覚が戻ってきて、徐々に満足

できるものになっていった。


何回もプリントして何度も高校生の裕子と英雄を見ていると当時の記憶がよみがえってくる。

嫌なことも多かったはずなのに、思い出すのは楽しかったことばかりだ。

笑顔の裕子の写真を見て、感傷に深けながら作業を続けた。


青本のアドバイスもあってか満足できる写真が出来上がり

念のため3枚持ち帰ることにした。


せっかく来たのだから青本とカメラ談義でもしたかったが、思いのほか作業に時間がかかってしまい、それはまたの機会ということで早々に帰路についた。


写真が手元にあるのですぐにでも裕子に渡したいところだが

毎日外出するわけにもいかないので日曜は家族サービスデーに

して、写真は後日渡すことにしよう。

この写真を見て裕子がどのような反応をするか楽しみだ。



僕は迷っていた。

裕子に会う約束を取りつけたいのだが、写真はサプライズで渡したい。

写真のことを内緒にして手渡すということは、別の理由で会う約束をしなければならない。


朝からメールを打っては消しての繰り返し。

なかなか思うような文章が浮かばずイライラしてくる。

そしてこのイライラは打っているメールだけが原因ではないことに気づいていた。


僕は昔から女性に対して押しが弱い。

気のきいた台詞で女の子を誘うことなんて皆無だったと思う。

性格と言ってしまえばそれまでだが、今でもそれは変わらない。


いや、それすら違うのかもしれない。性格ということにして逃げているだけ。こちらから誘って断られたらどうしようという自己保身。

ようするに自分が傷つきたくないだけの弱虫なのだ。


そしてそんな自己分析はいくらでも出来るのに、その性格を変えようと今までに努力した覚えはない。

それでもそれなりに女性とつきあってきたし、結婚もした。


妻は僕のそんな性格を知ってか知らずか、猛アタックをしてきた。

元々好意を寄せていたこともあってつき合い始め、結婚も妻から

「そろそろどう?」と言われて決めた。

とはいえ決して妥協して結婚したわけではなく、いつプロポーズ

しようか迷っている時に妻のほうから・・・というわけだ。

きっとそんな僕に痺れを切らして妻から結婚の話が出たのだろう。


たかがメールで何故こんなことを考えているのか自分でも不思議

だったが、高校時代ずっと好きだった裕子に告白出来なかったこととメールの文章をうまく打てない今をダブらせているからなのだろう。


別に今は告白メールを打っているわけではないが、裕子を誘うということは僕にとって告白に近い感覚なのだ。

そんなことをウジウジ考えていたが、先に進まないのでメールは諦めて裕子の仕事終わりの時間に電話をすることにした。


「久しぶり、もう仕事終わった?」


「うん、この前はありがとうね。連絡しなくちゃと思って

いたけど、何だか忙しくて延び延びになっちゃって・・・」


「いいよ、いいよ。仕事と家事で毎日忙しいんでしょ?」


「そうなのよね。何が忙しいってわけじゃないけど余裕が

無い感じかなぁ」


「僕もそんなもんだよ。ほんと気にしなくていいからさ」


「ごめん、この前のお礼もしなくちゃと思っていたのに・・・

そうだ!一也の都合に合わせるからもし良かったらうちに来ない?

夕食でもご馳走するよ」


「えっ、裕子の家で?」


「だって外での食事は無理でしょ?」


「ま、まあね。無理ではないけど、なるべくだったら外は避けた

ほうがいいのかも」


「それじゃあ、決まり!都合のいい日時がわかったら早めに

連絡ちょーだいね」


「わかった、また連絡する。楽しみにしてるよ」


「ふふ、あんまり期待しないでね」


メールで悩んだり迷ったりしていたのがバカらしくなるほど、あっという間に話が済んだ。

しかも裕子のほうから誘ってくれたので、こちらで会う口実を作る必要も無くなった。


自宅で食事となると当然裕美との三人になるだろう。

欲を言えばファミレスとかでお茶をしながら二人きりで会いたかったのだがこの際それは良しとしよう。

なにはともあれ、これでまた裕子と会えると思うと嬉しかった。


休日の夕方に出かけるのはちょっと不自然なので、残業ということにして仕事が終わってから裕子の家へ行くほうが良さそうだ。

裕子にも電話で伝えて金曜の18時に訪問することになった。


そして当日、仕事を定時で終わらせて裕子宅へ向かう。

写真は3枚のうち2枚を封筒に入れておいた。

どのタイミングで渡せばいいのかわからないが、それは成り行きでかまわないだろう。

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