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六、健康への不安と体の変化

その夜、田邊は眠れなかった。

空腹のせいもあったが、それ以上に、健康への不安が頭を離れなかった。

現代日本人の平均寿命は、八十歳を超える。

だが、戦国時代の平均寿命は、三十歳から四十歳程度だったと言われている。

乳幼児の死亡率が高く、それが平均を下げている面もあるが、成人しても長生きできる保証はなかった。

医療技術は未発達。抗生物質もない。手術の技術も限られている。

ちょっとした怪我や病気が、命取りになる。

そして、栄養状態も悪い。

田邊は、自分の健康状態を考えた。

五十三歳。現代では、まだまだ現役だ。

だが、この時代では、かなりの高齢だ。

しかも、慢性的な運動不足で、体力も落ちている。

このまま、この時代で生きていけるのか。

だが、その時、田邊は気づいた。

体が、妙に軽い。

今日一日、かなり歩いた。現代の生活では、こんなに歩くことはない。

五十代の体なら、足が痛くて、翌日は動けなくなるはずだ。

だが、今の田邊は、確かに疲れてはいるが、それほどではない。

むしろ、体が心地よい疲労感に包まれている。

そして、もう一つ気づいたことがある。

視力だ。

田邊は老眼で、普段は眼鏡が手放せない。遠くのものも、以前ほどはっきり見えない。

だが、今は違う。

薄暗い部屋の中でも、物の輪郭がはっきり見える。

まるで、若い頃の視力に戻ったようだ。

「これも、タイムスリップの影響なのか……」

田邊は、呟いた。

言語の壁を越える能力。

そして、体の強化。

自分に、何が起きているのか。

答えは分からない。

だが、一つだけ確かなことがある。

この変化があれば、田邊はこの時代を生き延びられるかもしれない。


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