番外編短編・真澄のご褒美
杏奈先生の事件は解決したわけだが、まだ事情を聞きたい事があると保安官のアランがクラリッサの屋敷にやってきた。
私はちょうど庭に草むしりをしながら、汗だくになっている所だった。
「マスミ!」
「なんですか、保安官さん…」
「いや、事件についてだよ。本当にマスミの居る世界でそんな小説が流行っていたかもう少し詳しく聞きたいんでね」
たち話しもなんだという事で、庭にあるベンチに二人とも腰を下ろす。
私は少々ウンザリしながらも元の世界で流行っていた小説について説明する。この説明はもう何十回もしているが、元の世界について知らないアラン保安官にとってはピンとこない話だろう。
「そっか、なるほど。わかったよ。ところで、他に余罪がないか調べていてね、これが王都で発売されていた小説なんだが、タイトルで見覚えのあるものはないか?」
私はアラン保安官からその一覧を受け取った。タイトルだけではわからないが、とりあえず私が好きだったロマンス小説はパクられていないようであるが。
「あ、これ『人間失格』と『ノルウェイの森』じゃない。誰か他にもパクってる奴いるわ!」
日本で名作のタイトルを見つけて、私は大声を出してしまう。発売時期から察するにロブがやっていたとも思えない。
「本当かい? 急いで出版社に連絡しないと」
「お願いしますよ。誰がパクっているのかしらね」
「マスミじゃないだろうな?」
「そんなわけないでしょ。私はずっと日本に帰ってないし、出版社とのコネもないですよ」
「それはそうか。悪かったよ。これはお詫びと言ったらなんだが」
アラン保安官は、カバンから一冊の本を取り出して私に渡す。
それは、『愛と薔薇と夢の果てに…それは永遠』の最新刊だった。アラン保安官の話によると、ロブの家で見つかったらしい。どうやらこれもパクる予定だったそうだが、犯人として捕まってしまった。
「これは貰っていいの?」
「まあ、一応な。事件の捜査協力って事で」
これは私にとって最高のご褒美となった。内容は相変わらず面白く、殺人事件を調査した甲斐があるものだ。
もうこの作品の続きは読めないだろう。そろそろ誰かの物語を受けとるより、自分の物語を紡ぐ時なのかもしれない。
そう思うと、もうロマンス小説が読めなくても良いかもしれない。気づくと日本にいた頃のような「イケメン大好き」という呪いみたいな理想の高さも打ち砕かれている。心の奥にあの牧師さんの笑顔を思い浮かべながらそう思った。
ご覧頂きありがとうございました♪
これにて第一弾完結です。




