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舞台裏と結果なんですが

 大量のなにかを捨てたような気がしながら、僕は舞台裏へと向かった。

 今はちょうど僕の次の人の出番で、いろいろな人たちが各々舞台を見ている。

 出番が終わった人は結果がどうなるのかを、まだ終わっていないひとは次の出番を待ち構えて。

 程よい緊張感と、お祭りを楽しむ明るい空気がまじりあっていた。


「お、お疲れ様です……」


 あまり足音を出さないようにしながら、ゆっくりと歩いていく。

 ――そして、メイクの女性の手をつかんだ。


「――なっ!」


 何をするんですの!? とメイクの女性が驚いた眼をする。

 別になんとなくでつかんだわけじゃない。


「……あなた、なにか企んでいましたね?」


 カシャン、と、金属音が床に響く。

 ナイフが床へと落ちる音だ。

 ヒッ、と誰かの悲鳴が聞こえた。


「……なぜ、わかったのです?」

「ただの勘、……ってわけじゃないけどね。あなた、少し変な動きをしていたでしょ?」


 だから気づいたんだ、と暴れようとする彼女を拘束した。

 ナイフ以外にも色々な暗器を仕込んでいたのだろう、服は予想以上に重かった。


「――チッ! 貴族どもが集まってるから余裕だと思ったら、とんだ厄ネタじゃねえか!」


 刺客だった彼女が服を脱ぎ、動きやすい服装で逃げ出そうとする。

 僕は彼女をつかんでいた手の力を強め、そのまま一気に投げた。


「ガッ!!」


 床に投げ飛ばされた衝撃で、スパイがうめき声をあげる。


「……さて、なんでここに来たのかな? 教えてもらえると嬉しいんだけど」

「お前なんかに教えるわけ……っ! ダダダダダダダダッ!?!?!?」

「そうか、それなら仕方ないね。……少しずつ、力を強めてあげるよ」


 もちろん本気でやるわけじゃない。ある程度はやるとしても、基本的にはブラフの範疇だ。

 ただ、相手にそれを見破られてはいけないので、近くに落ちていた木製の扇子をとって、それをミシミシときしませた。

 自分の骨の音だと勘違いしてくれたのか、彼女の顔がどんどん青ざめていく。


「わ、わかった! 言う! 言うから! 折らないでくれ!」

「……本当?」


 ブンブンと、勢いよく彼女が首を振った。


「……わかった。それじゃあちょっと待っててね」


 周りのスタッフにお願いして、縄を持ってきてもらう。

 彼女が逃げ出さないように気を付けながら縄で絞めて、僕はゆっくりと拘束をほどいた。



 それから数時間後、イベントは無事終了した。

 後日、あのスパイについての話を聞いた。

 彼女はとある闇ギルドの所属だったようで、このイベントに乗じて貴族を暗殺しろ、という依頼を受けたらしい。

 まあ、理由としてはなんとなくわかっていたものでもある。

 裁判では当然有罪となり、今は王城にある牢獄でつながれているらしい。

 この一件以外特に事件はなかったようで、ありがとうございますと追加の報酬までもらってしまった。

 ……ただ、どうしても解せないことがひとつだけ。


「……どうして僕が優勝なんだ……!?」


 そう、今回の優勝者は、なぜか僕だったのだ。

 おかしいだろうと抗議をするも、見学の人も参加者も納得といった表情でうなずくばかり。

 さらにミシェとジョシュアまで「そうだよね」と当然のような目で見てきたので、結局僕が優勝トロフィーを手に入れることになったのだった。

 とはいえ優勝賞金は報酬と別だったので、お金という点ではかなり儲けられたのは事実だ。

 ――お金が入ったんだからオーケー、お金が入ったんだからオーケー……

 そう自分に言い聞かせながら、僕はなにか妙な一線を越えてしまったような気がして身震いしたのだった……。

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