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二律背反(アーネット視点)

 最近、ショウ様の評価が高まりつつある。

 今までもガフやブレイのような愚物以外には知られてはいたものの、その素晴らしさが世間にも広まりつつあるのだ。

 この前、はじめて開催されたミス・アルロスへの参加を命じられた事実などはまさに好例だろう。

 あの方が優勝したという事実に対してはなにも思わない。彼のかわいらしさを鑑みれば当然の結果だからだ。

 私も見に行ったが大変すばらしかった。本来ならば着ないであろうかわいらしい服装も素晴らしいコンビネーションだった。

 あの衣裳を用意したものを独自に調査して褒章を送らせたが、今頃どうなっているだろうか……。

 それはさておき、それだけかわいらしく神聖な美しさを持つショウ様だとしても、決して参加者を本命として呼ばれたわけではないだろう。

 いや、本当の本音ではそうだったかもしれないが、少なくとも依頼のうえではそうでなかったに違いない。

 というのも、あの場に警備員は存在しなかった。

 一部の馬鹿が「警備員を入れないようにするだなんて、主催の方はこのイベントの重要性を理解していますのね」などと戯言を吐いていたが見当違い甚だしい。百歩譲って皮肉だとしてもできの悪い代物だ。

 そもそもあのイベント会場には多数の貴族が集まることが判明していたのだ、暗殺をもくろむ輩が来ないほうがおかしい。

 あの場にわかりやすい警備員が存在しなかったのは、雇っていないからではなく参加者の中に紛れ込ませていたからだろう。

 事実、こういった事例には疎いと有名なアルロス騎士団副団長殿もドレスを着て会場へと赴いていた。

 普段が男性顔負けの勇ましさのためか、気づいた者は少なかったようだが。

 なにはともあれ、そのような状況で参加者側に警備がいないとは考えづらい。

 これはあくまで推測だが、ショウ様を護衛兼参加者として雇うことで、相手の警戒を意図的にゆるめつつ、護衛を簡単に行えるよう対応したのだろう。

 あの方から直接伺った話によると、ショウ様は現在、服装を女性のものとすることで絶大な能力を手に入れることができるのだから。


「……さて」


 正直なことを言ってしまえば、大変面白くない。

 もちろんショウ様の素晴らしさが衆生にも伝わったということは喜ばしい、だが、それは同時にあの方が俗世間の穢れにもまれてしまうことを意味しているのだ。

 当然のことながら、その程度であの方の輝きが陰るわけではない。しかし、穢れを見せつけてしまう可能性だけでも、私には耐えられない事実なのだ。

 しかもそれが、現在進行形で続いている。

 ……とはいえ、あの法王の養子やダークエルフの男をひどく気にかけていた様子のショウ様だ。あ奴らから引きはがすというのは難しいだろう。

 しかし、可能であればあの方を誰も立ち寄らないであろう秘境へと移り住ませて、その穢れなき純粋な美しさを維持させたい。

 そのためには一体どうしたものか――


「――アーネット!」

「あら、何事でしょうか」


 ブレイがノックもなく、私の自室のドアを開けた。

 まったく。貴族だというのにマナーもあったものではない。

 これだから、この野蛮な男が嫌いなのだ。


「聞いたか! なんでショウがあんなに人気なんだ!」


 オレたちはこんなにも苦労しているのに! とブレイが吠える。

 なるほど、現在『黎明の聖女』が置かれている状況が不満のようだ。

 確かに、現在我々の評判はよろしくない。

 戦闘能力そのものは未だ強いものの、マナーがないと上流階級の依頼人から倦厭されつつあるのだ。

 私個人の評判が下がったという話は聞かないので、おおよそブレイとガフの無能共が原因だろう。

 上流階級の出身である彼らは、しかし己の地位を鼻にかけるばかりで、ふさわしい行動をとろうともしない。

 ブレイは只々幼稚な言動を繰り返し、ガフは己の知識を過信した、傲慢な発言ばかりを繰り出す。

 正直なところ、私も辟易としている現状なのだが――

 ――いや、待てよ。


「……そうですか」

「ああ! それで――」

「――それでしたら、このような手を打ってはいかがでしょうか?」


 私はブレイに、とある計画を打ち明ける。

 彼にとってはともかく、私にとっては勝っても負けても損のない計画だ。

 ブレイはその内容を聞くと、ふたつ返事でうなずいた。

 さて、あとはうまく動いてくれれば良いのだが――

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