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依頼で来たんですが

 ある日、僕たちはモンスター、「テンタクル」が潜むという森へやってきていた。

 うっそうと茂る森は日の光ひとつ通さず、黒々とした空洞が目の前で口を開けている。

 ――夜な夜なここから不気味な音が鳴るようになったから、退治してほしい。

 ギルドにきた依頼は、そういうものだった。


「それで、テンタクルって魔物は危険なの?」


 当然のようについてきたミシェが(実際当然ではあるのだけれど)聞いてきた。

 テンタクルは人里ではあまり目撃例のないモンスターなので、詳しく知らないのだろう。


「人の命を奪ったりはしないって意味では危険じゃないけど、ものすごく強くて思い通りにさせられかねないって意味ではかなり危険なモンスターだね」

「どういうこと?」

「テンタクルはね、繁殖期になると卵を生き物の中に埋め込むんだ」

「え゛」

「まあギルドに行けばなんとかしてもらえるんだけどね。それで、卵のうちは大丈夫なんだけど、これが孵ると話は別だ」

「別って……?」


 ミシェが身体を寒そうに震えさせている。

 テンタクルの生態に嫌悪感を抱いたのだろう。


「……テンタクルの幼体はな、寄生生物なんだよ」


 僕に代わって、ジョシュアくんがミシェの疑問に答えた。


「寄生生物?」

「ああ、テンタクルの幼体は宿主を操って、成体が生息するにふさわしい場所へと連れて行かせるんだ」

「うわぁ……」

「ここが奇妙なんだが、テンタクルの適切な生息域ってのはバラバラでな、砂漠地帯から水中まで、発見例はいくらでもある」

「宿主によって適切な生息域が変わるって学説もあるね」

「ヒェェ……」

「……ま、成体になっても母親を守る習性があるから、命という点ではなにひとつ問題はないんだがな」


 ミシェは一連の話を聞いて、頬をひくつかせながら森を見つめた。

 ジョシュアくんの話で「命」以外の保証がないことを思い知らされたようだ。


「……さて、話を戻すよ」

「う、うん」

「ここで変な音がしたということは、たぶん、かなりの幼体が産まれているってことだと思う」

「よう、たい」

「うん。成体になるとあまり動かないからね、そういった音が鳴ることは稀なんだ」


 とはいえ、あまり増殖されると人里でも被害が起きかねない。

 だから定期的に冒険者を出して退治していたはずなのだけど……。


「……たぶん、虚偽の報告をしたってことだね」

「なるほど。ここは辺境の地だから、隠したところでバレっこないってことか」

「そういうこと」


 今僕たちがいるのは、王国の南限。

 細長い半島の先に位置する場所なので、中々人通りもないのだ。

 そして報告も届きづらい。

 今回の冒険者は、その弱点を理解して、嘘をついたといったところだろう。


「……まったく、悪質にもほどがあるよ」


 とはいっても、彼らの対応は後だ。

 まずは、目の前の触手だらけになってしまった森をどうにかしなければならない。


「……もし嫌だったら言ってね。街のほうに宿を用意してあるから」

「だ、大丈夫。……ちょっと怖いけど」

「オレも大丈夫だ」

「……そっか、ありがとう」


 それじゃあ行こうか。

 僕はそう言って、ずんずんとぽっかりと空いた闇の奥底へと足を進めるのだった。

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