こんにちは
「おっと! そうだった確かに失礼だったね」
「そうね、初対面の人をじっと見つめて『素晴らしい』だなんてとても失礼な振舞いね」
「悪かったよ。謝るから君もそんなに警戒しないでよ」
「謝罪は受け取るわ。でもごめんなさい、それは出来ない話。だってあなたの目、いやらしいもの」
名前も知らない可憐な美少女は華奢な体を自らの両腕で抱くと汚物を見るような目で僕の顔を見た。
何てこったい、第一印象最悪じゃないか。僕が何をしたって言うんだ、大体君の体をいやらしい目でなんか見てないさ。僕はただ美的好奇心の目を君に向けているだけだよ。だってヴィーナスの彫刻を下の目的で見る男なんて誰もいないだろ? うん、でも絶対とは言えないけど。それでも君に向けている目は変なものじゃないと思うんだけど。まさか僕の顔自体がそういう意地汚い顔なのか! それを遠まわしに言っているのだったら君の印象は最悪になるんだけど。でも君から見たら僕の印象の方が現時点では最悪なのか、悲しいな。確かに僕のたった一人の友達であるあの娘も僕の何か考えているときの目は気色悪いって言ってたしな。全く持って理不尽だよ。
「あなたそんなにショックだった?」
「……?」
「いや、そんな『どうして?』ていう顔をされても」
「うん僕としても君と同じ反応をしたいんだけど。大体、僕がちょっと黙っただけでショックを受けたかどうかを判断するのは早計だと思うんだけど。まあ君の何かに触れたのなら謝るけどさ」
少し早口で僕は彼女に向かって講釈を垂れた。
はあ、やれやれ僕としたことがなんて様だ。一人の女性に向かってむきになるなんて見っとも無い。
すると僕の講釈が効いたのか彼女は少しピリついた口調で言葉を返した。
「あなたは少し人のことを考えたほうが良いわ」
「なぜ?」
「それは言っていいことと言ってはダメなことの区別がついていないからよ」
「どういうことだい」
意味が分からない。
確かに出会っていきなり失礼な言葉を発したことやらしくもない講釈を垂れたのは悪いことだと思う。けれどもそれは全部本心から思ったことだ。人には言いたいことを発する権利くらい現代の日本であるのなら保障されているだろう。しかもこの場は僕と彼女以外の二人しかいない読む空気もクソも無いだろうに、それでもなぜ彼女は僕を非難するのだ。
「はあ、どうせあなたのことだからまた心の中で何か不満を漏らしているのでしょう。でもそれは思って当然のことよ。でもそれを言葉に出してはダメ」
「どうしてだ? 現代の世界だったら特に罰は無いだろ。それに君の権利も侵しちゃいないし一言断ったじゃないか」
「あなた友達いないでしょ」
彼女は長い黒髪をフッと手でたなびかせると今度は冷たい、現実を突きつけるような言葉を僕に着きつけた。
うっ! ぐうの音も出ない。確かに僕は友達は居ないに等しい。今までの人生でできた友達何て彼女を含めて二人しかいない。そして今関わってるのはたった一人だけだ。
「……」
「図星ね」
「どうしてわかったんだい?」
「あなたの発言は突き詰めすぎて現実的過ぎるのよ。事実私もそうであったし、というか今もそうだし」
「同族嫌悪ってやつか」
「そうね、あなたに言われると非常に腹立たしいことだけど」
何だそういうことか。彼女は自分と同じ人間を見つけてきっと悲しくなったのだ、自分のような人間にならないように僕に気を遣ってくれていたのだう。でもそれは有難迷惑さ。
「というかまだ私たち自分の名前を名乗っていなかったわね」
「そういえば。こんな喧嘩腰の会話をしてるくせに」
「じゃあ私から、私の名前は美濃春代よ。よろしく」
「そうかい僕の名前は倉島友永、こっちこそよろしく」
そうして変わり者たちは握手を交わした。
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