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初めまして

 誰かなぜ人が愛を育むのかを知っている人はいないかい? 僕はどうしてもこのことが知りたいんだ。でもそんなのどうでも良いと思う人もいるかも知れない。それでもどうしても誰か、僕に愛を教えてください。愛の育み方を教えてください。だってそれは生きることに繋がるだろ、だってそれは生きることのほんしつであるだろ、だから僕に、倉島友永(くらしまともなが)に……。

 

 僕は学校の屋上で昼下がりの青空の下、春の生命で満ちた風を受けながら欄干にその対して特徴的でもない背を預けながら居もしない誰かに教えをねだっていた。

 もちろん今は授業中さ、つまりはサボりながらこんな事を考えているんだ。それは誰も何も教えてくれやしないよな。


 艶やかな短い黒髪を風に流しながら落胆した顔で倉島は自らを笑った。

「はあ」

 そして溜息を吐いた。

 誰でもいいからこの屋上に来てくれないかな。いいや来る訳ないかだって今は授業中だものな。もし来るとしたら管理員かひどい腹痛て保健室に行くと言って授業を抜け出し本当はただこの屋上でサボっている僕を見つけに来る先生くらいだろ。

 でも良いんだ、話し相手じゃなくてもいい誰かが僕を見つけてくれればそれで良いんだ。きっと僕のこの理由を他人が知ったら面倒くさい、女々しい男だと聞いた人は思うだろう。良いんだ、それで。ただ僕を見つけてくれれば。


「おや?」


 誰かが来たみたいだ。

 僕は耳が良いから人が階段を上る音すら少し離れたこの場所から分かる。全くこんなところが優れていてもどうしようも無いのにな。そんな愚痴は置いておいて一体誰が来たんだ? この足音の軽さからするにきっと女性だろう。管理員さんだったら男だし作業道具とかの器具でもっと音が鳴るだろうしさ。先生じゃなきゃ良いんだけど、自分でさっき先生でも良いって言ったけどやっぱりそう言った頭の硬い人だと嫌だな。それよりも自分の意志の低さに嫌になるよ。


 僕が少しの間自己嫌悪をしているうちに屋上に続く扉は長い間雨に打たれ、日に当たり続けた錆びた蝶番をギシギシと音を立てながらゆっくりと開いた。

 するとそこから可憐な少女が一人姿をふわりと風の様に、まさに今流れているこの春風の様に現した。制服のネクタイの色から察するに僕と同じ二年生だ。

 しかし彼女の容姿はその年齢に見合っていないものだ。いや悪い意味じゃなくてね。

 その長い髪は夜空の様に深い黒であり彼女の肌は陶磁器の様に真っ白だ。この二色、つまり両極端な色の違いが彼女の容姿をさらに称えているに違いないと思う。もちろん顔も素晴らしい、桃の様に薄いピンクの唇、長い眉、二重でぱっちりとしているがどことなく鋭さを感じる目。どこをとっても可愛い、違う。そんな陳腐な言葉ではなく彼女は美麗という美術品に言って聞かせる言葉が合ってると思う。

 そして僕は彼女の姿から目が離せなかった。


「素晴らしい」


 何目線で言っているのか分からない感嘆の声さえ出てしまう。

 とにかく彼女の造形は女神と言っても差し支えないのだ。

 そんな感じで彼女を見つめていると目が偶然パッと合った。いや偶然じゃなくて必然だろう、なぜなら僕は彼女から目を離すことが出来ていなかったからだ。蛇に睨まれた蛙のようにね。

 数秒見つめ合った後に彼女は口を開いた。


「何かしら?」


 彼女と僕の初めての会話はそんな警戒めいたソプラノの一言からだった。

 このたった一言から僕の日常がガラッと変わるなんてこの時の僕は思いもしなかった。

ご覧いただきありがとうございます。

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