換金所の内装はまるで……。
下品な単語が出てきますが大丈夫ですかね?
苦手な人はサラッと読み流して頂けると、有り難いです。
換金所に足を踏み入れた私であったが、その内装のお金を掛けた悪趣味な造形に圧倒されていた。
趣味の悪い黄金でできたギラギラした巨大な柱や、妖しさしか醸し出していないショッキングピンクの個室の扉、そして天井から垂れ下がる紫の光沢がある布……。
一瞬、ここはどこの覗き部屋か?と、勘違いした程である。
私が内装に唖然としていると、ヘスさんがちゃんとエスコートしてくれる。
しかしその姿は、端から見ると覗き部屋へ誘い込もうとする、人のよさげな皮を被った客引きマンに見えてくる不思議。
ノォー!違うんですっ!決して私の脳内が汚れているのでは無くて、この換金所のいかがわしい雰囲気が悪いんだからね?
何でこんな配色とか何だよ!この内装手掛けたやつは、きっと狂ってるよ。
私が頭をブンブン振っていると、ヘスさんが心配そうに声を掛けてきてくれる。
「リエラ?どうしたの?気分でも悪いのかい?」
「だ……大丈夫です。ちょっと、想像していた換金所とかけ離れた内装だったので、驚いただけです」
私がそう言うと、ヘスさんは納得したらしく、相槌を打ってくれる。
「ああ~……まぁ、そうだね。初めて入るとびっくりするよね?僕も初めて入った時は、この目がチカチカする内装に驚いたからね?でも何度も利用している内に、慣れるから心配要らないよ」
いえ、心配だらけですが。てか、この空間に慣れたくないかな。
はぁっ……。換金だけして、とっととこんな場所からおさらばしたい。
「そっ…それじゃあ…ヘスさん、私は換金所は初めてなんで説明をお願いします」
「うん。良いよ。先ずは受付でどんな物を換金しに来たのかと、自分の名前を紙に書くんだ。受付で待っていると、紙に書いた名前と個室番号がアナウンスされるから、それに従って個室に入るだけだよ。その個室にそれぞれ専門の鑑定士が居るから、売り物を見てもらうだけだよ。しかも大体その場で現金化してくれるから、楽しみなんだよね。持ってきた物が幾らになるかっていうのはさ~」
楽しそうに説明してくれるヘスさんを見ていると、私のさっきまでの動揺も、段々と治まってくる。
「ヘスさん、大変分かりやすかったです。じゃあ早速受け付けに行ってきますね」
動揺は治まって来ましたが、早く終わらせたいのは変わらないので、ちゃっちゃと動くことにする。
「僕も付いていくから、心配しないでね?」
「有り難うございます……」
私は受け付けにヘスさんを引き連れて、やって来ると受付の女性に声を掛けた。
「あの、すみません……換金したいのですが……」
「はい!有り難う御座います~!では、この紙にどんな物を換金しに来たのかと、お名前をご記入下さい!」
ううっ…。美人の女性にこんないかがわしい場所(失礼)で、微笑まれると何だか偲び無いよ。
「はい………」
目を逸らしつつも、紙に魔石を売りに来たと記入して、名前を記入する。
記入を終え、受付の女性に紙を渡すと、気のせいだと思うのだが、一瞬だけ女性が同情した様な表情で私の方を見た様な…。まぁ、きっと私の気のせいでしょうけど。
「はい、確かにお預かり致しました~!このロビーにて、暫くお待ちくださいませ!」
そう言って微笑む姿からは、先程一瞬だけ見せた憐れみの表情は全く窺えなかったのであった。
ロビーで待つこと数分、私はヘスさんとたわいのないお喋りをしていると、天井から私の名前がアナウンスされた。
『リエラさん、リエラさん……8番の個室へどうぞ~』
おっ?私の名前が呼ばれたぞ?8番の個室は……うん?失礼だが何だか寂れてない?他の番号の個室は扉から既にキンキラリンなのに、8番の個室だけ薄汚れている様な………。気のせいでしょうか?
「リエラ?呼ばれたよ?行かないのかい?」
私が若干固まっていると、ヘスさんが優しく背中を押してくれます。
うん、まあ捕って喰われる訳でも無いし、よっしゃ!行きますかっ!
私は8番の個室の扉のドアノブを、気合いを入れながら回したのであった。
ガチャ……ガチャガチャ……ガチャガチャガチャ……。
うん?開かない。どうやら立て付けが悪いようだ。
何度かドアノブをガチャガチャしていると、見かねたヘスさんが私の代わりに扉を開けてくれた。
ぎいぃぃぃ~~~~~~~。
扉の開く音さえも、何だかホラーテイストであった。私はごくりと唾を飲み込みながらも、ゆっくりと個室の中に足を踏み入れた。
個室の中は酷くこざっぱりとしていた。
テーブルと、テーブルを挟んで椅子がふたつあるだけのシンプルな室内であった。
ロビーの悪趣味さとのギャップに、私は若干驚いてしまった。
しかし……呼ばれて室内に入ったのに、私とヘスさん以外に誰も居ないので、アナウンスの間違いだったのかと、思ってヘスさんに助けを求めようとしたその時、勢いよく私が入ってきた扉とは反対の方向にある扉が開いたのであった。
「はいはい~。君は魔石を売りに来たんだってね?ほら、見せて!早く!」
突然入ってきたモノクルを掛けた若い男性は、勢いよくそう言うと、馬鹿にした様な態度でこちらを急かしてくる。
余りの態度に固まる私とヘスさんに、男性は溜め息を付くと、横柄な態度で更に急かしてくる。
「はぁ~。ねぇ、早くしてくれない?時間は無限じゃ無いんだよ?有限なんだよ?どうせ大した魔石を持って来たんじゃ無いんでしょ?そんな君のために、私の時間を割いてやってるんだから、買い取って欲しい魔石を早く出しなって言ってるんだよ?」
横柄な態度の男性は、面倒くさそうに片手を出しながら急かしてくる。
私はこの男性の横柄な態度に頭に来てしまい、無言で立ち上がると、ヘスさんの腕を掴むと、立て付けが悪い扉のドアに向かってつい、魔術を使用してしまった。
「………エアハンマー」
私がボソッと魔力を込めて呟くと、扉は粉々になって吹き飛んだ。
ゴバギャギャギャギャギャッ!!!!
吹き飛んだ扉から姿を現すと、ロビーに居た全員の視線が当たり前だが、私とヘスさんに集中した。
その大量の視線に、頭に血がのぼっていた私であったが、急に我に返ってしまった。
そんな私の後ろから、さっきの横柄な態度の男性が、慌てて追い掛けて来て第一声でこう言った。
「なっ…何で本物の魔法使いが、こんな場所に来るだよっ!それに魔法使いだったんなら、ちゃんとローブを着用しとけよなっ!!」
はあっ?何だコイツ……?何でこんなに偉そうなの?馬鹿なの?死にたいの?
何でそんな事をお前に言われなきゃならないんだよ?ローブを着ようが着まいが、それは私の自由だろうがっ!
私の中で殺意に近い、どす黒い気持ちが渦巻く。
ノエルにもここまでの気持ちが渦巻いた事は無いのに………。コイツ……さては私をイラつかせる天才だな?今すぐにでもお前の存在を灰塵に帰してやるよ?
私が内心で高位魔術を男性にぶっぱなすため、魔力を練るのを開始しようと考えていると、突然ダンディーな声の持ち主が、私と横柄な態度の男性の間に割り込んで来た。
「お客様!申し訳御座いません……。私どもの鑑定士が何か無礼を働いた様で、大変申し訳御座いませんでした。ここはこの換金所の支配人を務めさせて頂いて居ります、私ガメッティーの顔を立てて頂き、お許しいただく事は可能でしょうか?」
ガメッティーと名乗った男性は老齢であったが、背筋がピシッと伸びており、立ち姿に気品があり、圧倒的な存在感を醸し出していた。
そんな人物からの下手の謝罪に、私は毒気を抜かれてしまい、魔力を練るのを止めたのであった。
私が魔力を練るのを止めたのが分かったのか、ガメッティーさんは、嬉しそうに微笑みながら私に一礼すると、くるりと踵を変えて横柄な態度の男性に向き直ると、力一杯に男性の頭に拳を振り下ろしたのである。
ゴインと、鈍い音が響くと共に、殴られた男性が勢いよくその場に倒れ込んだ。
普段の私だったら、殴られた人の心配をしますが、今回ばかりはそんな気持ちは毛ほども沸き上がらなかった。むしろザマァミロという気持ちで一杯だったのであった。
リエラにノエルよりも嫌いだと豪語された男性。
でも、小生もこんなタイプは苦手な部類です。
礼儀が無いのは、ちょっとね……。




