召喚
「ここは……どこだ?」
洞穴のような空間。奥からの明かり一つであとは漆黒のみ。
「俺はーー?」
ズキッ
頭が痛む。どこかにぶつけてしまったのだろうか。
「そうだ……俺は確か大学にいてーー
***
「であるからしてーー」
退屈だ。
出席するだけしてゲームしている奴も、寝ている奴も、友人と話している奴もいる。
肝心の教師は全無視でひたすら進めていく。
今日はバイトもないし、この後は授業もない。
家に帰って何しようかな。
どうせ過去問をやればテストは点取れるし、寝るか。
***
「ってことは、ここは夢か?」
……こういう夢ってなかなか覚めないんだよな。
どうしようか……とりあえず、この奥に行ってみるか。
どんなのがあるかな。
恐怖心とか無いんだよな。特に夢だってわかってる時には。
怖くないからこの先へ進めるし、怖くないから余裕の思考。
夢の中で死ぬこともなければ、怪我することもない。
だから進んでしまう。
進んで、しまった。
***
やっと着いた。
光源はこれか?なんか紫色だな。
『導かれしものよ……其方に試練を与える』
うわびっくりした!喋るんかい!
『試練を達成したならば願いを一つ叶えよう』
おもろい夢だな。
紫色の光が話しかけてきて、「願いを叶えてやろう」ってよくある転生ものかよ。
確かに中学生の時にはハマってたけど。
そういえば、昔買った転生モノの小説どこにあるんだろう。
ふと思い出したわ。捨てちゃってたりして。
帰ったら探してみるか。
『よろしいか?』
何が?
[???級クエスト:??神の討伐 受諾しますか? YES/NO]
クエスト?まじで転生もの小説だろ。
まあ、夢だし[YES]っしょ!
『感謝する。それでは、其方にはスキル【継承】を授けよう。このスキルはーー
スキルとか出てきたし。
細かすぎて現実みたいだわ。
まじで異世界に転生してたりして。
そしたらテストなくていいな。
でも戸籍持ってないな。
ってか異世界に戸籍っていう概念とかあんのかな?
作品によってバラバラだけど、なんかある方が多いよね。
異世界って大体ちょっと昔の地球を基軸にしているし。
『最後に、私のスキル【獄炎魔法】を授けよう。これは炎系統の魔法を極めしもののみが取れる魔法で、
初級の[炎球]から全てが使用可能だ。ただし、貴殿の魔力を求めるのだがな。』
うん。よくわからん。
まあ、そろそろ起きるからいいけど。
……謎の(多分俺自身の深層心理がテキトーに作った)やつが消えたな。
さて、そろそろ起きるかな?ちょっと勿体無いな。夢って起きると忘れてしまうしな。
でも小説の世界に入ったみたいで楽しい夢だったな。
ジャリ……
ん?なんかいたか?
!?ゴブリン……?夢の世界だからこそだな!槍も持っているし、ちょっと格好いいかも!いや、ゴブリンが格好いいってわけじゃなくて、
槍を武装しているゴブリンがいる状況がかっこうーー
「ギャァヂャズジフチギャ!」
ん?威嚇でもしてるのかな?細かい夢で安ーー
グチャ
「あ?なんだ?ゴブリンが槍を突き出して……その先……が……?」
左目が熱い……?なんだ?ってか、見えない?
まるでこれは……あの……まるで……
槍で刺されたみたいな
「え?」
痛い!?熱い!?え?え?え?
夢なのに?なんで?え!?
こ……こんな
え?まるで……
まるでここが……現実みたいじゃーー
ボタッ……ビチャッ………
え?なんだ?これ……俺の……目から……垂れてる涙……?
え……?この……赤いのって……もしかして……血……?
誰の……?
まさか……俺の………血?
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
嘘だ!なんで!?嫌だ!
とにかく……ここから……離れないとっ
はやく……こいつらから離れないと……!
***
「はあっ、はあっ、はあっ……」
なんとか……洞穴を……見つけた……!
ここで、一回、落ち着いて……
「え?」
なんで……俺……たおれてっ……?
あっ………血……が……抜けて……
体内の……血が……減って……
ああ、だめだ……意識が………
***
「そうちゃん!」
ん……?誰だ……?
「そうちゃん!早く帰ってきてね!」
俺はもう眠いんだよ……
「今日、私の誕生日なんだから!」
誕生日……?
「そうちゃんってば、いつも遅刻するんだから。」
ああ……そうだな……
「幼馴染の誕生日くらい、遅刻せずにきなさいよ!」
ああ……悪かった
「わかった?」
わかったよ……
「そうちゃん……ソウマ、絶対来てね!」
ああ。絶対行く。
だから少し待っててくれよ。
………シズク………
***
「っは!?はぁ……はぁ……はぁ……」
生きて……る?
ここは、あの洞穴だ。
なぜかは知らないが、ギリギリ生きているようだ。
まだ……少しは動ける。
あれは……走馬灯だったのか?
いや、今考えることでは無い。
なんでもいい。とりあえず早く帰って、祝ってやらなきゃな。
そのために……ここで死ぬわけにはいかないな。
とりあえず、血が乾いて固まってくれたおかげで出血はこれ以上なさそうだ。
体力回復のために水を探さなければ。
本音を言えば医療器具も欲しいが、異世界にあるかはわからない。
……持ち物を確認してみるか。
ん?そういえば、ここは異世界なんだろ?
で、確かあの光はスキルがどうのこうのって言っていた。
つまり、ステータスが出てくるんじゃ無いか?
「ステータス、オープン」
ーーーー
名前 ソウマ
種族 人間
職業 ???Lv?
見習い魔法師 Lv1
スキル
【継承】Lv1
【獄炎魔法】Lv2
状態
左目損傷
出血
HP 32/280
MP 450/450
ーーーー
……左目は、やっぱりダメなのか。
起きた時から薄々その感じはしてたけど、やっぱりこう事実を突きつけられると辛い。
そしてスキル……説明とか出てこないのか?
ーーー
【継承】
自分が死を見届けたもののスキルを受け取ることができる
【獄炎魔法】
炎魔法の上位存在スキルの一つ。
炎系統の魔法をほぼ全て使用可能。
ーーー
最強スキルじゃねーかよ。
なんだよ……無双系か?
そんなのいらないからよ……俺の左目を返せよ………
現実に返してくれよ………
なぁ…………
ああ………生きなきゃな………
あの光‥…『願いを叶える』って言ってたよな?
じゃあ、クエストクリアして、左目返してもらって、現実に帰ろう。
そうしよう。
そうしないと、
目標を立てないと、
何かやることを見つけないと、
もたないから。
***
敵を倒しつつ先に進む。
魔法を使い続けてきて、だんだんとより良い感覚がわかってきた気がする。
最初の頃は魔法一つ使うだけで音なんかに驚いたものだが、今では何も感じない。
うん。そろそろかな。
ーーー
Lv up!
獄炎魔法 Lv2→3
継承 Lv3→4
暗視 new!
粘着 new!
職業 Lv2→3
ーーー
「スライムがいてくれて………よかったよ。」
この世界について、いくつか、わかったことがある。
まず、Lv upの概念……ってか、Lvの概念があること。
そして、Lv upすると体力と魔力……MPが回復すること。
一桁Lvは簡単に上がること。
湧くモンスターは場所によって変わること。
職業、スキルそれぞれにレベルがあること
スキルのレベルアップには、どうやら隠しバー的なのがあるらしい。
敵を一定数倒すとレベルアップしていたが、だんだんと数が増えてきている気がする。
それと、いちいちインフォメーションが流れること。
………ゴールまでが、途方もないこと。
あと、俺の固有スキル【継承】は、「自分が死を見届けたもののスキルを受け取ることができる」
だが、目の前で自分が殺したモンスターは死を見届けた判定になるらしい。
だから俺は今、スライムのスキル【暗視】と【粘着】を持っている。
つくづく最強スキルだと思うよ。
ただ、こんなスキルいらないから俺のーー
いや、考えちゃダメだ。
今はただ、生存のためのルートを進もう。
歩いてみて、スライムや骸骨、ゾンビには遭遇したが、あのゴブリンには出会っていない。
ここまでにゴブリンには何体か会ったが、どいつも素手、せいぜい棍棒だった。
それを踏まえると、あいつは、何かしらの特殊な個体だったのかもしれない。
正直、今出会ったとして、勝てる自信はない。
……精神が耐え切れるかもわからない。
だから今は出会わないことを祈りつつ進む。
さて、しばらく進んでも一向に外に出ないことから、どうやらここは地下であると推測する。
そうすると天井を掘って脱出するか、地上への道を探すかだが……
この硬い岩を掘れるとは思えないし、進むしか無いか。
さて……出口を見つけるのが先か、
俺が力尽きるのが先か
どっちが早いだろうか……
勝負だ
***
襲いかかってくるモンスターを魔法で焼きつつ先へ進む。
幾度となく繰り返した結果、戦い方を理解できた。
敵の視線や体の角度から狙っている場所、
手の向きや魔力の込め方から魔法のより良い発動方法。
ーーー
Lv up!
暗視 Lv1→2
継承 Lv4→5
音波探知 new!
回復 new!
熱感知 new!
ーーー
先に進む。すると奥から光が出てきていて……
「あ?なんだ?あの光ーー」
ふと思った瞬間、俺は光に包まれた。
***
一つだけ言っておこう。
これは、勇者が魔王を倒す、正義のストーリーでは無い。
かと言って、異世界転移した若者が無双する話でも無い。
これは、俺が身勝手な理由で、この世界を、
滅ぼす、話だ。




