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第八話「計画の誤算」

ゆっくりしすぎた。

 入学して三日目。

何事もなく学校へ行き、何事もなく勉学に励み、何事もなく帰宅する。完璧な今日の計画を立てて学校の門をくぐった。

そこには昨日の爪あとのように校庭に大きな穴が開いていた。学校は工事中の張り紙が至る所に張ってあり今にも崩れそうになっている。だが、それは昨日の名残で今日はまだ何も起きていない。計画は十分に達成可能な領域だ。

 黒く焦げたロボの横を通りながらそんなことを考えている私はもう末期なのかも知れないな。

「おはよー」

 下駄箱のところで後ろから声が聞こえる。このダレた声は今日の計画の一番の障害になるだろうヤブ医者の声だ。ここで挨拶でもしようものなら確実に友達と見なされ、これから毎日付きまとわれる。それだけは避けなければ。

 それを察したようにヤブ医者は私の前に回りこんで言う。

「もしかして今挨拶したら僕に高校生活をボロボロにされると思ってる?今無視したところで無駄だと思うよ」

 察するどころの問題じゃねえ。もうこいつは読心術をマスターしてやがる。

 だが、ここは反応してはダメだ。喋らず騒がず他人のふりをしてやり過ごすんだ。

 周りの生徒達がなにやら騒がしいがそんなことを気にしてはいけない。下を向いて誰とも目を合わせるな。

「おはようございます」

 無視を続けていると突如私に向かって丁寧な挨拶が送られてきた。

「あっ、おはようございます」

 先生かと思い思わず挨拶をし返してしまった。よく考えてみたら私の知っている先生は入学式の時に不穏な台詞を言って私を助けたあの人だけだ。じゃあこの人は一体誰だ?

 そう思い顔を上げると二メートル近い顔を包帯で覆ったマッチョマンが立っていた。この体系をよく思い出してみると、彼は昨日会ったハルクだった。

「おはようハルク君。重症のようだけど大丈夫?」

 ヤブ医者が面白がりながら挨拶をする。

「あなたのせいで朝から包帯男呼ばわりですよ。どうしてくれるんですか?」

「僕は医者だから治してあげるくらいしかできないなー」

「人を容赦なく爆弾で吹き飛ばす人に治せる傷はないと思いますけどね」

「ほう、僕がただの爆弾魔だというのかい?」

「昨日あんなことをされたんだから当たり前です」

「なら僕が本物の医者だということを証明してあげよう」

「望むところです」

「まずは君の傷を治してしんぜよう」

「やれるものならやってみてください」

「よしっ。なら保健室に行こうか」

 ヤブ医者はハルクを連れて保健室へと向かって行った。

 ハルクはまだ気づいてないのだろうな。自らヤブ医者の実験台に名乗りを上げたことに。



「ゆっ」

教室に入る前にゆっくりと合流した。

「おう、おはよう。ヤブ医者はハルクの付き添いで保健室に行っているから今日は遅れると思うぞ」

「ゆっくりしていってね!」

「そうだな」

 この時すでに饅頭と話ていることに違和感がなくなっていた。むしろゆっくりが凄くまともに思えていた。


 計画なんて最初から破算しているものなのだと、後に私は悟った。


ゆっくりの挿絵を描きたかった。

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