聖女の娘
「ルアちゃんがこの魔石を持っていたのは、あなたが、聖女の娘だからよ」
シェーラ様が石を差し出し、こっちを真っ直ぐに見て言う。
とても冗談を言っているようには見えなかった。
「わたしが聖女の娘……? って、どういう事ですか」
「さっきも言ったけど、この石はとても珍しい物で、これを持つことのできる者は浄化の術が使える者と呼ばれると王族にしか許されていないの。でも、何故か山に住んでいたはずの貴方がこの石を持っていた」
だからって、聖女の娘だとはならない筈だ。術が使える者は選ばれた者だとは言っていたが少なくとも数人、数十人はいるような口ぶりだった。
「この石をよく見て」
シェーラ様が石に光を透かすようにして持つ。氷が固まる直前に白い蝋を流し込んだかのように、石の中に白く濁った紋章のような模様が現れていた。
「ルアちゃんはもともと何もない透明だと言っていたけれど、模様が浮き出てきているでしょう。これはルアちゃんの石だという証拠でね、この石で初めて術を使った時に現れるものなの」
「わたし、術なんか使っていません」
わたしがそう言うとシェーラ様が首を傾げる。
「悪魔に襲われた時、術を使ったでしょう?」
え、使ってないけど。
……そういえば山で悪魔に押さえつけられて殺られそうになった時、何か胸が辺りが温かくなって、気づいたらアイツが吹っ飛ばされてたんだっけ。
その事を言うと、シェーラ様は何かぶつぶつと呟く。
「舞をしないで術を使ったの?命の危機を感じたから。でもそんな事って……」
「シェーラ様、何か言いましたか?」
「え、ああ、大丈夫よ。きっとそれだわ。」
シェーラ様はさらに本のページをめくると、ある人物の絵を指差す。
「この方よ。」
シェーラ様が指差す所を見て、思わず、息が止まった。
なんだろう、この感じは。
「ファーレン・オアシス。伝統的な舞を引き継いできた一族、オアシス家の一人娘で、約110年前に起きた悪魔の蘇りが起きたとき、一族に伝えられていた舞が悪魔と戦う為の舞だということ突き止め、見事悪魔を封印した聖女とされている人物よ。」
そこに載っていたのは、群青色の髪に銀の瞳をもつ若い女性。
確かにその人は自分にそっくりだった。
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