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その12 大国連中は己の力を過信して勝手に行動し、それに見合った結果を得ていく

 連合各国と共同歩調を取ると言っていた大国連中は、それらを無視して行動を開始していった。

 使者を葬ったその日から軍勢を動員し、トモヒロの国へと向けていく。

 それを連合各国はあわてて止めようとしたが、聞き入れるような国はない。

 いずれも己の国の力を信じているようで、差し向けた軍勢が敵を殲滅する事を信じて疑わない。

 なまじ大国だからこその驕りだろう。

 逆に小国、せいぜい中規模程度の国は慎重だった。

 大国の間にはさまれ、その中で生き残る為に動いていたからより強い敵への対処方法を心得てる。

 何より基本的な方針として大事な事をわきまえている。

 己を過信しない、相手を過小評価しない、余裕があるように思えても油断しない。

 更に、力の分からない相手には慎重に、分からない事には迂闊に近づかない。

 こういった事をわきまえてるが故に、どうにか立ち回って生き残ってきたのだ。

 そうして培った本能が叫んでいる。

 何かとんでもない事が起こってるのではないかと。

 それゆえに連合の中核になってる各国(主に小国)は、大国のように動けなかった。

 それは、彼らが送った使者の帰還によって正解だった事が立証される。

 持ち込まれた情報をもとに、各国は早速白旗を用意していった。

 それをまずは最前線になるであろう国境付近に送り込み、国旗と共に掲げるよう命令を出していく。

 その後もあちこちの町や村に白旗と国旗を送り込み、攻撃対象にならないよう振る舞っていく。

 また、万が一を考えて軍を派遣し、最悪の場合の対抗手段としていく。

 トモヒロが約束を破る可能性を考慮しての事だった。

 これらが杞憂に終わる事は後に分かるのだが、この段階ではどの国も最低限の防衛を考慮するしかなかった。

 トモヒロの真意が分からないのだから仕方ない。

 そんな連合中核国をよそに、大国は勝手に行動を進めていく。

 そこに連合や協力関係などを考慮してるところは全く無かった。



 大国側からすれば、連合を考慮する必要がそれほどなかったという事である。

 連合している国々の総合力は、確かに大国よりは大きい。

 しかし、それらが連携して行動できるかというとそうではない。

 例え総合力が上回っていても、指揮系統が統一されてないものならばただの烏合の衆である。

 蹴散らすことなど造作もない。

 手間はかかるが、脅威となるかというとそうでもなかった。

 そんなもの達をかえりみている必要はない。

 それゆえに大国達は己の思惑を優先して行動していく。

 足並みも揃わず、独自に行動してるので補給路すらもバラバラだった。

 効率など何も考えてない。

 国単位ではそれなりに動いてるのだが、同時に行動してる他の国との連携がない。

 なので、進軍路で衝突が起こったり、兵糧の搬送・保管場所でもめたりもする。

 無駄がそこかしこで発生し、整然とした行進・行軍などのぞむべくもなかった。

 直接的な戦闘は始まってもいないが、それ以前の段階で既に破綻が露呈してる観があった。



 進軍そのものの問題は更にあった。

 行く先々の無政府地帯。

 そこでの乱暴狼藉である。

 強奪・略奪・強姦などは当たり前。

 気に入らなければそれだけで人々を殺していく。

 そんな事があちこちで起こっていった。

 その為、村や町を放棄して逃げ出す者達が続出していった。

 当然ながら向かう先はトモヒロの国となる。

 それはそれで行くのも怖いが、迫る大国の軍勢から逃げるにはそこへ行くしかなかった。

 かくして流民・難民が続出していく。

 その先端がトモヒロの国に到着すると、彼らは事情を説明していく。

 トモヒロはそんな彼らは、とりあえず国境の外に留まらせ、収容所を作っていった。

 聞こえは悪いかもしれないが、そこにとりあえずの居場所を作っていく。

 テントを増産させ、食料の供給もしていく。

 ついでながら、国境の外の無統治地帯に統治機関を送り込み、とりあえずの領土としていった。

 難民をそこで働かせ、生活の糧を稼がせるためでもあった。

 一時給付として食料などは与えるが、それだとトモヒロの負担が増えるばかりである。

 難民にもある程度自給自足はしてもらわねばならなかった。

 国境地帯がにわかに活気づいていく。

 それと同時にトモヒロは、そろそろ頃合いだろうと考えて動き出していく。

 出来れば大国の軍勢が一同に会したところで殲滅したかったが、そうも言ってられなさそうだった。

 これ以上難民が流れ込んできてはたまらない。

 それらが元の居場所に戻れるようにする必要があった。



 魔術で一気に駆け抜けていくトモヒロ。

 あいかわらず時速100キロで走り抜け、敵へと向かっていく。

 その接近を魔術探知で察知した大国の軍勢は陣形を構えていく。

 だが、トモヒロはそれを見ても足を止める事なく突っ込んでいく。

 先遣隊である強硬偵察部隊1000名は、こうしてトモヒロと会敵し、そして壊滅していった。



 その後もトモヒロは第一陣、第二陣と敵の部隊と接触しては撃滅していく。

 いずれも一万を数える軍勢であったが、対抗もほとんど出来ずに潰えていった。

 数名程度の生き残りを残し、他は全て殲滅。

 能力差がはっきりと出ている。

 それを為してからトモヒロは、本陣へと向かっていった。

 まずは一国、それを潰すために。



 本陣である二万の軍勢は、魔術による急報を受けて構えてはいた。

 しかし、それでもまだ懐疑的ではあった。

 いくら何でも本当に一人で軍勢が潰れるものなのかと。

 だが、実際に目の前にあらわれたトモヒロによって、疑念は事実であったと確認されていく。

 それと同時に彼らは、暴れ回るトモヒロによって殲滅されていった。



「それそれそれそれー!」

 繰り出される魔術による暴風に激流、地割れに吹き上がる石つぶて。

 更には猛炎によって火だるまにされ、凍てつく冷気に生きたまま体を硬直させられていく。

 拓けた平原に展開していた軍勢は、たった一人によって蹴散らされていった。

 魔術によるものだけではなく、トモヒロ自身の身体能力によっても。

「食らえー!」

 適当につかんだ兵士を、投球するように投げていく。

 時速数百キロを越える速度で飛ばされていく兵士は、途中に立っていた仲間を巻き込んでいく。

 激突の衝撃だけでも即死は免れない、死なないまでも全身骨折や内臓破裂は避けられない。

 それを手当たり次第捕まえた兵士を使って何度も何度も繰り返していく。

 集団で押し寄せても何の意味もなかった。

 捕まって投げ飛ばされて範囲内にいる全てが巻き込まれていく。

 数百人の兵士が瞬時に積み重なって倒れていった。

 根本的な強さの違いを嫌でも理解した本陣部隊は、士気を急激に崩壊させていく。

「ひ、ひい!」

 腰砕けになった兵士達は我先にと逃げ出していく。

「おい、何をしてる、戻れ!」

「うるせえ!」

 下士官や士官がそれらを押しとどめようとするが、集まった兵士に襲いかかられて殺される。

 やってくる敵よりも指揮官であるそれらの方が遙かに弱い。

 ならばどちらを倒して命をながらえるのかという事になる。

 強弱がハッキリしてるだけに、結果は明らかだった。

 前線から逃れる兵士が、自動的にトモヒロの軍勢となって本陣を崩していく。

 味方同士での争いに陥った本陣が壊滅するのは時間の問題だった。



 こうして一国の軍勢を崩壊させたトモヒロは、向きを変えて別の大国の部隊へと向かっていく。

 倒さねばならない敵はこれだけではない。

 別方面から押し寄せる敵を撃退するべく、トモヒロは足を動かしていった。



 一週間後。

 押し寄せた五つの大国の軍勢は消滅した。

 逃げ帰った者達もいたが、それらは一様に同じ事を口にした。

「あんな、あんな奴と戦えるか!」

 それを聞いた大国の指導部は、いったい相手は何なのかとようやく考え始めていった。

 それはそうとして、敵前逃亡してきたそれらを処罰せねばならない。

 聞くだけ話を聞いたあとは処刑が実地されるのだが、兵士達はそれらにも抵抗、集団で逃走していく事になる。 

 また、処罰の話を聞いた潰走部隊なども、本国へは戻らずに逃亡していく事になる。

 これらが後に追いはぎや盗賊などになっていく。

 だが、トモヒロの国へ向かう事はなく、彼らは連合各国などに向かって悪さをしていく事になる。

 その中には自分達の母国すら含まれていたが、彼らがそれを気にする事はなかった。

 捕らえられて殺されるくらいならば、生き延びるために悪さをした方がましと考えていたからだ。

 実際、彼らも可哀想ではある。

 デタラメな強さを前にして戦う事を求められたのだから。

 それでも戦うのが兵士であり軍隊であるだろうが、それにしたって差が開きすぎていてどうしようもない。

 かなわない相手に無謀な戦闘をしかけろと言われれば逃げ出したくもなる。

 誰だって命は惜しい。

 その命をなげうってでも守らねばならないものがある者でなければ、自己犠牲などしはしない。

 中にはそういった志を持つ者もいたが、大半はそうではない。

 大国といえども、こういった人の心までつかんでるわけではなかった。

 だからこそ軍勢は崩壊していった。

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