03.親友
「気にすることないんだょ?結華は私にとってもアイツにとっても大切な友達なんだし」
「ん~、でもやっぱり?私彼女なわけじゃないし、頼るわけにもいかなぃじゃん」
きっと本来は喜ぶべき言葉なんだろう。
確かに私だっていくら親友といえど、自分の彼氏と仲がいいのは妬ける。
でも本当に結華は私にとっても、私の彼である尭にとっても大切な存在なんだ。
私が尭と出会ったのは去年の夏。
結華の紹介だった。
元々利発で頭の回転も速い結華は、その人柄的にも私とは違って男友達が多かった。
そんな結華に誘われて3人で遊ぶことになったのがそもそものキッカケ。
尭を見てすぐに、私は尭に惹かれていった。
結華はうすうす感づいてはいたんだろう。
初めは戸惑っていたようだけど、私が相談するとすぐに私を応援してくれた。
3人で遊ぶ約束をして用事が出来たとドタキャンすることが何度かあり、ようやくそれが結華なりの応援なんだと私は気づいた。
そんな結華の行動が私の背中を押し、私は決心を決めて去年の冬、尭に告白し、晴れて彼女になった。
私は一番初めに結華に報告した。
結華は自分のことのように喜んでくれていた。
でも、それからだった。
どこか結華との距離を感じるのは。
そして、ただ漠然としていただけの距離を実感したのは今年の春。
どんなに3人で遊ぼうと言ってもノラリクラリとかわされる事が何回も続いた、そんな日。
私は尭から聞かされた。
結華がとても凹んで尭に電話を掛けていたことを…。
私は結華からそんな話を聞いたことは一度も無かった。
そして尭から、もともと二人はそういう話をたくさん話していたらしいということ。
だから結華は私ではなく、尭に電話したんだろうということ。
そして、私と尭が付き合う前は、週に2・3回のペースで電話をしていたという事実。
初めは心配よりも何よりも、結華に嫉妬したんだ。
私は結華からそんなこと一言も聞いたことは無かったから。
でも、そんな雰囲気が私から出ていたんだろう。
尭はもう一言付け加えた。
『去年の秋からはどうしようもないぐらい凹んだ時にしか電話してきたことはない』ということを。
『秋』というキーワードに、私は思い当たること節があった。
私が結華に尭が好きだと告白したのが、確か去年の秋だったはずだ。
その符号に気づき、私が結華に嫉妬したことが恥ずかしくてしょうがなかった。
もともと尭とつながりがあったのは結華。
私は結華に紹介されなければ、きっと尭と出会うことは無かったんだろう。
それなのに…、自分がそのことを知らなかったと言うだけで、私は結華に裏切られたような気分になったのだ。
そんな自分が恥ずかしかった。
どうしようもないぐらい。
尭はその後も結華が凹んだときは電話で話しているらしかった。
でも、私はもうそのことについて嫉妬することはなかった。
私は…考えたことはなかったんだ。
結華にとって、尭がどんな存在であったのかなんて…。
自分の気持ちばかり優先させて、結華が本心でどう思っていたかなんて…。
結華は優しい。
人を傷つけるぐらいなら自分が傷ついたほうがいいと考えるぐらいに…。
そんな結華の性格を私は知っていたのに……、気づかない振りをした。
そう、思い出したのだ。
私が結華に気持ちを告げた時、結華が戸惑っていたことに…。
多分…あれはきっと…。
私は尭と別れてはいない。
でも、もしも…、もしも、結華が…。
自分の気持ちを私に相談するようなことがあれば…。
私は受け入れたいと思う。
尭は大事。
でも、結華はもっと大事。
結華は私を救ってくれた張本人だから。
私の恩人だから。
尭は好きだけど…、結華なら…と素直に思える。
だから待ってる。
結華を。
そして本当は…きっと私がつらいからなんだ。
私は…気づいてしまったから。
尭が…結華を気にしていることに…。
自分でも気づいてはいないのかも知れない。
でも、彼の瞳は結華を追ってる…。
尭を見ている私は…気づいてしまった。
だから…。
早く素直になって、結華。
二人して、あなたを待ってるから。
ずっと…待ってるから。
次話は明日9時に更新します~♪