最終話
『本当は、佐奈たちだけをアメリカへ行かせて、僕はキミのもとに残ろうと思っていた。
だけど……。
病気の妹と母さんだけを、見知らぬアメリカへ行かせるわけにはいかなかった。』
『キミと離れるのは本当に辛かった。
それでも僕は、佐奈たちと一緒にアメリカへ行くことを選んだんだ。』
『本当にごめんな……。
キミに何の相談もせず、勝手に決めてしまって……。
でも、時間がなかったんだ。』
小町は涙をぽろぽろと零しながら、何度も首を横に振った。
まるで、
『謝らないで……』
と伝えるかのように。
『でも……。
僕は必ずキミのもとへ戻ってくる。』
『だから、それまで待っていてほしい。
勝手なお願いだし、迷惑なことを言っているのも分かっている。
それでも……。』
小町は涙を流しながら、今度は何度も何度も首を縦に振った。
「うん……」
誰に聞かせるわけでもなく、小さく呟く。
俊哉からの手紙を最後まで読み終えた小町は、その手紙を胸に抱き締めた。
大切な宝物を抱えるように。
そして、溢れ出しそうになる涙を堪えるため、ゆっくりと空を見上げた。
『ま、眩しい……』
冬の澄んだ空から降り注ぐ光に、小町は思わず手をかざした。
すると、その指の隙間を縫うように一本の飛行機雲が伸びていく。
小町はその飛行機雲を見つめながら、小さく微笑んだ。
「ずっと待っているから……」
その言葉は、まるで遠いアメリカへ向かう俊哉へ届ける約束のようだった。
飛行機雲は、そんな小町の想いに応えるかのように、どこまでも青空の彼方へと続いていた。
『はぁ……』
小町は大きく息を吐いた。
胸の奥に溜まっていた悲しみも、一緒に吐き出すように。
そして――。
「よし!」
小さく気合いを入れる。
俊哉は必ず帰ってくる。
そう信じよう。
小町はいつもの元気を少しずつ取り戻しながら、俊哉からの手紙を制服のポケットの奥へ
大切にしまった。
そして、未来へ向かって歩き出すように、学校の屋上を後にした。




