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パパラッチ

 レイラが一人で来ていた為、透は車でレイラを送る事にした。レイラについて書かれた記事が、どのくらい出回っているのか分からなかったからだ。透は今回、アントンたちがいないのでエンジンをかけるついでに、フェラーリで送る事にした。

 透はリッツカールトンの車寄せに車を止め、助手席側に回ってドアを開け、レイラに手を貸す。車を預け、部屋まで送ろうとホテルの入り口に向かった途端、わらわらと人がホテルの入り口に向かってくるのが見えた。フラッシュが光ったのを見て、二人は慌ててエレベーターに飛び乗った。どうやら、ラウンジでの出来事を誰かが漏らしたようで、レイラがこのホテルに泊まっているとわかってしまったようだった。

 芸能ニュースに疎い透は、夜中になれば記者たちは帰ってくれるのだろうかと思いつつ、フロントに聞いてみたが、記者たちは中には入って来ず、外で待機している様子だった。帰るに帰れない透を見て、レイラは密かに喜んだ。これで、一晩中透といる口実が出来る。


 結局、朝まで待っても記者は張り込んでいるままだった。透は諦めて、ホテルの従業員に頼んで、車をホテルから少し離れた駐車場に止めておいてもらい、しばらく時間を置いてから、自分は従業員用の出入り口から出て電車で帰宅した。


 この様子だと学校の方も記者が待ち伏せているかも知れないと思い、朝早めに匠を乗せて、バイクで学校に向かった。案の定、正門から少し離れたところに、記者らしき人が数人屯していた。記者たちは車と徒歩の人に注目していた為、バイクはすんなり通る事ができた。

 One smile for allのMVの事を知らない生徒たちは、何故正門近くに誰かを待っているような人たちがいるのか訝った。MVを見てコメントを読んだ生徒と、高校生たちは、映っているメンバーと理事長を撮ろうとしている記者たちだと気がついていた。

 

 レイラは記者たちを振り切って、空港へと向かった。だが、空港にも記者たちが待ち構えていた。ただし、この間のようにレイラの腕を引く記者はいない。どうやら、レイラがサファノバの女王だと、裏をとったようだった。レイラは記者たちに、婚約を公表してしまいたい衝動に駆られたが、公表してしまえば、暫く記者たちは透を追いかけ回すだろう。公表しなければ、他の大きなゴシップが出れば、たちまち忘れ去られるだろうと透から言われていた為、レイラは公表してしまいたい気持ちを我慢した。主に追い回されるのは、日本にいる透たちであるし、透がプライバシーを公にする事を嫌うのはわかりきっていた。


 レイラは突きつけられる質問を全て無視して、通り過ぎた。そして不思議に思った。なぜ、悪い事をしたわけでもないのに追い回されて、不愉快な思いをしなければならないのだろうと。知りたいと思う人々の好奇心を満たす為だけに、追い回されるのは、おかしい事なのではないかと。

 記者たちは流石に独裁国家であるサファノバまでレイラを追いかけてくる事はなかった。入国して、記事を上げたら最後、拘束される可能性もあると考えたのかも知れない。


 匠は、誰が漏らしたのかアルビノである事の珍しさも手伝ってか、特に注目度が高く、家まで突き止められてしまった。匠を快く思っていない合唱部の小竹から、嫌味も言われた。

「匠は理事長の甥だから、高校の軽音部と掛け持ちのお墨付きをもらえたんでしょ。いいよね、親戚が学校関係者だと」

 匠は、透が親戚である事を、ずっと伏せていてくれた意味がやっとわかった。自分を嫌っている教師が明らかに態度を変えてきたり、ごく少数の教師が逆に厳しく接してきたり、大したことではないのに、妙に褒める教師が出てきたりと、自分が努力や何かを怠ったわけではないのに、周りが変わり始めた。さらに、理事長の甥という事で、透とレイラについて聞こうとする記者たちが出てきた。


 結衣は取材されることに、初めのうちは喜びを感じていたが、それが自分の実力と言うよりも、キーロヴィチの作品だから注目を浴びている事に気づき焦りを感じ始めた。今注目されているうちに、これ以上のものを早く作って、次に繋げなければ、と思った。

 他のメンバーは初めのうちは、いろいろな友人たちから、見たよ、と声をかかられることで、友情が復活したり、親戚が喜んでくれたりと良いこととして受け止めていたが、次第に記者たちが周りをウロウロし始めた事にストレスを感じ始めた。


 透は大人であり、学校改革者として名が知られた若い理事長、という事もあって、派手な車を乗り回して、美貌の女王と密会などと報道され、うんざりしていた。その上、学校に記者たちがやって来ては、生徒たちにマイクを向け始めていた為、学園に子供を通わせる親たちからも、心配する声が上がり始めた。


 透は和人に、急遽、代理で理事長を頼み、2〜3ヶ月ほど雲隠れする事にした。飽きっぽい世間は、2〜3ヶ月経てば別のゴシップを追いかけ始めるだろうと目論んだのだ。その為には、暫く日本から離れた方が良いと判断した。記者たちには、これ以上生徒と自分を追いかけ回さないで欲しい事と、しばらく研修で海外に行くと各社にFAXで伝えて、海外へ飛んだ。

 2週間後に、金田が撮影し、透がインタビューに応じた記事が雑誌に掲載された。記事には「欧州のサファノバ国女王、日本のS学園の理事長と婚約! 日本人が海外の王家に婿入り!」と大々的に書かれていた。

 発売前に雑誌を送られていたOne smile for allのメンバーは、レイラが女王だった事に驚いたが、思い返して納得した。常にボディーガードが付き従い、お城に住んでいて、素人であるOne smile for allのMVの撮影依頼をキーロヴィチ監督に出来たのだから。


 S学園と書かれていても、探り当てて来るところは多く、旅行会社や、出版社など色々な業界が、静実学園にアポを取りにきたが、透が不在の為、色々なものを求めて集まって来た人々の思惑は、宙に浮いたままの状態となった。

 透は家族にも、レイラにも行き先を伝え無かった。3ヶ月くらいはレイラも来日している暇もないだろうし、3ヶ月なら自分の方で会いに行かれなくても不自然ではないと、考えたのだ。和人に、代理を務めてもらう事は申し訳ないと思いつつも、サポート出来る今が良いのではないかと思った。

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