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第69話 祭りの後の祭り02


「結局何だったの?」


 パック……スパイクナルドバーガーでシェイクを飲みながら僕と女子は対面に座った。


 喫茶と言える。


 事情を聞くためだけど、主に警戒と護衛も兼ねていた。


「バイト」


「バイト……」


 この場合は援交だろう。


 うーん。


「ビッチなの?」


「処女だし!」


 声を荒らげてから口を押さえる。


 ま、とやかく言うまい。


「じゃあなんで援交を?」


「はめられた」


「所謂十八禁的な意味で?」


「違うし」


 シェイクをズズー。


 確かに下ネタは下品か。


「陰謀にはめられたの」


「陰謀」


 CIAか。


 FSBか。


「先輩にバイトしないかって言われて」


「はあ」


「付いていったら知らないおっさんが待ってて」


「はあ」


「デートっぽいことしろって言われて」


「はあ」


「聞いてる?」


「はあ」


 聞くのも怠いけどね。


「で、なんで断らなかったの?」


「もう金受け取ったからって先輩に言われて」


「ピンハネして援交の仲立ち?」


「そ」


 シェイクをズズー。


「マジ最悪。ありえないし。どう思う? なんでこんなことでコロンくさい親父の相手しなけりゃならないってーの」


「君の軽挙妄動もあるけどね」


「あたしのせいって言うの?」


「そこまでは言わないけど」


 ズズー。


 シェイクを飲む。


 うーん。


 文明の遺産よ。


 パックの若者向け販売戦略は、とても一口では語れない。


「おっさんと先輩が悪いに決まってるけど良い勉強にはなったでしょ?」


「美味しい話には裏が在るって?」


「然り」


 世の中の生きる術って奴か。


「その……」


「へぇへ」


「助けてくれてありがとし……。ぶっちゃけ困っていたのは事実だし……助かった。感謝してるかも……」


「正義の味方ですから」


「名前は?」


「司馬」


「司馬……」


 同じ学校ではある。


「お手前は?」


「四谷。四谷大河」


「相承りました」


 ズズー。


「司馬ってどこ中?」


「同じですが?」


「黄時……?」


「だぁねぇ」


「マジ? ありえんし」


 然程かな?


 制服見たらわかるでしょ?


「番号交換しよ?」


「いいけど……。僕と話しても面白くないよ?」


「こっちは面白いし」


「さいでっか」


 スマホを取り出す。


 番号交換。


 ラインで繋がる。


 あまり友人もいないので、案外貴重な縁かも知れない。


「マジありがとね」


「気にしないで」


 単なる通りがかりの座興だ。


 殊に褒められたわけでもないし、感謝されてもね。


 徳が有るだけ……ま……儒教には適うだろうけど。


「友達になろ?」


「機会があればね」


「えーと……」


「何か?」


「その退廃的な喋りはなんとかなんない?」


「口から生まれてきましたので」


 ホケッと下流にどんぶらこっこ。


 この程度の会話で僕を詰まらせることは出来ないよ?


 出来たからって褒められる類でも無いけど。


「いいけどさぁ」


 どこか不満げ。


 ――何故よ?


「じゃあシクヨロ」


「学院で会うかもね」


「マジ楽しみ」


「光栄です」


「学食で好きなメニューは?」


「おろしポン酢の唐揚げ定食」


「わかるー。あたしもそうだし」


「コスパがいいよね」


「そうそ。意外と安いし」


「あとはささみカツ」


「あ、玉子あんかけが掛けてある奴?」


「そうそ」


「あれもだよねー」


 そんなこんなで四谷は容易く僕のパーソナルスペースに侵入を果たしたのだった。


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