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第70話 祭りの後の祭り03


「…………」


 眼を覚ます。


 そりゃ眠っていれば何時かはね。


 そのまま目を覚まさなくなる可能性も無いでは無いけど、明日は死んでもやってくる。


 南無阿弥陀仏。


「あー」


 久方ぶりの記憶。


 この場合は夢で、追憶体験。


 四谷と出会った頃のソレ。


「懐かし……」


 今は高等部の一年生。


 クラスメイトになったのは何の因果か。


 たしかにちょっとコメディの定石ではあろうけども。


 ま、あっちも懐いている分には無害だから、沈思黙考しても不利な要素は見つけられない。


「…………」


 隣を見ると同衾しているラピス。


 今日は夢見心地が良いようだ。


 だいたい発作が起こるときは明け方。


 夢がその頃だから「宜なるかな」との具合。


「さて」


 朝の準備。洗濯。朝食。他諸々。


 ルリとラピスとを起こして朝食とする。


 食べ終えた後は各々だ。


 僕はコーヒーを飲みながら新聞を読む。


 ルリは部屋に引き籠り。


 ラピスは何処かへ行っております。


 世界制覇王国。


 その宰相。


 超人で在り、その全ての能力を僕のためにだけ使う――なんともツッコミ甲斐のある少女。


「宰相閣下も大変だ」


 新聞……といかメディア全体が沸騰している。


 全世界。


 ぶっちゃけ地球上で。


 夏休みは継続中だけど、先日ハワイに侵犯して青春を送っていた。


 その際、アメリカ軍がラピスの逆鱗に触れ、「ゴジ○が攻めてきてもまだ穏当」と評される蹂躙劇の再現。


 パールハーバーは戦力的に大打撃。


 兵器の類は塵へと還り、兵士の類は本物になった。


 色々と危ぶまれる可哀想な兵士さん。


 股間の物がバニッシュされればどうにもこうにも……。


 この際別の趣味に目覚めるのなら、あらゆる意味でネイビーは地獄だ。


 偏に世界制覇王国への野心故の反動なんだけども……敵に容赦しないのはラピスの根幹。


 喧嘩を売る相手を間違えた……が最も事実に近いだろう。


 で、


「国際法廷への出頭……ね」


 今更ではあっても。


 ラピスが素直に法廷に立つなら苦労はないけど。


 今は家に居ないけど、どうせ臣国に関わりのあるところだろう。


 地球最後の日も近いかも知れない。


「南無妙法蓮華経」


 ブラックのコーヒーで目覚まし。


 ニュースもあらかた見やって、「やることなし」となれば、


「宿題でも消化しますか」


 学生の本分に立ち返るのも一興だろう。


 夏休みくらい勉学を忘れたいところだけど、宿題ってそういう意味で無粋だよねぇ。


 いや、学生の本分が勉強なら、やらなきゃいけない義務ではあれども。


 この場合はラピスはどんな扱いなのだろう?


「南無三……か」


 勉強しますか。


 ――そう思って席を立つより、


「――――――――」


 スマホが唄う方が早かった。


「四谷か」


 ラインだ。


「今日暇?」


「予定はないね」


「夏祭りに行かない?」


「皆で?」


「ふ・た・り・で!」


 怒りマークまで付随で。


 そんなスタンプを使われても、文面の感情表現には限界があると思うんだけどにゃー。


 結局のところ、何かしらのファクターはあるらしく、こっちとしても宿題がてら、コメントに付き合わねばならないらしい。


「あたしら付き合ってるっしょ?」


「仮面恋人だね」


「だから恋人らしい事しない?」


「四谷なら恋人選べる立場でしょ?」


「そうでもないかも」


「惚れない奴なんているの?」


「いるかも」


 それは奇特なお人で。


 感性の程が残念無念。


 四谷みたいなイケイケの美少女を見て、恋心を胸に秘めない人間がいるとは。


 告白されまくりの四谷にしてみれば、確かに不自然だ。


「だから司馬さん呼んじゃ駄目」


「久遠は?」


「あたしから言っとく」


「へぇへ」


「それと」


「へぇへ」


「午後は図書館集合ね」


「何故に?」


 ちょっと警戒。


 何を企んでいる?


「宿題。教えて」


 ああ、そ。


 ま、そんなところだよね。


 ラピスと暮らし始めてから、何かとヒロインが想像を超えてくるので警戒したけど、たしかに四谷は僕の一般人感性の象徴か。


「図書館のコーヒーは美味しいかな?」


「奢ってあげるから」


「毎度あり」


 ニッコリと笑顔のスタンプも付ける。


「ほんと良い性格してる」


「恐悦至極」


「口から生まれてきたもんね」


「さいですな」


 その自己紹介憶えていたのね。


 光栄のようなそうでないような。


 でも、退廃的で口が回り、事情に困ったら道化を演じるのは僕の悪癖だ。


 直そうにも、ルリの前で泣くわけにはいかないから、これはもう処世術としか言いようが無い。


「ま、一人で宿題を消化するのも味気ない、か」


 その意味で、一緒に宿題を片付けるのは、精神的にもフォローが為される。


 そして、互いに補完し合える。


「この場合、勉学にはラピスを連れた方が良いんだけど……」


 ビッチだなんだと罵って、四谷が激昂する未来予想図。


 今回ばかりは素直に二人で宿題を消化しましょ。


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