第62話 パールハーバーを蹴っ飛ばせ01
「ザ・ハワイ」
というわけで一足飛びにハワイです。
便利ね。
ワールドジャンプ。
ぶっちゃけ国境侵犯な気もするけど。
言ってしまえば、ワールドジャンプの前では国境も定義できず。
その気になればどこにでも。
ちなみに宰相こと司馬ラピスは米国にとってまだ仮想敵で……これはもう論理の問題ではなくメンツの問題だ。
敵うかどうかは知らないけど。
むしろ一夜で軍事バランスを崩してしまう方が、僕としては畏怖に値する。
パールハーバーの思案も恐いところ。
「まぁまぁ」
とは水着姿の久遠だった。
ある種の良心。
なんか最近周りが乙女色なので男友達の存在は素直に有り難い。
良く居てくれた。
久遠の男の子。
「考えたら負けだぞ」
そう言える久遠が凄いけどね。
事実ではあれど。
ハワイに来たは良い物の、ホテルのチェックインだとか色々ございました。
概ね空いているので問題は無かったけど。
何はともあれ快晴。
ハワイは今日も平和です。
ついでにビーチ。
海である。
僕は水着とジャケット。
そして、
「お待たせしました」
女子らがやってきた。
基本、男子より女子の方が、準備に時間もかかるのだ。
「わお」
とは僕の本音。
ラピスと四谷とアートが水着姿で現われた。
ラピスは黄金比の体つきをビキニで引き締めていた。
四谷はタンキニが愛らしい。
アートはギリギリ水着よりの競泳水着。
ワンピースという奴だろうか?
なんかスポーツドリンクの缶ジュースのデザインを想起させる。
モデル体型で起伏はラピスと四谷の中間くらい。
「どうですか兄さん?」
「鼻血が出そう」
「ふふ」
蠱惑的にラピスが笑う。
ルリを想起させて(も何もルリと同一なのだけど)また愛らしい。
そっかぁ。
ルリも大きくなったらこんなに大きく……。
当方ルリズムですので。
「おう。四谷も中々」
久遠がケラケラと笑いました。
「どうせ胸ないし!」
別に開き直るほど残念では無いのだけど。
比較する対象を間違っているだけだ。
実際に四谷は可愛いし、そこそこな体つきはしている。
重ねて比較対象を間違っているだけで……。
「可愛いと思うけどなぁ」
ポツリと呟く。
「マジ?」
意外と食いついた。
――なにか?
――僕は何か言いましたか?
「地が良いしね」
「褒めてんの?」
「存分に」
「ならいいし」
「よしよし」
頭を撫でると赤面して黙り込む。
ちょっと馴れ馴れしかったかも知れない。
顔を赤らめながらこっちを睨む四谷さん。
「陛下。陛下」
アートまでやってきた。
「目に毒だなぁ」
「ごめんなそばせ」
あそばせ、ね。
「ホテルの手配ありがとね?」
「陛下のためなら」
シルバーマン万歳。
「結局ラピス」
「何でしょう?」
「シルバーマンはどうするの?」
「うーん。別に」
まぁそう言うよね。
気持ちは分かる。
ぶっちゃけるとシルバーマン財閥すら属民だ。
その辺りを斟酌しないのは王国の宰相と言える。
世界征服がどういう形になるにしろ、敵対もありうるだろう。
その場合、僕はどうすべきか。
ルリさえ無事ならそれで良いんだけど、もうちょっとこう……なにか出来る事があるのでは?
「にゃ」
考えると耳から煙が出た。
お~ば~ふろ~。
考えても仕方ないのも事実か。
それにラピスの戦力ならあらゆる意味で不条理だしね。
其処を考えれば杞憂に終わるもまた必然。
「じゃ、泳ぎますか」
「その前に」
グイと久遠の首を掴む。
「準備運動」
「おっさんくさいぞ」
「貫禄があるって事ね」
自分で言ってて白々しいけど。
屈伸運動は必要だ。
足がつったら沈むだけ。
両親が死んだ後で、親友にまで死なれたらコッチが困る。
人生万事天中殺。
だからきっと、大切な人は大切なんだと思える。
口うるさいのは否定しないけど。
「おいっちに。さんし」
「ななやにくじゅう」
青春だなぁ。
ハワイで言うことでも無いだろうけども。




