第100話 文化祭デート03
「言いたいことは多々あれど」
とは四谷の言葉。
「司馬は司馬さんとどんな関係?」
「兄妹」
他に何のあるべきや。
戸籍上は家族だ。
ラピスの場合はもうちょっと複雑だけど、何にせよルリなんだから愛妹には相違ない。
――けどソレが何か?
「好きじゃないの?」
「好きだよ?」
即答。率直。
むしろあんな超絶可愛い妹が居て、好きにならない方が嘘だ。
「お兄ちゃん」も「兄さん」も、聞くだけで心が弾む。
「ホントに?」
「妹としては可愛いところもあるし」
ソレもまた事実。
ルリにしろラピスにしろ、ちょっと天然だ。
純情と言い替えても良い。
こっちを大好きで、だから嫌われるのが怖くて、抱きしめたくてたまらず、なのに一歩引く。
同衾はしてるけどね!
「つまり妹とはシスターズマテリアルの集合体として――」
「あんさぁ……」
睨まれました。
「ライクじゃなくて」
まぁそうだよね。
「ラブ……か」
「そこで躊躇うんだ……」
悲しみの波動が透けて見える。
此奴も僕を見限れば、もっと安穏と出来るだろうに。
それこそ久遠とでも付き合えば。
「どうなの?」
「実はよくわかんなかったりして」
「抱きたい……って思わないの?」
「そこも含めて」
「なんで?」
そーゆーよね。
ラピス本人が好きなのか。
あるいはルリズムの延長線上なのか。
結論づけられない自分が居る。
ルリは好きだ。
本当に。
家族として護るべき。
何度も言うように『僕』を賭けて一生護るべき存在。
ただラピスとなると。
「うーん」
悩ましい。
「それほどの存在……か」
四谷は四谷で納得したようだ。
「シスコン」
「名誉勲章」
「なんかあたしが一番平凡すぎて雑魚っぽい」
「そこまで卑屈にならんでも」
「だって司馬さんは宰相で、アートは財閥令嬢だよ? どうしろっての。こっちは一介の女子高生でしかないってーの」
「だから僕の理性の基準点なんだけどね」
「どういう意味?」
「ラピスが来てからこっち……お祭り騒ぎだから」
「……………………」
「なんというか……平凡な日常の象徴だよね。四谷は」
「喜んで良いの?」
「四谷の解釈については関知しない」
ヒラッと手を振る。
「あくまで僕の思うとこ」
「じゃあ喜んでおく」
よろし。
「これからどうするの?」
「生きる」
「そんな詭弁はいいから」
「アートとデート」
「アートも不思議だよね」
「何が?」
「なんていうか。距離の取り方が」
「ま、政治的理由だろうけど」
「美少女だし?」
「だね」
「銀髪とかマジ有り得ないし」
「基本的に生まれただけで勝ち組ではある」
「お金貰ってるの?」
「一銭も頂いてござんせん」
「司馬さんが稼ぐから?」
「だーねー」
おかげで不正取引容疑で引っ張られるけど。
そこら辺は毎度のこと。
ていうか法律の方もなんだかな。
僕の意見はあらゆる国法の上位に位置するらしいけども。
「司馬の日常を破壊してるならあたしから言うよ?」
「消される覚悟で?」
「……ぐ」
となります。
「あたしは無力?」
「いや、相対性の問題だね」
単純に乙女としての力なら軽んじられない側面が有る。
普通に可愛いし、中々純真。
処女だしね。
ギャルっぽいけど、そんな気合いの入ったお洒落も高得点。
絶対に口にはしてやらないんだけど。
そもそものキャラとしては強め。
ラピスやアートが規格外に強烈すぎるだけだ。
だからあくまで相対性の問題。
「司馬はそこに巻き込まれ系?」
「だけど責任を押し付ける気も無いけど」
「優しさ?」
「愛だよ」
ホケッと言う。
学祭の出し物を見て回りながらそんな会話。
きっと何時もの様に出来ないのだろう。
「司馬の馬鹿」
「よく御存知で」
道化の仮面を被る。
「ホント……ありえんし」
ごめんなさい。




