第99話 文化祭デート02
「陛下。是非とも」
との、しつこいプロ市民さんを相手取っているとスマホが唄った……ゴッドファーザー愛のテーマ。
「今どこ居るし?」
四谷だ。
「大学部の電電棟」
「あい」
そんな感じで四谷と合流。
「そちらは?」
プロ市民さんを胡乱げに見つめる四谷に、
「正義の使徒」
おどけたように言う。
「ふざけてるし?」
「おちょくってはいるね」
誰を、かは言ってやらないけど。
「デート」
「へぇへ」
そんなわけでプロ市民さんにはご退場願いました。
ちょっとメギドの火を披露して。
蜘蛛の子を散らす……とはまさにこのこと。
メギドフレイムとワールドジャンプ……この二つで最強たらしめる存在だ。
露骨特異点が有る限り、無尽蔵のエネルギー供給を約束されたも同然で、その気になれば宇宙を滅ぼせる。
僕に死なれたら困るから、あくまで宇宙を破滅させないだけであって、在る意味で僕がラピスに対する抑止力なわけだ。
「マジ司馬さん魔王」
「否定はしないよ」
ハリウッドSFスペクタクル物な存在ですので。
正直なところ、まだしもファンタジーの方が穏当だ。
SF作品って、時に宇宙破滅レベルのスケールで描かれるので、地球の表面でのいざこざ程度で大騒ぎしているファンタジーは意外と世界が狭い。
「司馬はソレでいいの?」
「世界覇王も存外面白いよ」
「どんな精神してんの?」
「思春期真っ盛りの繊細な機微」
「それを口に出す時点で繊細じゃないし」
そーかなー?
「ま、司馬らしいけど」
恐悦至極。
「ほい」
と四谷は手を出してきた。
しょうがないのでチョキを出す。
「ジャンケンじゃないし」
「ウィットにとんだジョークのつもりだったんですけど」
「手ぇ繋いで」
「承りました」
握る。
「四谷はソレで良いの?」
「何が?」
「司馬軽木なんて奴に構っても得しないと思うんだけど」
「損得で付き合ってるわけじゃ無いし」
――少なくとも形而下では。
そう四谷は呟く。
「立場が逆なら刺すけどなぁ」
「ヤンデレ?」
「というより憎悪の解消と言いますか」
「刺して良いの?」
「努力するのは良いけど……」
「けど?」
「ラピスを敵に回してどうなるかは考えといてね」
「そこだよね」
嘆息。
司馬セーフティがあるので簡単には死ねないけど、攻撃されたという時点で、ラピスにとって加害者は殲滅対象だ。
それで一回真珠湾が火の海に沈んだのだけど。
「その上でまだ仲良くしたいなら止めはしないけどさ」
――ぶっちゃけ僕にそれほどの価値があるのか?
自問してしまう。
僕にはあまり本物がない。
ルリを愛するのは本当のことだけど、経済はラピスに任せっきりで、勉学も平凡。
世界覇王の地位もお膳立てだ。
別にルリさえ傍に居てくれれば、此方としても辻褄は常に合致する。
「司馬って何時もは平然とこき下ろすくせに時々馬鹿になるよね」
「基本的に馬鹿一色だと思うけど」
あまり図にも乗れない。
道化性は悪癖でも、そんなすぐには治らない。
けれど両親が死んでからこっち、仮面を被るしかなかった点で、道化になるも必然だったろう。
「そう言うところがね……」
「ごめんさい」
「じゃ、付き合って」
「デートにね」
「そ」
ギュッと僕の手を握って四谷ははにかんだ。
乙女心の業の深さよ。
「何処に行く?」
「とりあえずお茶!」
そんなわけでこんなわけ。
中等部の喫茶店に入る。
顔を出すだけでも視線を集めた。
致し方ない。
覇王陛下のおなりだ。
印籠は持っていないけども。
「毒でも混じるかな?」
そんなことを考える。
「何処から調達するのよ」
「そだね」
カエンタケとかデストロイングエンジェルとか。
「毒殺はされるかもだけど」
「ま、ラピスがそこを対策してないはずもないけど」
「どこまで規格外よ」
「だいたい不条理の三文字で完結するお人ですから」
コーヒーとカフェオレを頼んで茶をしばく。
「美味しいね」
「たしかに」
意外と力入っていた。
「豆から淹れてるのかな?」
「どうでしょ」
四谷はカフェオレを楽しんでいた。
「ツイッターに上げていい?」
「物好きだね君も」
「司馬ほどじゃないけど」
反論の余地が一分も無い。
無念なり。




