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かわいこちゃんとショッピング(裏

 薬屋に武器屋、雑貨屋に魔具商軽くまわってよくある物を一揃いづつ。気疲れをしているようだったので宿で休ませてから外に出た。

 空色の石畳みが夕陽に染まり紫を帯びていた。

 昼に訪れた食堂は仕事終わりの労働者風の客で賑やかなことになっている。

「やっほー」

 店主がひょいとこっちを見てカウンターの一席を示す。

「あけといてくれたの?」

「来るんじゃないかと思ってな。ツレは?」

「気疲れしたみたいだから休ませてる。軽い持ち帰りメニュー頼んでいい?」

 頷いて店主が厨房に引っ込むとまわりから声がかかる。

「アレ、迷い客だろ」

「なにか祝福は受けてるの?」

「互助会に申請しにきたのか?」

 気になった連中が多かったらしく客の半分は今日巡った店舗の関係者だ。

 妙に気にしてしまうのは『赤ん坊が手をかけてもらうために可愛く感じられる』要素とか『傷ついているものに対する保護欲』とかが大きく作用している。

 そういった存在を傷つけて喜びにする者も当然居るが保護して癒していくことを喜ぶ者も同じように存在している。大概はどっちつかずに関わらないのを良しとするが、この街では後者が多い。

 心に傷を負った迷い客を癒すのが趣味なんですと言い出すヤツもいるらしいし。

 服屋の店員達は『可愛いんだから自信を育ててあげねば』と張り切ってたし。まぁ彼らは自分達のデザインを着れる存在は総じて尊く可愛い。と自負してるだけだけど。

「ひきとってもらってる場所があんまり人のいない場所だから、世間一般も知ってもらうために観光に連れてきましたー」

 出てきた軽食と軽いお酒に銀貨を払う。古い古銭でも受け入れてもらえるのは昼でわかっている。

「傷つき過ぎて暴走する子が時々来るだろう? あの子は大丈夫なのかな?」

「傷つき過ぎて傷つきませんっていう子を叩き潰すのが好きだってヤツもいるだろ? 今の保護者は大丈夫なのか?」

「んー、大丈夫だと思うよ。甘やかす気も潰す気もないみたいだから」

 たぶん、必要な対応が読めてないのもあるから目的与えて放置なんだろうけど。

「でもなぁ」

 不安そうな近隣住人にほっこりする。だからこの街を選んだんだけどさ。

「シーんとこだよ」

 魔王という役職を知られてる訳ではなく、盗掘屋(トレジャーハンター)としてのシーは顔が広い。

 ただこの言葉に対する反応は「アイツんとこで大丈夫なのかよ!」であった。

 基本的に迷い客の初動補佐はよくしてるけど、適当に互助会や他の保護者に投げるよね。普段は。ウチの兄貴も任されてもいいと提案してたし。あそこ(うち)にいると兄貴の信者になりかねないけど。

「みんな、優しいなぁ」

 ぷらりと足を揺らして呟けば途端に視線が散る。

「保護したくなる加護かもよ?」

 いわゆる魅惑、魅了系。あとで騙されたとか言いだされる奴。たとえその傾向がハッシーにあったとしても無自覚なんだろうけど。

「だとしても、わざと騙すためにはあの嬢ちゃん使えないだろう。甘え下手だし、ほら、はぐれた野生の猫を治療のために捕まえようとするときの慎重さを要するスリルがあるぞ!」

 店主、その例え!

 そして「そっかー、それだー」と頷く常連客ども。(たぶん)

「あ、あの子にコレ。たくさん歩いたならもしかしたら足、留め紐で擦っているかもしれないから」

 そっと洋服屋の子が小さな包みを握らせてくる。

「直接渡したかったんだけど、怯えられそうだったから」

 それだけ言ってすっと隠れてしまう。

「ありがとう」

 にぎやかで和やかでこの街を選んでよかったと思う。ハッシーにとってはどうだったんだろう?

 少しずつでいい自分を信じていけるようになればいいと思う。

 自分を信じてあげれないとこの世界は、ううん。きっとどんな世界であっても生き難く残酷に変わるから。

「ハッシーはかわいいからなー。飾るのたのしー」

 なにかを守りたいからって頑張れるならそれはとても愛おしい。


「そろそろ宿に戻るんだろう? ほら」


 店主が包みをよこしてくる。

 足元に気をつけなと親切な声を背に聞きながら私は宿に戻る。


 明日はどこを巡ろうか?


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