19.エリザベスカラー
19.エリザベスカラー
ちょっとショック。落ち込むなあ…。ん?おちんちんを取られたことじゃないんだ。こいつが嫌なんだ。みんなが笑うんだよ。こんなボクの姿を見て…。
去勢手術が終わってボクはケースに入れられてウチに帰って来たんだ。その時からどうも違和感があったんだよ。顔の周りに何かあるんだ。そいつが顔を動かすたびにケースにぶつかって鬱陶しい。まるで、エリマキトカゲみたい。
ウチに帰って来てケースから出されたボクを見て、おじいちゃんが早速笑ったよ。
「パル、そんなの付けられちゃったのか」
「仕方ないのよ。傷口をなめちゃったら傷が悪化するんだから」
桂子さんが説明している。
「可哀そうだよ」
菫ちゃんは優しいなあ。ボクのことがちゃんと解ってる。
「でも、笑える」
菫ちゃんまで!ひどいよ。
それにしても、お腹へったなあ。手術をしたから、暫くご飯を食べられないんだ。そうこうしているうちに大輔さんが帰って来た。
「なんだ、それ?」
「パルちゃん可愛いでしょう?エリザベスカラー付けられちゃったのよ」
「エリザベス?拾い食い出来ないようにか?」
「ハハハ、それもそうね」
桂子さんは大輔さんにも経緯を説明した。
「ふーん…。エリザベスねぇ…」
その件についてはもういいや。諦めたよ。だけど、ホント、鬱陶しいよ。カラーがあっちこっちぶつかってまともに歩けない。頭が痒くても搔けないし、毛づくろいも出来ない。
“カツカツカツ…”
「ぷっ!」
頭を掻こうとすると、カラーを連打するだけ。その姿を見て桂子さんが吹き出すんだ。解かっちゃいるけれど、つい、足が出ちゃうんだよね。我ながら間抜けだと思うよ。いつまでこんなの付けてなくちゃダメなんだろう…。