#7 第百十八季のとある秋の日
幻想郷にも秋が訪れ、一部の木々はその色を深い緑から黄や赤に変え、里でも薩摩芋や柿、秋刀魚など、季節の味覚が出回る頃、幻想郷の上空を箒に跨がって飛行する人間の魔法使い・霧雨魔理沙は眼下の景色が色づいたものになるのを確認しながら、いつものように博麗神社を目指していた
やがて境内に到着し、辺りを見渡すと、住居部分の前で何やら広くて浅い桶の中に入りながらせわしなく両足を動かしている博麗霊夢の姿が目に入った
そちらへ歩きながら、「おーい」と声をかける
霊夢が脚の動きを止め、こちらを向いたのを確認した魔理沙は「何をしてるんだ?」と続けた
「『ワイン』っていうお酒を造ってるのよ」
「へぇ、霊夢が・・・珍しいな
酒ならまだ蔵に有っただろ?」
「あれは御神酒用のと一緒に作った透明なのでしょ?」
「でもワインならあの館に行けばいくらでも有るんじゃないか?」
「・・・と思って一度飲ませて貰ったのだけれど、妙な味がして飲めたもんじゃなかったわ
多分、人間の血液でも混ぜたんでしょう」
「それで、作り方だけ教えてもらって後は自分で・・・という訳か」
「尤も、葡萄はその辺の妖怪から少し分けてもらっただけで、大半は紫が外から調達してきたものだけど」
発酵用の樽もだけどね、と霊夢は続けた
「なら、ワインができたら1瓶私にもくれないか?」
「・・・この前ちゃぶ台の上に置いてあったお酒を盗み飲みしたのは誰かしら」と霊夢が黒い表情で言ったので、冗談冗談、と返す
「それより、丁度これを樽に入れようと思っていたのだけれど、手伝ってくれない?
一人じゃ樽を支えながら注げないのよ」
「分かった、いいぜ」
その後、樽への封入のみならず、蔵へ運び込む所まで手伝った魔理沙は一言断ってから風呂を借り、汗を洗い流した
いつの間にか用意されていた襦袢に袖を通し、台所に向かうと既に霊夢の姿はなく、代わりにいつも居間として使っている部屋で料理の並んだ卓袱台の前に座し、眼を閉じていた
ふと縁側に目をやると、そこには三方(※)の上に盛られた里芋と花瓶にたてられたススキ、そして徳利と御猪口が既に用意されていた
「そうか、もうそんな時期か」
半ば独り言のように呟いた言葉で気が付いたのか、霊夢がこちらを向き、「早く頂きましょ、せっかくのご飯が冷めちゃうし、何より月が見えなくなるわ」と急かすので
「それもそうだな」、とだけ返し、霊夢と向かい合うようにして座る
「「では、頂きます」」
二人の声が月夜に響く
そして夜も、秋も静かに更けていった
先週の土日に更新しようと思いながらも、作者クオリティーと言わんばかりのサボり具合を発揮したために隔週以上に長いペースで更新する事態に
仕事が変わって一段落したのと季節の変わり目(というか梅雨)が重なって胃炎と診断されまして
食事量も食事内容も制限されたまま日々を過ごしております
他の作品もいい加減更新しないと4月中に止まったままなんですよね・・・
※三方=主に神道などで神前に供え物を捧げる際に使われる木製の台、月見の際に丸く剥いた里芋若しくは団子を供える(積む)際にも台として使われる




