巻之伍 華、金の髪の女妖と出会いし候
都の外れに一人の娘が居りました
名は逢河深山華
彼女が何をしているか、と訊かれれば、現代で言うところの『精神統一』と言ったところでありましょうか
清涼殿にて鵺が討たれて早数年、もうまもなく武家が台頭しようとする頃ではありますが、彼女の周囲では気配すら見いだせません
周囲には人はおろか鳥獣も虫もおらぬ岩の上で静かに瞑想していた華でございますが、ふと目を開け
「何者だ」
すると何もない空間が裂け、中から現れたのは人の形をした妖怪
「あら、やっぱり気付いてたの」
「当たり前だ、お前のその妖気を忘れるはずがないだろう」
「何の事かしら?」
「白を切るつもりか
まあいい、前に林の中で私を見ていたのはお前だろう」
「ええ、あれから何度か監視させていただいてましたわ」
「矢っ張り、か」
「鵺の時のようにはしないのね?」
「あの時と一緒にするな
適わんと分かっている相手に喧嘩をふっかけるほど未熟ではない」
「あら、それは残念
貴女が相手ならとても面白そうだったのに」
「・・・一つ訊いてもいいか?」
「何かしら?」
「なぜ私に興味を持った?
私よりも腕の立つ陰陽師なら都にたんと居るだろう」
「なんとなく、よ」
「そうか」
一時の沈黙が訪れます・・・が
「もう1つ・・・名は?」
「八雲紫
字はこうね」
「紫・・・か」
「と言っても別に身分が高いわけではないのだけれど」
「嘘を言え
あれから私が退治した妖怪からは僅かだが同じ妖気が混ざっていた」
「一部訂正
関わってはいた」
「だろうな
理由は訊くまでもあるまい」
「ええ
大方その通り、よ」
そして音もなく女妖・・・八雲紫は居なくなり
「矢っ張りか
聞いていた通り、胡散臭い」
やがて華も立ち上がり、次の依頼の準備に取りかかるのでありました
かなり無理矢理ですが、本話で第二章は終了となります
元々こっちは数話で終わらせる予定でしたので
本当は天狗に会わせてみたりしたかったんですが、文章が思いつかないのはどうしようもありません




