第三話「問うに落ちず語るに落ちる~小者な悪党って、自分から悪事を暴露したがる~」
本日二回目の投稿をいたします。
斗真の怒りが、ついに爆発・・・?
カツーン・・・。
カツーン・・・。
牢獄の中に、足音が響き渡る。
まずい、誰か来た!?
「そうだ、ジャケットの光彩迷彩機能で・・・!」
ジャケットの内側についているボタンを押すと、僕の姿が、光に包まれた状態になった。
「ど、どういうこっちゃ!?あの姉ちゃんが、消えた!?」
「あ、これ、一定時間、姿が見えなくなる機能なんです」
「ホンマや、姉ちゃんの声がしよるな!」
とりあえず、これで、誰が来たのか、隠れて様子を伺おう。
ベリス姉さまとの通信が繋がっている状態にしておき、僕たちは身構える。
そこに現れたのは、アラブの商人をイメージさせるような、小太りの男だった。
いやらしく笑いながら、隣に付き添っている、派手な服装に身を包んでいる褐色肌の美女を抱きしめて、見せつけるようにいちゃついている。
「気分はいかがかな、裏切者が!」
「・・・国王陛下」
ええっ!?この豚みたいな脂ぎったオッサンが、アムレットの国王だって!?
全身にはジャラジャラと金銀の装飾が施されたアクセサリーをつけて、太い指には、趣味の悪い大きな宝石がついた指輪をはめ込んでいる。趣味悪い成金親父だって、ここまではさすがにいないぞ。
「国王陛下、どうか、目をお覚ましになられてください。貴方様は、自分を見失っておられます。わたくしはどうなっても構いませんが、何卒、アンジェリカだけでもここから解放してください。アンジェリカは、貴方の血を引き継ぐ、正統な後継者ではございませんか」
「ふんっ!!お前のような汚らわしい女の血を引く娘など、もはや、ワシの娘ではないわ!!まあ、お前たちが国家転覆を図ったかどうかなど、真偽などどうでもいいことだ。ワシはやっと悟ったのだ。お前のような、夫を立てる事すらも知らない、目立ちたがり屋の小うるさい女よりも、アニタこそが、ワシにとっての運命の女性であったことを!!」
「まぁ・・・♥国王陛下、嬉しいですわぁ♥」
ああ、このけばけばしい女性が、側室の女性か。
何て言うか、その、長身でスタイルが抜群だけど、化粧が濃いせいか、アンジェリカ王女様と年が近いとは思えないほどに、大人っぽいというか、老けていると言うべきか・・・。
そして、汚物でも見るかのような冷たい目で見つめているアルビナ王妃様と、怒りと屈辱で顔を真っ赤にして、拳を震わせるほど握りしめているアンジェリカ王女の前で、イチャイチャとし始める二人に対して、僕は、ものすごく気持ち悪い気分になった。
なんだ、この三流のメロドラマのような光景は。
というか、マジで親子ほどの年の差が離れている二人がイチャついている光景は、全然羨ましくないぞ。むしろ、この二人の頭の中がお花畑の状態であることをアピールしているだけじゃん。
「国王陛下、王妃様はこれまで、どれだけアムレットのために、力を尽くしてこられたか、まだお分かりになられないのですか!?川の氾濫による水害の被害を防ぐために、治水の整備を行ったことによって、アムレットは貴重な水源を確保し、水害に悩まされることもなくなったではありませんか!?それなのに、王妃様に対して、このような仕打ちはいくら何でも酷過ぎます!!」
「だぁぁぁまぁぁぁれぇぇぇっ!!そうやって、母子揃って、ワシのことをバカにするのか!!いつもそうだ、ワシではなく、お前やアルビナばかりが、王族や貴族からもてはやされて、他国のものからも信頼されて、ワシをのけ者にしおって!!いいか!?この国の王はワシだ!!褒められるのも、敬われるのも、崇められるのも、このワシだけでいいのだ!!民に、他国に、世界に、認められるのはワシだけでいい!!」
顔を真っ赤にしながら、鉄格子を拳で殴り、口から唾をまき散らして怒鳴りつける国王の姿は、あまりにも見苦しかった。
ていうか、これが一国の王って、悪い冗談でしかないんですけど?
「ダーリン、そんなに怒っちゃ、怖いわぁ・・・」
「ああ、済まなかったね、ハニー。とにかく、もうお前たちはおしまいだ。死ぬ前にお別れのあいさつにきてやったのだ。もうすぐ、アムレットはワシの手で、コアントロー大陸の全てを支配する大帝国に生まれ変わるのだよ!」
(どういうことだ?)
「死ぬ前に教えてやろう。クロス王国が、アムレットに同盟の申し出をしてきた。まあ、クロスは大国ではあったが、ここ最近、クロスが召喚した勇者の不祥事が続いて、他国からの非難が殺到しているらしくてな。今まではワシらのことなど、眼中にもなかったくせに、向こうから頭を下げて同盟を頼み込んできおった!あの英雄の国が、ワシの価値をついに認めざるを得なくなったということだ!!」
いや、それ、もう後がなくなって、誰でもいいから道連れの相手を探しているだけ!てか、アンタの場合は、まんまと乗せられて利用されているだけですから!?
「そしたら、同盟の証として、王家の墓の宝物庫に収められている財宝を譲渡してくれれば、パラケルススの魔石を寄こしてくれるそうだ!!この魔石の力があれば、不老不死も、世界最高の魔導師も夢ではない、莫大な魔力が手に入る!!この魔石の力で、ワシは近隣諸国に侵略を仕掛けて、コアントロー大陸の全てを支配し、アムレット大帝国を建国するのだ!!ぐふっ、ぐふふっ、ぐわあっはっはっは!!」
「あぁん、素敵よ、ダーリン♥貴方こそが、この大陸の真の支配者の器にふさわしいわぁん!」
(・・・あの、ベリス姉さま、これ、黒幕がもう序盤で全部暴露しちゃったんですけど)
(・・・よくもまあ、このような男を国王に選んだものね。アムレットって、王妃と第一王女の献身でもっていたということが分かったわ)
うん、ベリス姉さまが通話口の向こうで、呆れてものが言えないって感じになるのも無理はない。
「王家の墓の財宝は、決して手を出してはいけない掟があります!!それを破れば、王家の墓の祟りが起こります!!」
「ふんっ!!どいつもこいつも口を開けば、すぐに祟りだ、呪いだ、下らないことを言いおって!!先代の父上も、古参の臣下や貴族たちも、祟りがそんなに怖いものか!!そうだ、ついでに教えてやろうか。クロスが要求してきた財宝と言うのはなぁ、宝物庫に封印されている禁書【ネクロノミコン】だ!」
(ネクロノミコン、ですって!?ハイドラの書と同じく、四大禁書の一つじゃないの!!)
(おいおい、これってまさか、渾沌の時のように、邪眼一族も絡んでいるんじゃねえだろうな?)
「そして、いつの間にか宝物庫の中にあった、巨大な藍色の宝石を差し出せば、クロスとの同盟を結んでくれると言ってくれたのだ。しかし、クロスも趣味が悪いものだな。汚らわしい狐人族の女が閉じ込められている宝石などを欲しがるとはな」
(オイ!?藍色の宝石に閉じ込められている、狐人族の女って、まさか・・・!?)
(・・・思い当たる人物が、一人だけ、いるな・・・!)
「何ということを・・・!!ネクロノミコンは、王家の墓の最深部にある、死者の都の門が現世に開かないために、現世と常世の境を閉ざすために作られた封印の鍵ではございませんか!!それが、他国の手に渡るということが、どういうことになるのか、お分かりになられませんか!?あれが解放されてしまったら、黄泉の国から死者が現世に呼び戻してしまうのですよ!?そんなことになったら、コアントローどころか、世界中が、死者で溢れかえってしまう!!」
「ふんっ、まだ、分からないのか。そんなこと、ワシにも分かっておるわい。だがしかし、パラケルススの魔石の力があれば、アンデッド程度の魔物や亡霊など恐れる心配などない!!むしろ、そいつらを我が軍門に従えて、不死身の兵士の大軍を我が帝国軍に迎え入れれば、この世界の覇者になることさえも夢ではない!」
ヤバい、このオッサン、目がマジだ!!
どうして、物事を自分にとって都合のいい方向にしか考えられないんだよ!?明らかに、リスクが高すぎるだろう!?もし間違いでもあったら、コアントローがアンデッドに支配されてしまう可能性だってあるんだぞ!?そんなことも、分からないのかよ!?
「そのために、ネクロノミコンを手に入れるための生贄も準備したのだ!世界各地で活躍している、冒険者や盗賊、トレジャーハンターなどを片っ端から連れ去って、洗脳して、ピラミッドの探索に向かわせているのだよ!!」
「なんちゅうことを・・・!!アンタ、他国の人にまで手ェ出しとったんか!?」
「そないなことがもし明るみになったら、アムレットはもうおしまいやないか!!」
「ええい、うるさぁぁぁぁぁい!!その口の利き方はなんだ!!とにかく!!ワシはコアントローの全てを支配する、大帝国の初代皇帝となるためなら、手段は選ばん!!クックック、そろそろブラオベーレで捕らえるように命じておいた、ブラオベーレやスピタルでS級ランクの魔物を次々と討伐し、闇ギルドでも期待のルーキーとして注目されている、凄腕の裁縫師が転送されてくるころじゃ。そやつに洗脳を施して、ワシの手足となって働いてもらおうかのぉ!!ふひゃひゃひゃひゃひゃ!!楽しみじゃのう!!」
もしもし、僕、裁縫師のトーマくん。
今、アンタの、目の前にいるの♥
はい、まさかの犯人自らの暴露で、言質を取りました~♥
まさか、一国の王が、僕以外にも世界各地で、誘拐事件を起こしているとは思いませんでしたよ。
しかもその理由が、絶対に開放してはいけない禁書の力を利用して、大陸の支配者になって、妻と娘を見返すためだって?
国王の言葉は、最初から全部録音していたりする。
これで、もう言い逃れが出来ない証拠をゲットだぜ。
そして、憎たらしい笑みを浮かべながら、国王は側室を引き連れて、牢獄から出て行った。
『・・・上等じゃねえか、そのバカ国王!オレたちの可愛い弟を、そんなバカげた理由で、悪事に利用するつもりだって?』
大アネキ、どうやら、本気で怒っていらっしゃるようです。
まあ、僕もあともう少し国王がバカなことを言っていたら、鉄格子越しに蹴り飛ばしてやろうかと思ったけどな!!
『トーマちゃん、とにかく、いったん状況を整理したいから、そこから帰ってこれるかしら?手段は、トーマちゃんに一任するわ』
え・・・?
それって、もしかして、僕にここから脱獄してこいということですか?
一見、ものすごい無茶ぶりに聞こえるけど、ベリス姉さまの言葉の真意が不思議と理解できるような気がした。
「・・・あの、それって、僕に全て任せるということで、いいんですよね?」
『ええ、私たちが乗り込んでいくよりも、そっちのほうが、あのバカ国王には効果てきめんでしょうし。私たちはちょっと、やらなければならないことがあるの。・・・出来るかしら?あと、お土産も忘れずに頼むわ』
ああ、なるほど。
そっちの問題に関しては、ベリス姉さまが適任だよね。
よっしゃ、それなら、こっちも期待に応えてやろうじゃありませんか・・・!!
ベリス姉さまからの許可も下りたことだし、こうなったら徹底的にやってもいいってことだしね!
「な、何や、あの姉ちゃん・・・!?まるで鬼か、悪魔のような、エラく恐ろしい顔つきになっとるんやけど・・・!!」
「・・・ああ、あの圧倒的なオーラは、ウチの国の騎士団でも、あそこまでの殺意と怒りに満ちたオーラを放つことが出来るヤツはおらんで・・・?」
さて、楽しい楽しい脱獄の始まりだ・・・!!
ベアトリクス様からの「ちょっと話したいことがあるから、お家に帰ってきて!帰る方法は、全部、お任せするから!」→「大人しく帰ってこいとは一言も言ってないから、思う存分、好きなように暴れて、トンズラしてこい!お土産も忘れないでね」といったように解釈した斗真。証拠も手に入り、とりあえずは王妃様と第一王女を保護するために、脱獄を開始します!
この男の娘が大人しく脱獄などするはずがありません。
確実に、アムレット国王に地獄を見せてから、お土産を持って帰ります。
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます!




