幕話①「とある傭兵団の平凡な一日~犯罪奴隷の視点~(前編)」
一部にR15的描写があります※
いつも拙作を読んでいただき、ありがとうございます!
新作が書きあがりましたので、投稿いたします!
今回は、桜視点の話です。
皆さん、こんにちは。
この度、傭兵団【彩虹の戦乙女】の犯罪奴隷として、働くことになりました、元勇者の幕ノ内桜といいます。
今回は、あたしが体験した、世にも不思議な物語を、お話したいと思います。
そう、それは、普段、任務がない時の【彩虹の戦乙女】は、何をやっているのか、ということについてです。
【事実は小説よりも奇なり】。
英国の詩人、バイロン先生がそうおっしゃっていましたが、まさに、その通りだなあと、思い知らされました。
ここの環境に慣れていくために必要なこと。
それは、これまでの常識を全て捨てること。
どんなトラブルが起きても、動じない、強靭な精神を持つこと。
そして、心の中に「何があっても負けるな。力の限り、生きてやる」という意思を忘れずにいること。
見目麗しい、淑女?
スタイル抜群で、同性異性問わず惹きつける、妖艶な美女?
そんな人、ここには、一人もいません。
いるとしたら、見た目は完璧なのに、中身が果てしなく残念過ぎるポンコツ系です・・・!
その事情について、説明したいと思います。
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【AM6:00】
朝、目を覚まして、あたしの奴隷としての一日が始まります。
あたしの部屋は奴隷にあてがわれるような部屋ではなく、空いている客室を改装した、清潔感のある綺麗な部屋です。
『奴隷用の部屋など、最初から準備していなかったからな。ヴィルヘルミーナや、オリヴィアをお仕置きで拘束するために用意した座敷牢に入れるのもあれだし、とりあえず、この部屋を使ってくれ』
副団長のアイリスさんからそう言われて、あたしは、2階の西側の一番端にある部屋を使うことになった。というか、団員のお仕置き用に、座敷牢を準備するって、あの人たちは一体何をやらかしたんだよ。
「・・・おはよう、さくら」
隣の部屋から、同僚で、同級生でもある斗真が顔を出した。
相変わらず線が細いというか、色白と言うか、どこからどう見ても男性とは思えない顔立ちと、しなやかな身体といった中性的な容姿の持ち主だ。部屋着のTシャツの上から学校指定のジャージと半ズボンを着込み、その下には、スパッツを履いている。
斗真とは、一緒に顔を洗ってから、それぞれ指定された隊員用の服に着替えをして、朝食の準備に取り掛かることになっている。
「おはよ、斗真。随分と眠たそうだね?」
「・・・それがさ、朝起きたら、身体が重くてさ」
ちゃんと寝ているはずなんだけどなあ、と斗真は首をかしげていた。
そして、その原因が何なのか、斗真が後ろを振り返った時に分かった。
「・・・・・・トーマの匂い・・・くんかくんか・・・スーハースーハー・・・うえっへっへっへ・・・たまりませんなあ♥」
この、おんぶオバケが原因だ。
騎乗兵のビビアナさんが、斗真の背中にしがみついて、恍惚とした笑みを浮かべていた。
「・・・ビビアナさん、何をやっているんですか?」
「・・・・・・朝のジョギング」
「いや、その言い訳、無理があるだろ」
「・・・・・・トーマには、これで、通じた」
マジか。
どこまでお人好しと言うか、人を疑うことを知らないんだよ。
「あ、ビビ姉!おはよう、いつの間に、そこにいたの?」
「・・・・・・昨日の夜から、一晩中、くっついていました」
マジかよ。
アンタは悪霊か、怨霊の類かよ。
「一晩中って、まさか、僕が寝ている間もずっと!?」
「・・・・・・(コクリ)」
「まさか、昨日の夜、部屋の前で別れた時、背中にずっとくっついていたんですか!?」
「・・・・・・フッ、着替えている間は、ずっと、ベッドの下に潜り込んでいた。そして、トーマが眠りについたのを確認して、布団の中に潜り込んだ」
「変態だぁぁぁぁぁっ!!ここに、変態がいます!!」
「・・・・・・変態ではない。淫乱と呼べ」
「もっと悪化しているよね!?」
この世界では、おまわりさんって、110番で呼べるかな?
「・・・・・・それに、アレクシアには先を越されたが、愛人2号の座は、いただいた♥」
うん?どういう意味だ?
すると、斗真の顔色から血の気が引いて、真っ青になって、震えだした。
そして、自分のパンツの中を見て、まるでこの世の終わりでも見たかのような表情になって、口をパクパクさせている。
「・・・ビビ姉、まさか、寝ている間に・・・!!」
「・・・・・・起こさないように、トーマを(ピー)すのは、結構燃えました♥」
親指をぐっと立てて、自分の悪行を、自信満々で答えやがった。
「いぃぃぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁーーーーーーっ!!!」
あ、トーマがついにぶっ壊れた!!
屋敷中に響き渡るような絶叫を上げたかと思うと、その場に崩れ落ちて、地面に突っ伏してしまった。
そ、そりゃそうだよな。まさか、寝ている間に、既成事実を作り上げられているなど、夢にも思わないだろうな。
「・・・・・・ついさっきまで、運動していたから、眠くなってきた。お昼になったら、起きる。それでは、トーマ、またあとで♥愛しているぜ、ハニー♥」
そう言って、どこまでもマイペースに、投げキッスを飛ばしてから、ビビアナさんは部屋に戻っていった。
「・・・あ、あははは、終わった、終わっちゃった、僕」
斗真が不気味な笑みを浮かべて、手には炎が燃え盛る大剣を持ち、ゆらぁっと立ち上がった。
そして、ビビアナさんの部屋の扉の前に立って、大剣を静かに降り上げる・・・。
「お、落ち着けーーーっ!!寝ている間に、そういうことをされたとはいえ、いきなり部屋ごと大爆発させようとするのはやり過ぎだぁぁぁっ!!」
「放して桜!!一度このバカには、貞操観念というものを死ぬほど刻みつけて、教えてあげないといけないんだ!!」
「死ぬほど刻みつけたら、ただの惨殺だからな!?」
斗真を羽交い絞めにして、必死に止めていると、ようやくそこでレベッカさんたちが起きて、騒ぎを聞きつけてやってきた。
その後、ビビアナさんが怒り狂ったアレクシアさんに部屋から引きずり出されて、団員全員から、捕まったら死ぬ一歩手前まで、肉体的にも精神的にも追い詰められるお仕置き地獄が待ち受ける、時間無制限の鬼ごっこが始まったのは、言うまでもない。
もう、朝から、とにかく・・・メチャクチャだ。
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【AM7:00】
まあ、そんなこともありました。
あの時は、本当に斗真がビビアナさんを殺るといった目つきになっていたので、マジでヤバかった。
さすがにあの後は食事の準備どころか、一日中【ビビアナさんを探せ!】ということで、追いかけまわしていたので、別の日の話をしよう。
斗真の屋敷での隊員服は、メイド服らしい。
もうこの時点で、ツッコミどころは多いのだが、斗真はアイリスさんから、これが、この世界における男性らしさを鍛えるために、誰もが通る道の一環として着るものだと諭されて、すっかり信じ込んでいる。
アイリスさんよ、こんな無垢で、素直な心を持つ少年を騙して、心が痛まないのか?
そして、あたしに用意された服は・・・。
【和服エプロン】。
うん、おかしいだろう。
あたしの性別、男性だって、知っているはずだよね。
鬼島ちゃんの作った魔道具の副作用で、男性と女性の同性具有の身体つきになったとはいえ、性別は男のままだよね。
どうして、女物の着物と、フリルが付いた白いエプロンを着て、仕事をしなくてはならないのだろうか。
これなら、首に首輪をつけて、手足に重りや枷をつけて、働いた方がまだマシではないだろうか。
そして、これを用意したのは、何と・・・斗真だった。
『桜には和服が似合うかと思って、作ってみたよ。みんなで、女装をして、男らしさを極めようよ。これを着て、仕事をして、いつか、みんなに僕たちのことを男らしいと、見直してもらおうね!』
すまん、おそらくそれは一生無理だろうな。
そしてアイリスさん、アンタのついた嘘で、とばっちりを受けることになったけど、責任取ってもらうからな?
それに、胸がやたら大きくなってしまったせいで、着物を着ても、どうしても、目立つんだよな。
ちなみに現在の3サイズは計ってみたら、88-56-87、でしたよ。
さよなら、男の身体。トホホホ・・・。
着物を着込んだら、斗真と、アイスキマイラのユキ、あたしの3人で、団員たちの朝ご飯を作る。
和食はあたしが担当し、洋食や中華は斗真が担当している。
ユキはテーブルクロスを綺麗に敷いて、全員分の食器やお皿などを準備する。
そして、朝ご飯を作り終えたら、あたしは、小さいお椀に盛りつけたご飯と、お水、お茶を入れた湯飲みをお膳に乗せて、あたしの部屋に持っていく。
あたしの部屋に、斗真が作ってくれた、小さな仏壇。
そこには、修学旅行中に撮った写真が、遺影代わりに写真立てに飾られて、置かれている。
「・・・おはよう、忍、麗音、仁美、花桜梨、鬼島ちゃん」
この世界に召喚されて、元の世界に帰れることなく、命を落とした、大切な家族と仲間たち。
あたしが、俺が守り切れなかった、大切な存在。
手を合わせて、今日も一日、頑張りますという思いを伝えてから、あたしは、部屋を出ていく。
今頃、こんなことになったあたしの姿を見て、どんな顔をしているんだろうか。
笑っているのだろうか。それとも、呆れているのかもしれない。
いずれにせよ、アイツらが、もう苦しむこともなく、安らかに眠ってくれていることを、あたしは、願わずにはいられない。
そして、必ず、お前たちをこんな目に遭わせたクロス王国と、千鶴には、きちんとけじめをつけさせる。
例え、自分の命と引き換えにしようとも、どれだけ長い時間をかけても、絶対に追い詰めてみせる。
それが、アイツらに対する、供養でもあるからな。
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【AM9:00】
朝ご飯を終えて、後片付けを済ませた後は、屋敷の中の清掃から仕事を始める。
基本的に、あたしたちが掃除をするのは共有スペースの【大食堂】【風呂場】【お手洗い】【廊下】【エントランスホール】【バー】だけど、隊員の何人かが手伝いに来てくれるので、1時間ほどで、塵一つなく綺麗に掃除を済ませる事が出来る。
その後は、隊員たちの仕事の手伝いや雑用が主な仕事になる。
レベッカさんが【団長室】で、アイリスさんと一緒に、ベアトリクス女王が持ってきた依頼を確認したり、提出する報告書の作成などに取り掛かる。アイリスさん曰く。
『コイツ一人だけに仕事を任せると、すぐに脱走するからな』
『だーって、字ばっかり見ていると、頭が痛くなってくるし、動悸、息切れ、気つけが起きるんだぞ!?ついには意識を失って、倒れるんだからな!?』
『自信満々に言うことではないだろう、大バカ者!!』
本当に大丈夫かよ、この傭兵団・・・。
傭兵団の団長が、どこぞの、日本一ダメな小学生みたいじゃねーか。
でも最近は、斗真の女装写真を写真立てに入れて、机の上に置くことによって、逃亡することはなくなったらしい。斗真の前では、情けない姿を晒せないというわけだろうか。
ビビアナさんが【工房】で武器や魔導兵器の手入れや、新しい魔導兵器の設計、開発に取り組む。
グリゼルダさんが【備蓄倉庫】で備品の貯えのチェックをしたり、空いた時間を利用して、忍術の修行に取り組んでいる。この人が唯一まともと言うか、常識人だと思う。
アレクシアさんは、庭園に新しく作った【家庭菜園】で薬草や野菜、果物などの世話をしている。
ヴィルヘルミーナさんは、意外なことに、魔道具の手入れをしたり、剣の修行に取り組んでいる。
普段、ちゃらんぽらんな人かと思っていたら、いつ、どんな時でもすぐ戦う準備が出来るように、剣の修行は毎日欠かさずに行っているようだ。【道場】で、汗の玉を散らしながら、美しく、力強く剣を振るう姿を見て、思わず見とれてしまうほど、見事な動きだった。
「しかし、こうしてみると、財務処理をしてくれていた、オリヴィアの存在が、本当にありがたいって思うよな・・・」
「まあ、そうだな。アイツはそういった事務作業は完璧にこなすからな。手に入れた魔道具の解析や、マジックアイテムの作成、マップの手配も、アイツに任せていたわけだしな」
「オリヴィアさんって、どういう人だったんですか?」
斗真がそう尋ねると、みんな、少し考えてから、口を開いた。
「うーんと、えーっと、お宝が大好きというか、お金がとにかく大好きだな!」
おい。
「欲しいものがあったら、どんな手を使ってでも、手に入れようとするからな」
「・・・口癖が、お前のものはウチのもん、ウチのもんはウチのもん、だからね」
関西弁で話すんだな。まあ、この世界の場合は関西弁というのかな?
「でも、義理人情には厚くて、仲間思いの熱い心を持っている子だよねぇ」
「・・・・・・そして、うちの団で一番冷酷非情で、容赦がない性格」
「そうですわね~。仲間に危害を加える相手には、徹底的に報復しますわね。ある意味、わたくしよりも、やる時には派手にやらかしますし、敵がどうなろうと知ったこっちゃないと、バッサリと切り捨てる事が出来る人間ですし」
(いや、アンタよりも容赦がないってことは、多分ないでしょうよ)
グリゼルダさん、そうツッコミたいのは分かるけど、言ったらヤバいからな?
「そういえばさ、アイツ、昔、よく【おきつね商会】っていう商売、やっていたよな?また、何か面白いものを仕入れて、売ってくれねえかなぁ~♪」
「・・・それについては賛成できん。私たちの入浴している姿や、着替えをしているところを隠し撮りして、写真集にして、こっそりと売っていたこともあるからな!」
「あの時は、アイツを追い詰めるために、全員フル装備で、町中を追いかけ回したからね・・・」
良くも悪くも破天荒というか、豪快と言うか・・・そんな人なのね。
「・・・ああ、やっぱり、そういう人だったか」
斗真、なぜ、そんなにも納得しているというか、悟り切ったような表情をしているんだ?
「だってさ、みんな、七つの大罪のそれぞれの罪を具現化したような人たちじゃん。グリゼルダさんの嫉妬はまだ見たことがないけど、ヴィルヘルミーナさんの色欲然り、ビビ姉の怠惰然り。そうなったら、もう【強欲】の罪を冠する人なら、きっとそう言う人なんだろうなー・・・って」
諦めるな。
まだ、会ったこともないのに、想像だけでその人のことを決めつけるのは良くないぞ?
確かに不安要素が多すぎる人だけどさ!
【悲報】斗真、寝ている間に、ビビアナに襲われる。
これで、3人のヒロインたちと関係を持ってしまった斗真・・・。
まともなヒロインなんて、ここには、いませんでした・・・。
次回も、桜視点の番外編となります。
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!!




