第十七話「冥界の猟犬からの情報提供~身内に対するディスもほどほどに~」
一部にR15的描写があります※
いつも、拙作を読んでいただき、本当にありがとうございます!
新作が書きあがりましたので、投稿いたします。
今回、斗真と、メインヒロインとの間に進展が・・・?
ベリス姉さまたちは、その後、ヴァネッサ女王たちと、何やら、大切な話があるということで、僕たちは、これからどう動くか、みんなで話し合うために、集まることにした。
テントで、会議をするのもいいが、万が一、オラドールの里のエルフたちに見つかったら厄介なので、ブリアック女王が用意してくれた、離宮の一室に集まって、話し合うことになった。
「・・・なるほどね。しかし、まさか、あの時の、エルフの連中が、まだ、そんなことをやっていたとはね。あきれてものが言えないよ」
「本当にね。あれだけ、酷い目に遭えば、自分たちの思い上がりが、どれだけ愚かだったか、普通なら、理解できるでしょうよ。300年間もずっとそのことを根に持って、こじれにこじれて、挙句の果てには、邪眼一族と手を組んで、禁忌まで犯すなんて・・・」
「・・・・・・やっぱり、あの時、ちゃんと、とどめを刺しておくべきだった」
ヴィルヘルミーナさんたちも、大アネキからの報告を受けて、呆れ果てていた。
そりゃそうだろう。
いくら何でも、どう聞いてもこれは、逆恨みでしかない。
「つーわけだ、禁忌を犯したエルフたちは、今度という今度こそ、徹底的に潰さなきゃならなくなった」
「潰す、と言っても、まずは、オラドール軍の戦力が、どれほどのものか、知りたいね」
「まあ、私たちよりも少ないということはないだろうな」
実質、7人でやらなくちゃいけないもんね。
その時、部屋の扉が、ノックされた。
誰だろう・・・?
「はい」
「・・・失礼いたします、こちら【彩虹の戦乙女】の人のお泊りになっている部屋で、よろしかったでしょうか?」
外から、まだ幼い、子供のような声が聞こえてきた。
僕たちは、警戒しながら、部屋の扉を開けた。
そこには、紫色の髪の毛に赤色の瞳、褐色色の肌を持つ、小柄で愛くるしい女の子が立っていた。
尖った耳と、身体に刻まれた、黒い紋様が特徴的な子だった。
「・・・ダークエルフ?」
アレクシアさんが、驚いたように目を見開いた。
「・・・初めまして、わたくし、サクラ様からの言いつけで、トーマ様に、こちらの情報を持っていくように言われました。オラドールのエルフ軍に関する情報です」
そういって、少女は、小さな封筒を取り出した。
封筒を開くと、中には、一枚の青色のカードが入っていた。
金色の細かい文字や、絵柄が無数に描かれていて、表面には、魔法陣が描かれている。
「これは、情報を記録している魔道具だな。魔力を注ぎ込むと、中に入っている、情報が見られる」
「・・・確かに、お渡ししました」
そういって、女の子は、立ち去ろうとした。
しかし、一歩、歩いたところで立ち止まると、僕たちの方をちらちらと見ながら、何かを言いたげにしている。
「・・・どうか、したのか?」
「・・・サクラ様・・・どうなってしまうのですか?」
彼女は、不安そうに、訪ねてきた。
「・・・まだ、分からない。ただ、ヒュドラとなった、異世界人の世話を担当していたにもかかわらず、このようなことになってしまったから、おとがめなしとは、いかないだろうな」
「・・・!・・・そ、そうですよね。・・・で、でも、サクラ様は、怪我をしていて、治療していたんです。その間に、あの、チヅルとか言う勇者が、勝手に、サクラ様の仲間の人たちを連れて行ってしまったんです。サクラ様に、何も言わないで・・・」
彼女の様子がおかしい。
さっきまで、無表情だったのに、目に涙を浮かべて、身体が震えだす。
そして、彼女は、もう我慢が出来ずに、大粒の涙を流した。
「・・・サクラ様は・・・何も・・・悪いことなんてしてないのに!・・・サクラ様は、今までの、依頼人とは違って、私たち、ダークエルフたちのことも、親身になって、接してくれていたのに・・・!あんなに、優しくて、いつも、私たちのことを、気遣ってくれた、勇者様なんて・・・いなかった!それなのに・・・それなのに・・・!」
「・・・落ち着き給えよ、まずは、ボクたちに、話を聞かせてくれないかい?ボクたちでよければ、相談に乗るよ?その、サクラが、わざわざ、ボクたちに調べたことを持っていくように、命じたんだろう?つまり、こっちも、それに対するお礼も含めてさ、君の話を聞こうではないか」
ヴィルヘルミーナさんは、泣いている女の子を優しくあやして、部屋の中に入れた。
こういう時、女性を安心させることに関しては、ヴィルヘルミーナさんの右に出る者はいないだろう。
女の子をあやして、慰めて、話しかけていくうちに、彼女も、ようやく、落ち着きを取り戻して、ぽつりぽつりと、話してくれた。
「・・・私たち、冥界の猟犬のダークエルフは、もともとは、シャルトリューズの森に住んでいた、ダークエルフだったの。でも、オラドールの里のエルフたちに、10年前に、突然、集落に襲撃を仕掛けられて、私たちは、奇跡的に、助かったの・・・」
「・・・そういえば、シャルトリューズの森について調べてみたら、10年前に、ダークエルフの集落に住んでいた、ダークエルフたちが、何者かに襲撃を受けたという記録があったな。資料によれば、集落の建物は全て焼き払われていて、村人は、一人も見つからなかったらしいが・・・」
「・・・お父さんも、お母さんも、みんな、オラドールの里のエルフたちに、捕まったの。フォグライトさんと、ダイナモさん、ラムアお姉ちゃんと、私だけが・・・生き残ったの。みんなが、逃がしてくれた」
炎に包まれた、集落。
突然の襲撃。
家が風の魔法で吹き飛ばされて、炎の魔法が飛び交い、辺り一面が、煉獄の炎に飲み込まれていく。
道で、倒れている、傷ついたダークエルフの人々・・・。
どうして、こんなことになったのか、彼女たちには全く訳が分からなかったらしい。
家族とも離れ離れになり、村人や里長の手引きによって、里長の娘だったフォグライトさんと、彼女の護衛をしていたダイナモさん、そして、ラムアさんとカーミラちゃんだけが、逃げ延びることに成功したそうだ。
「・・・集落には、遺体が一つもなかった。きっと、あのエルフたちが、全部、持って行ってしまったんだって思った。でも、オラドールの里に近づこうとしても、里の入り口を、彼女たちは魔法で、見えなくしてしまっていて、森中を探し回ったけど、どうしても、見つける事が出来なかったの・・・」
「・・・あの連中・・・そんなことまで、やっていたのですか!」
「・・・あの集落って、オレたちが初めて行った時には、そんな、結界なんてなかったよな」
「ああ、察するに、その辺りから、人目を避けて、良からぬことを企んでいたのかもしれないな」
「・・・実は、クロス王国に、オラドールの里から、同盟を結ばないかという申し出があったのです。その条件として、魔物が支配する【スピタル】に襲撃を仕掛けて、世界屈指の医療技術を持つ国を丸ごと手に入れて、クロスに差し出すから、その見返りとして、力を貸してほしいと・・・。魔物や魔族なんかに、人の命を救うための技術や知識など、分を弁えていないと言い出したそうです」
はぁっ!?何だ、その、無茶苦茶な話は!?
というか、その申し出を、まさか、クロスも受け入れたんじゃないだろうな!?
「・・・クロスも、ミヅキやキリトのことで、かなり追い込まれていたからな。国王が焦って、一国でも多くの国と同盟を結ぶことで、国が滅亡しないように、その申し出を引き受けたというわけか」
「いや、でも、そんな、無茶苦茶じゃないですか!どうして、そんな、エルフたちの申し出を飲んで、国を丸ごと乗っ取ろうとする作戦に、手を貸すんですか!!」
「スピタルが、魔族と共存共栄を試みる、親魔物派の国だからさ。クロス王国からすれば、目障りでしかないだろうねえ」
「そのうえ、上手くいけば、世界屈指の、医療技術が丸ごと手に入るのだ。欲に駆られて、目先の物事しか見えなくなっているクロスなら、食いつくだろうな」
「・・・いや、それ以前に、そうなるように狙っているのは、邪眼一族の方じゃねえか?」
大アネキの言葉に、全員が、大アネキの方を振り向いた。
「だってさ、戦争ともなれば、スピタルだって抵抗するわけだし、どっちが勝っても、満身創痍っていうか、戦力が削られているっていうのは、間違いねえだろ?弱っている時に、邪眼一族の渾沌が、エルフたちやクロスを裏切って、全員潰せば、邪魔な勇者はいなくなるし、スピタルは手に入るし、いいことづくめじゃねえか。そうなると、今度の計画は、渾沌が、スピタルを手に入れるために、エルフたちをそそのかしたんじゃねえかな?漁夫の利ってヤツじゃないかな」
その場にいた、全員が、凍り付いていた。
た、確かに、大アネキの言うとおりだ。
それなら、邪眼一族が、エルフたちに手を貸す理由も、納得が出来る。
さらに、そこで、エルフたちが所有している禁書まで、手に入るのならば、尚更だ。
「そうなると、渾沌将軍と、オラドールの里のエルフたちは、何が何でも逃がすわけにはいかないってことですよね!」
「ああ、最低でも、今度の騒ぎの元凶を捕らえなくちゃならねえ。野放しにしたら、何をやらかすか、分かったものじゃねえからな。姐さんがあそこまで念を押していたのも、そういうことか」
僕たちで話している間、なぜか、みんな、無言のまま、固まっていた。
あれ?みんな、どうしたのかな?
不思議に思っていると、ユキちゃんが、首をかしげて、一言、つぶやいた。
-レベッカ、お前【漁夫の利】なんていう、難しい言葉、知っていたんだな。-
「・・・・・・」
「・・・・・・」
部屋の中の空気が、ビシッと、凍り付いた。
アイリスお姉さまたちを見ると、自分たちの思っていたことを、ユキちゃんが代弁してしまったのか、気まずそうに、大アネキから目を背けていた。
「・・・あの、みなさん?」
「・・・あらあらまあまあ~、わたくしとしたことが、目の前の光景が信じられず、思わず、固まってしまいましたわ」
「・・・レベッカが、団長らしい行動をするなど、明日は、槍の雨が降るのではないか?」
「・・・・・・何か、拾い食いでもして、頭がおかしくなったの?」
「・・・み、みんな、いくら本当のことだからって、言い過ぎじゃないかい?」
「そ、そこまで、言います!?大アネキだって、団長なんですから、いざという時にぐらい、真面目に仕事やりますって!!」
「それが、問題だと、言っているんだ。ましてや、漁夫の利などという難しい言葉を、レベッカが知っているなんて、天地がひっくり返るほどの衝撃を受けたぞ!」
「そこまでですか!?」
ダメだ、身内からのディスが半端じゃない。
すると、大アネキが、僕の手を引いて、ドアに手をかけた。
「・・・お、おい、レベッカ・・・?」
「あ、その、ちょっと、言い過ぎた・・・ごめん」
「・・・ちょっと、外の空気を吸ってくる。ついてこい、トーマ」
「・・・ひゃ、ひゃい」
有無を言わせない、圧倒的な威圧に押されて、僕は、頷くしか出来なかった。
そして、僕はドナドナのメロディーが頭の中に流れているのを感じながら、大アネキに、引きずるようにして、連れていかれた・・・。
あ、あの、大アネキ?
ここは、確か、使われていない、物置小屋ですよね?
どうして、僕を、こんなところに、連れて行くのでしょうか?
扉を閉めて、鍵をかけて、防音効果のある魔法をかけると、大アネキは・・・僕に抱き着いた。
「ドォォォォォォマァァァァァァッ!!みんなが、オレのことを、バカにするよぅぅぅぅぅぅーーーっ!!うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!オレだって、オレだって、頑張っているのにさぁぁぁぁぁぁっ!!うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」
防音効果を施したことで、大アネキは、ワンワンと大声を張り上げて、僕をぎゅうううっと抱きしめてくる。
ああ、まあ、あそこまで、言われたら、そりゃ辛いわな。
僕は、大アネキが落ち着くまで、彼女の頭を優しく撫でてあげることにした。
「・・・と゛う゛ま゛ぁ・・・・ぐすっ、えっぐ、ひぐっ、オレのこと、慰めてくれるの・・・?」
「そ、そりゃ、あれは、皆が悪いですよ。大アネキは、真面目に、今後のことを考えていてくれていたのに」
「トーマだけだ、オレのことを、分かってくれるのはぁ・・・!」
そういって、甘えるように、顔をぐりぐりと、僕の胸に押し付けてくる。
彼女の汗のにおいと、甘い花のような香り、獣特有の匂いが混じり合って、僕の鼻をくすぐるたびに、緊張して、心臓の鼓動が高鳴っていく。
いつもは強気で、さっぱりしていて、姉御肌な大アネキが、上目遣いで潤んだ目を向けてくる。
「・・・もぅ、少し、慰めてくれる・・・?」
「・・・いいですよ、気が済むまで、付き合いますから」
そう言った瞬間、彼女の目つきと雰囲気が変わった。
そして、いつの間にか、僕は床に押し倒されていた。
あれれ?どうして、こんなことになったのかな?
どうして、大アネキが、僕の上に跨って、見下ろしているのかな?
「あ、あの、大アネキ・・・?」
「・・・慰めてもらうぜェ、たっぷりとなぁ・・・♥へへへ・・・♥オレだけの、トーマ♥」
「え、え、えぇぇぇぇぇぇっ!?」
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
その後、3時間ほどしてから、僕は大アネキと部屋に戻った。
ええ、彼女は機嫌を取り戻してくれましたよ。
アイリスお姉ちゃんたちが、申し訳ないと、土下座をして謝っていましたが、大アネキは、笑って許してくれましたよ。
はぁ~・・・、本当に、機嫌が直ってくれて、良かったなァ・・・。
ーどうした、トーマ。ものすごく、疲れ切ったような顔になっているが、大丈夫か?-
「・・・ユキちゃん、ボクハ、ダイジョウブダヨ。ダイジョウブ、ダイジョウブ」
もう、何も聞かないでください。
どうして、僕が疲れ切っているのかって?
どうして、大アネキの顔が、妙につやつやしているのかですって?
どうやって、慰めたのかって?
答えたくありません。
今はもう、とにかく、疲れました。
「ちょっと、今度は、トーマが真っ白に燃え尽きているんですけどぉぉぉっ!?」
燃え尽きたよ・・・真っ白だ・・・。
どう、慰めたかはご想像にお任せいたします。
次回からは、オラドールのエルフ軍との戦いになります。
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます。
次回もどうぞよろしくお願いいたします!!




