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第一話「桜組~勇者軍side⑧~」

今回から第三章「シャルトリューズの守護竜」編に入ります!!

どうぞよろしくお願いいたします!!

 「一体、これはどうなっておるのだっ!!」


 クロス城、玉座の間。


 イグナーツ国王は目の前に積まれた訴状の山を乱暴に床に叩きつけて、プラチナブロンドの髪の毛をガリガリと爪でひっかきだす。玉座の下で膝を地面について頭を下げている王宮魔導師セルマも真っ青な顔で震えていた。


 「炎の勇者ミヅキめ、とんでもないことをやらかしおった!!まさか、他国の王宮に土足で踏み込んだばかりか、王宮騎士団の騎士を20人も殺害し、さらにはイレーネまで殺した!!そしてドランブイで魔王討伐の任務についていた勇者たちまで殺害していたとは!そのおかげで、ハニーベルからは莫大な額の賠償金と今後の交易の取引を取りやめたいとまで申し出があった!セルマ、お主は勇者たちの監視係としてこの度の不手際をどう責任を取るつもりだ!!」


 「も、申し訳ございません!!」


 「賠償金は風の勇者サクラが万が一の事態に備えて稼いでくれていた貯蓄から出すとしても、他国からの信頼はもはや地に落ちたも同然だ!!ブラオベーレや他の国からも、あのような狂った人間に勇者の称号と任務を言い渡したクロスは信頼できないと言われて、国交の取引も友好も取り消しにされた!!ええい、どいつもこいつも、我が英雄の国をコケにしおって!!我がクロスはかつて世界の災厄を退けた英雄の国であるぞ!!つまりはこの世界の救世主でもあるというのに、その国を切り捨てるとは何とも愚かなことよ!!」


 (・・・自分は全知全能の神にでもなったおつもりですか。貴方など所詮このクロスのお飾りに過ぎない、無知で無能、あまりにも愚かな老害に過ぎないと言うのに)


 セルマはイグナーツ国王のことを内心見下していた。

 自分たちの先祖が世界を救った勇者を見出したことで、世界の危機を救った。すなわち世界の危機を本当の意味で救ったのは自分たち王族であると本気で思い込んでいる。そのため、他者から見下されることを激しく嫌い、怒りのあまりに見さかいを失って暴走しやすい気性の持ち主であった。これまでは勇者の召還に成功し、世界の危機を再び救う英雄の国として世界中から羨望のまなざしで注目を受けていたため、彼は有頂天となり、それによって猟奇的な側面が発露せずに済んでいた。


 しかし、それも美月の暴走によって全てが台無しになりかけているのだ。


 「・・・現在、シャルトリューズのエルフの隠れ里と【砂の王国サビア】から、この度における魔王討伐の任務に置いて勇者軍の派遣を申し出ております。使者の話によりますと、魔王軍と思われる魔族や魔獣が領土内で確認されたという報告があり、その真偽を確かめるとともに魔王軍の侵略を未然に防いでほしいというものでした」


 「それならばすぐにでも勇者を討伐に向かわせろ!!奴らはそのためにいるのだからなっ!!いいか、今度こそは失敗は許されんぞ!!」


 そういって、イグナーツ国王は足跡も荒く玉座を下りて、セルマをぎろりと睨みつけるとそのまま玉座の間を歩き去っていった。これからハニーベルの王宮に謝罪に行かなくてはならないのだ。セルマは顔を下に向けたまま、握りこぶしを震わせて、誰にも聞こえないように恨みと憎しみに満ちた声でつぶやいた。


 「・・・クズが。この私を誰だと思っているのですか。かつて世界を救った英雄の一人であるぞ?その私にこのような振る舞いをしたことが、どのような形で返ってくるか楽しみにしておくといい・・・!!」


 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


 一方、サロンでは和田仁美、矢守忍、そして神谷麗音がテーブルを囲んで座り、難しい顔をしていた。彼女たちは【黄の風騎士(レーヴァテイン)】のメンバーであり、桜の取り巻きでもある「桜組」でもある。


 「なあ、このままじゃリーダーがマジでヤバいんだろう!?どうするんだよ!?」


 「もはや賠償金を稼ぐというだけでは済まないしな。雁野がまさかあそこまで暴れるとは思わなかった。他国の王宮に乗り込んで騎士を手にかけたばかりか、他国に嫁いだ自国の王女までやるとはな、そんな気が狂っているとしか思えない人間を勇者に選んだということで、クロスには人を見る目がないと非難されるのは当然のことだ」


 「レンちゃん、マジで何とかならないの!?桜ちゃん、このままじゃどうなっちゃうの!?」


 「落ち着け、忍。ここで私たちが焦っていても何もならない。今は桜が回復してから、アイツをサポートすることに全力をかけて取り組むことだけを考えていればいい。私たちが仕えているのはクロスではなく、あくまでも幕ノ内桜だけなんだからな」


 そういって、麗音が首から青い瞳のカメレオンのシルバーアクセサリーを取り出した。


 「そうさ。あの時、私たちのことを拾い上げてくれた時から何があってもずっと桜のそばにいるって誓ったんだからな。お前たちだってそうだろう?」


 忍は首にかけてある黄色の瞳のヤモリの、仁美は赤い瞳のワニのシルバーアクセサリーを取り出した。


 「・・・そうだよな。両親の借金のカタに売り飛ばされたオレたちを助けてくれたのは、アイツだもんな」


 「あの時、桜ちゃんがあたしたちのことを助けてくれなかったら、今頃、普通に高校生なんてやってられなかったもんね」


 「・・・そうさ。親に捨てられて、どこにも居場所がなくなって、水商売か風俗に売り飛ばされそうになっていた崖っぷちの私たちをアイツが助けてくれたんだ。桜がピンチなら今度は私たちがアイツを助ける番だろう。違うか?」


 麗音の力強い言葉に、仁美と忍も頷いた。


 「あったりまえだぜ!何があっても、オレたちはリーダーの妹分なんだからな!!」


 「そうだねっ!」


 「・・ふふふっ、頼もしいことだな」


 どん底にいた自分たちを引き上げてくれた、桜の優しさ。


 どうしようもない親に捨てられて、心がすさんでいた自分たちに温もりや安らぎを与えてくれた。


 




 『オレについてこいよ。何があっても、お前らはオレが守ってやる。家族だからな』






 その時だった。


 「・・・ちょっといいかな?」


 声がする方を見ると、そこには松本千鶴とセルマが立っていた。


 「セルマさん、何かご用ですか?」


 「ええ、貴方がたに折り入ってどうしても頼みたい大事な用があるのです。実はこの度におけるミヅキの不祥事はご存知かと思いますが、それによって勇者たちの立場が非常にまずい状況に置かれているのです。ですが、それを解決するためにも今から貴方たちには国王陛下からのお願いを聞いていただきたいのです。この仕事を無事解決することが出来れば、サクラの身の安否の保証は約束されるでしょう」


 「それって、リーダーが助かるかもしれないってことか!?」


 「・・・桜くんが負傷しているところで悪いんだけど、早急に何とか手を打たないと桜くんも危ないかもしれない。だから、桜くんが信頼している貴方たちならきっとこの仕事を無事やり遂げる事が出来ると思う」


 「ねえ、どうする?桜ちゃんは何て言っているの?」


 「現在安静中なので、貴方たちはチヅルが率いる【青の水騎士(ゲイボルグ)】と共に任務に就いてもらいます。チヅルが同行するのであればサクラも納得するでしょう。どうかお願いいたします。この任務が成功すれば、サクラの身の安全は保障することを約束しましょう」


 そういって、セルマが深く頭を下げた。


 「・・・詳しく、話が聞きたいな」


 麗音がそう言うと、忍たちも頷いて了承する。


 そして、セルマが他の人に聞かれてはまずいということで、サロンから麗音たちを連れ出していった。その後ろ姿を千鶴は見送った。


 (・・・桜くんのために役に立てるんだから、どんなことになっても本望なんだよね?)


 感情が読み取れない無表情で、千鶴はさっきまでセルマと話していた内容を思い出していた。


 ▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼


 『・・・シャルトリューズの森のエルフたちと魔王軍討伐における共闘の体制を敷く?』


 『ええ、向こうのエルフたちから申し出がありました。自分たちが開発した魔導生物兵器を使えば魔王軍を全滅させることはたやすいと。ただ、戦力においてはまだ不安な所があるので、クロスの勇者軍と手を組みたいとのことですわ。もちろん引き受けない手はありませんわ。ですが、一つだけ条件がありましてね』


 『・・・条件ですか?』


 『ええ。エルフの科学者たちが開発した魔導生物兵器が実戦で使えるかどうか、何人か試験体となる人間を寄こしてほしいと言ってきました。それも、魔石を身体に埋め込まれて超人的な能力を手に入れた魔人をね。普通の人間ではどれも失敗に終わったそうです。その生物魔導兵器を完成させることが出来れば、魔王軍に壊滅的なダメージを与えることが出来るとエルフたちは豪語しているのですがね』


 『それで、私たちのクラスメートの中で最も総合的に強い力を持っている人たちを試験体としてエルフたちに渡せばいいのかな?』


 『話が早くて助かりますよ』


 『・・・それなら【黄の風騎士】の和田さん、矢守さん、そして神谷さんが一番適任じゃないかな』


 『・・・ですが、彼女たちはサクラの仲間ではないのですか?』


 『いいんだよ。仲間が犠牲になったとしても、世界の平和のためならそれは仕方のないことだったんだって割り切れるようじゃなかったら桜くんには勇者を名乗る資格はないと思うし。もしそれも出来ないようなら、桜くんはもういらないかなって思うし・・・多分私、間違ったことは言ってないと思うよ?』


 『チヅル、貴方はおそらくミヅキよりも危険な人間かもしれませんね。ですが、そんな貴方が私の唯一の味方でいてくれることが今は頼もしい限りですよ』


 『・・・うん、そうだよね。私たち、お友達だもんね』


 ▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲


 「・・・世界を救う英雄になるためには、友達が何人死ぬことになったとしても、仕方がないよね。だってそれが英雄になるためには必要なことだもん」


 千鶴は一人、涙を流しながら不気味な微笑みを浮かべた。

松本千鶴の狂気が暴走する・・・!

彼女は妄想癖+情緒不安定+人間性の欠落といったある意味美月と同じぐらい危険な人物です。

桜は一番信じてはいけないタイプの人間を信じてしまったのかもしれません。


ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。

次回もよろしくお願いいたします!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公サイドの主人公以外が基本的にシリアスから程遠いアホ(褒め言葉)の集まりだから読み手側としてもストレスを感じる事がほぼなく楽しめる。 [気になる点] タイトル回収って何時になったらする…
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