第二話「迷いの森~誰にでもどうしても苦手なものが一つはある~」
いつも拙作を読んでいただき、本当にありがとうございます。
新作が書きあがりましたので、投稿いたします。
どうぞよろしくお願いいたします。
「いやぁ~、まさかアポなしで来てみたらトーマちゃんの手料理が食べられるなんてねぇ。やはり普段の行いがいいからこんなにも素晴らしいことがあるのねっ!!」
満面の笑みを浮かべながら、ベリス姉さまは僕が作ったおにぎりをもっきゅもっきゅと美味しそうにほおばっている。どうやらベリス姉さまは【おかか】のおにぎりが気に入ったらしい。あとでお土産にいくつか違う種類のおにぎりの詰め合わせを軽食として出すと言ったら、涙を流すほど感動して抱きしめられた。
「本当にいつも我が主がご迷惑をおかけして申し訳ございません・・・」
セリアさんが何とも言えない表情を浮かべて、深々と頭を下げていた。
「いえ、食事はみんなで食べると美味しいですから」
「トーマちゃんはいい子ねえ♥おにぎりのほかにもこの【リース】を使った異世界の料理があるんでしょう?今度新しい料理を作ったら私にも教えてくれないかしら?もちろん、お礼はたっぷりと弾むわ♥お小遣いいくら欲しい?それとも、お姉ちゃんと一緒に楽しいところに遊びに行かない?」
(・・・・・・娼館で男娼を口説く成金ババアか、あの人は)
(ビビアナ、それを言った日にはお前今日が命日になるぞ)
(ヴィルヘルミーナ、アンタはどうして報告書にビビがトーマにキスをしたことまで書いたのよ!?)
(だ、だって、どんな些末な出来事だろうと全て書き上げて報告しろって言ったのは君じゃないか)
(そんなものを送り付けたらどうなるかなんて、火を見るよりも明らかだろうが!)
さて、どうしてこんなことになったかというと、僕たちがお昼ご飯を食べている時に突然ベリス姉さまが乱入・・・もといお出ましになられたのだ。先日提出した【古代図書館】の一件に関する報告書を上げたとき、何の手違いか、ビビ姉が僕にキス・・・僕にとっては生まれて初めてのキスだったわけだけど、その写真まで貼って送ってしまい、それを見たベリス姉さまがまさに悪鬼羅刹の形相を浮かべてロケットランチャーで食堂の壁をブッ飛ばし、ビビ姉を亡き者にせんと襲い掛かってきたのだ。
その結果、食堂はほぼ半壊状態。
それでも、テーブルとイスと僕が作ったお昼ご飯だけは無事だったので、みんな壁の至る所に穴が空きまくり、風通しがすっかり良くなった部屋の中でもお昼ご飯を食べていた。うん、もうこういう状況に僕もだいぶ驚かなくなってきたなァ。(現実逃避中)
そこで、お昼ご飯で僕が作っていたおにぎりやおにぎりと一緒につまんで食べられる卵焼きや腸詰、温野菜といった料理を詰め込んだお弁当を差し出すと、ベリス姉さまはぱあっと太陽のような笑顔を浮かべてあっさりと機嫌を直してくれた。そして、現在僕はベリス姉さまのおっぱいに頭を挟まれて、膝の上に乗せられた状態で固定されている。これじゃ人形かなんかだよ。
「ところで、姐さん。今日は何かあったのか?」
腸詰をほおばりながら、大アネキが尋ねるとベリス姉さまが真面目な表情になった。
「ああ、そうだったわね。ビビアナを殺すことしか頭になかったからすっかり忘れていたけど、実は貴方たちに仕事の依頼を持ってきたのよ。依頼人は【医学の国スピタル】の女王陛下【ブリアック・フォン・ブエル10世】からよ」
「スピタルの女王陛下からですか」
「そう、アンタたちもすごく世話になっているでしょう?私たち魔王軍にとっても優秀な医者や回復術士を回してくれているから、彼女の頼みは断れないのよ。それにあの子もすっかり困り果てていてね、まあ、女王としても医者としても人望があるし民を大切に思いやる姿勢は私も一目置いているのよ」
ベリス姉さまの話によると、スピタルは【セブンズヘブンの最後の希望】と呼ばれている国で、何と国全体が巨大な病院や医学、医療専門の研究所が置かれている世界有数の医療大国なのだ。どんな病気や怪我でも治すことが出来る医学に精通した超一流の医者や回復術士が集まっており、世界中の医者を目指している人たちにとっては憧れの象徴と言われている。
「オレたちが定期的に購入している傷薬や毒消しとかもそこから仕入れているんだよな」
「アレクシアの回復魔法や治療魔法ならすぐにでも回復できるが、魔法だけに頼っていると身体が魔法の効果に慣れてしまい治癒の効果が薄れていくからな。全てにおいて魔法だけを頼ればいいというものではない」
「それに、緊急時にすぐにでも治療が出来る薬や医療品は必要不可欠だからね。備えあれば患いなしさ」
「・・・・・・それならコイツを今すぐにでもスピタルの精神病院にぶち込めば、この色ボケが治るかもしれない」
「「「それは無理。コイツのスケベとバカは死んでも治らない」」」
大アネキ、アイリスお姉ちゃん、グリゼルダさんの声が綺麗に揃った。
「・・・フッ、みんな、ボクのことをよく分かっているじゃないか・・・グスンッ」
あーあ、ヴィルヘルミーナさんがすっかり落ち込んじゃったじゃないか。
部屋の隅に体育館座りをして、へのへのもへじを書きだしちゃってる。
「まあ、それで話によるとだ。スピタルで調合している傷薬や毒消しの材料となる薬草を【シャルトリューズの森】の中にある薬草園で育てているんだけど、シャルトリューズの森全体に最近不気味な霧が一日中発生するようになったのよ。それで、薬草を採りにいった庭師がそのまま行方不明になった。その霧を調べてみたら、どうやら森の奥で何者かが魔力で霧を作り出していることが分かったわ」
「シャルトリューズの森全体にかかる霧ですって?大陸の3分の1を覆い尽くすほどの巨大な森ですよ?」
「一度その霧に飲まれたら、方向感覚をあっという間に失って、森の中を永遠に彷徨い続けることになる。強力な魔力を持つ何者かが森の奥に魔法陣を敷いて、そこを中心に森全体に霧がかかっていることが判明したわ」
「なるほどな。そんな霧が発生していたら安心して薬草を手に入れることも出来ねえよな」
「問題はあれほどの広い森全体に、そのような霧を仕掛けられるほどの強力な魔法能力を持っているヤツが相手になるとして、どう対策を取るかだな」
「ああ、巷では森の中で迷って飢え死にした旅人の幽霊が、道連れを求めて生きている人間を襲うなんて言う噂まで広まっている。まあ、あそこは遭難者や自殺の名所としても結構有名な場所だからそういう噂が広まっているんだろうけどね」
「ああ、そういえばそういう話をしていると、向こうからやってくるって聞いたことがあるねえ。・・・そう、例えばアイリス君の後ろとか!!」
バッ!!←アイリスお姉ちゃんがテーブルの下にスライディング土下座も真っ青な速さで潜り込んだ音。
ドカン!!パラパラ・・・。←グリゼルダさんが天井に上半身を突っ込んで下半身だけがぶら下がってジタバタしている。穴が空いた天井から破片がパラパラと落ちる音。
えっ、何この状況!?
普段から壊れているというか、常軌を逸脱している行動ばかりしているアイリスお姉ちゃんならまだしも、グリゼルダさんまでどうしてそんな普段なら絶対にやらないようなバカなことをしているの!?
「ああ、そういえばお前たちオバケ全然ダメだったよな」
「な、な、何を言っているのだ、レベッカ。私はオバケなど怖くはない。そうだ、今、ここにトーマがスケスケのピンクのキャミソール姿で私を誘惑していたのが見えたのだ。桃色の楽園が広がっていただけだ。別にオバケなど怖くはない!!」
「そ、そ、そうよ。私だってオバケなんて怖くないわよっ!!今ここに、幻の黄金の国ジパングが見えたからそこにワープできるかと思って飛び込んだだけよ!!」
「・・・・・・ビビってるだけじゃん」
「普段は冷静沈着でクールなアイリス君とグリゼルダ君がここまで取り乱すとはね。いやあ、これはいいものを見せてもらえたよ。グリゼルダ君、今日は純白の紐パンなんだね!これは実に素晴らしい・・・」
「死ねぇぇぇっ!!この色ボケェェェッ!!」
ゴシャアアアアアアッ!!
「ごぺぱぁぁぁぁぁぁっ!!」
うわあ、グリゼルダさんの飛び蹴りがヴィルヘルミーナさんの顔面にめり込んだ!!
ヴィルヘルミーナさんは鼻血を噴き出しながら、恍惚とした笑みを浮かべてそのまま倒れこんだ。そして倒れているヴィルヘルミーナさんを涙目になって真っ赤な顔でグリゼルダさんがゲシゲシゲシと踏みつけ、アイリスお姉ちゃんとなぜかビビ姉までが参加してもはやリンチになっている!?
「ベリス姉さま、隣のお部屋でお話を聞かせてもらってもいいですか?この状態じゃ、まともに話も聞けないみたいですし」
「・・・そうね、このバカ共よりもトーマちゃん一人に話を聞かせた方がずっとマシかもね」
-我も話を聞こう。シャルトリューズの森なら、少しは知っている。-
そういって、メイド服姿のユキちゃんもついてきてくれた。僕とおそろいで着てくれているけど、やはり男の子とは思えないほどに可愛い。うーん、フリフリのフリルとリボンがたくさんついている水色のエプロンドレスがすごく似合っている。
「うえっへっへっへ・・・、さーてと、バカなメスどもは放っておいて、あっちの部屋でお姉ちゃんとお話ししましょうか~♥トーマちゃん、ユキちゃん、ささ、こっちにおいで♥セリア、そのバカたちの顔に水でもぶっかけて目を覚ましてあげて。ちょっとやそっとでは死なないから、少しばかり本気でやってもいいわよ」
「かしこまりました」
僕たちがベリス姉さまに連れ出された後で、消防車の水流銃レベルの凄まじい水流をセリアさんが発動させて、なぜか巻き添えを食らった大アネキも含めた全員がブッ飛ばされて、お空の綺麗なお星さまになったというのは・・・言うまでもない。
「何でオレまでぇぇぇっ!!」
僕は両手を合わせて、瞳を閉じて祈りをささげた。
「皆さん、南無・・・」
ー我もやるか。バカたち、ナームー。-
今回もとんでもないことになりそうだ。
アイリス、グリゼルダは実は怪談話が大の苦手ということが判明。(レギオンの時は魔法生物と正体が判明していたから平気だった。正体不明の怪談や実体の掴めないオバケは苦手)
そして今日も今日とて脱線、暴走、破壊が日常茶飯事な【彩虹の戦乙女】の面々。
斗真とユキの気苦労は尽きることがありません。そして今回巻き添えを食らったレベッカに合掌。
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます!!
次回もよろしくお願いいたします。




