第二十四話「戦後報告~報酬品は意外なものでした!~」
本日二回目の投稿をいたします。
第二章、これで終了となります。
次回から幕話を挟んで、第三章に入ります。
どうぞよろしくお願いいたします。
古代図書館の騒動からちょうど一週間後のことだった。
拠点の屋敷で待機をするようにとベリス姉さまから命令を受けていた僕たちは、ハニーベルから離れてベリス姉さまからの連絡を待つことになった。
そして、一週間後。
約束通り、ベリス姉さまと付き人のセリアさんがやってきた。
「まずはお前たちのこの度の活躍は実に見事だった。私が望んだ以上の結果をもたらしてくれたおかげで、邪眼一族に魔導書や禁書を横流ししていたカグラの王族や神官をまとめて粛清することが出来た。感謝する」
そういって、ベリス姉さまは頭を下げた。
「あのカグラって国、相当メチャクチャなことをやっていたんだな。隣国が所有している図書館から魔導書や禁書をちょろまかして売り飛ばすわ、邪眼一族の息がかかった呪術士や魔導師に横流ししていたなんてな」
「そんなことをすれば、邪眼一族の力を利用してドランブイどころか、世界を我が物にしようと目論んでいると思われても致し方がないことだろう。まあ、そこまで事の重大さを理解していなかったカグラ国王や国王の暴走を止めなかった王族、貴族にも責任はあるだろう」
セリアさんの説明によると、カグラ国王がここまでメチャクチャなことをやらかした理由は、領土の広さと軍事力に関してなら自分たちの方が上回っているにもかかわらず、北国でも一番と言われている巨大な港を持ち、交易の中心地となっているハニーベルがドランブイで一番の大国と言われているのが気に入らなかったかららしい。
世界中の魔導師たちの憧れの地としても有名だった古代図書館も所有権はハニーベルにあるため、隣国との親交の一環としてカグラの神官が働くことになっても、自分たちはあくまでもハニーベルに雇われているだけに過ぎないと思っていたため、ずっと不満を抱いていたそうだ。
そして、それは先代の国王がそもそもの始まりだったらしい。
カグラの方が領土にも軍事的にも恵まれているはずなのに、なぜか人気がないことを憂い。隣国のハニーベルに劣等感を抱き、嫉妬に駆られてハニーベルに嫌がらせをしてやろうと思いついたのが、古代図書館から魔導書や禁書を横流しして大金を稼いでやろうというあまりにも情けない報復・・・ともいえない、正直子供の嫌がらせにしか思えない行為であった。そもそも人気がない理由なんて、王族や貴族が私腹を肥やすために重税は課すわ、不正はやりまくりだわ、農民や貧しい人々ばかりに負担を強いるような生活を送らせて、明日食べる食べ物にも困るような状況に追い込んでおいて人気が出るわけないだろう。
そして、長年続いてきたこの嫌がらせの結果が、今回の大事件にまで発展してしまったのだという。
カグラ、マジで終わっているだろう・・・!
国王はもちろんだけど、王族や神官が二代にも渡って王の暴走を止めることが出来ないバカしかいないって、よく今日まで国として成り立ってきたものだと思う。
「封印された魔導書や禁書がどれほど危険なものなのか、カグラの国王や王族、神官はまるで理解していなかったのですよ。先代の国王は後継者となる現在の国王に対して、ハニーベルはいずれ自分たちのものとなる国だから、そのための裏工作は自分が倒れて王位を退いても続けるようにと言いつけてきたそうです」
「諫めるヤツ、一人もいなかったのかよ・・・」
「いたとしても、邪魔者として排除されたのだろうな。何せ今度の事件の黒幕が、国の最高責任者なわけだしな」
「そんな嫌がらせをする暇があったら、自分の国が世界中から認められるような政策を思いつくなり、都市の開発とか農地の開拓やら色々と方法があるでしょうが・・・」
「まあ、嫉妬に狂ってやっていいことと悪いことの区別すらつかなくなるようなバカなヤツが国王になっちまったうえに、後継者に自分の憎しみを植え付けて洗脳してきた結果がこれだ。カグラの国王と王族は一族郎党処刑が決まった。そして、領地や資産は全てハニーベルに没収されて、ハニーベルと合併する形で吸収されて、カグラ王国は消滅することになったというわけ」
幸い、領民はハニーベルが受け入れるということになり、こんなバカな国王や王族に対して愛想を尽かした領民は喜んでハニーベルの申し出を快く受け入れた。何でも貴族たちが私腹を肥やすために設けた重税やら、貴族ばかりが優遇される国の制度に我慢の限界を迎えるまでに追い詰められていたこともあってか、カグラが滅ぶことになっても悲しむ人はほとんどいなかったそうな。
「カグラの第二王子とクロスの第三王女が婚約を交わし、クロスとのつながりが出来たことでカグラの増長は留まることを知らず、例え自分たちの悪事がバレたとしてもクロスもそのような国と友好を結んだことを非難されることを恐れて、きっと自分たちをかばうだろうと思っていたそうです。ところがその矢先に王女とバイロンが禁断の恋に落ちて、駆け落ちをしたことで婚約は破棄された。そして、古代図書館で行われていた魔獣の蘇生実験や邪眼一族の呪術士を招き入れて禁書の手解きなどを教わっていたことも判明し、その証拠も手に入りました。クロスにも今度の一件においては重い罰を課せられることでしょう」
「クロスのダメージはデカいぞ?この間ブラオベーレの一件で世界中から冷たい目で見られていたのに、今度は古代図書館から禁書をちょろまかしていたカグラと裏で手を組んで手助けをしていたことや、炎の勇者によるハニーベルの王宮への殴り込みや王国騎士の殺害、さらにはイレーネ王女まで手にかけたのだからな。自国の王女でさえもイライラするという理由で切り殺すようなキチガイなんかを勇者として認めることなど出来るものか。それは彼女と同じクロスの勇者と名乗る残りの3人にも同じことが言えるがな」
つまり、桜たちの肩身はとんでもなく狭いものになったってことか・・・。
もはやここまで来たら、針の筵としか言いようがない。
「まあ、そうなるとクロスも焦って他国からの信用を取り戻すためになりふり構わなくなるでしょうね。そういう時に、クロスに協力を申し出てくる国があったらきっとその国はろくでもないことを考えているだろうし」
「・・・まあ、それで、アイスキマイラの処遇に関してなんだけど・・・」
そういって、ベリス姉さまは僕の隣に座っているユキをじっと見つめる。
「魔獣であるアイスキマイラは邪気によって操られていた。しかし、かつては大陸を支配していた凶暴な魔獣だったことも確かで、このまま野放しにはしておくことは出来ないと判断したわ。したがって、アイスキマイラの処分はどうしても覆すことは出来なかったわ」
-そうか。それは妥当だろうな。-
「待ってください!!それは、ユキを・・・処分するということですか!?それは絶対に認めることは出来ません!!」
僕は相手がベリス姉さまであることも忘れて、思わず彼女に怒鳴りつけていた。
ベリス姉さまはギンっと心臓をわしづかみにするような冷たい光を宿した瞳で、僕のことを睨みつけてくる。例え、ここでクビを言い渡されても、殺されることになっても、ユキを消すことなんて絶対に許さない!!
「・・・魔獣を救うですって?それは、炎の勇者を殺した時よりも覚悟が必要なのよ。大義を見失えば自分が守りたいものも守れなくなるわよ。トーマちゃん、貴方にその覚悟があるっていうの?」
「・・・この子は僕が守る。そう決めたんだ。大陸の支配者だか何だか知らないけど、何があっても僕が最後まで面倒を見る。そう約束したんだ。一度拾った手はもう絶対に手放さない!!」
「・・・この私にそこまで言い切った以上、覚悟は出来ているのよね?」
「・・・ユキだけは絶対に渡せません!!」
沈黙が続く。
すると、そこでベリス姉さまがふうっと深くため息をついた。
「・・・はぁ~、やっぱりもう無理だわ。これ以上、この子に睨まれ続けていたら私もう精神が限界を迎えそうよ。可愛い弟に睨まれると、お姉さんのガラスのハートはもう粉々に砕けちゃいそうなの。セリア、これでいい?これ以上やったら私が泣くからな?」
「・・・ベアトリクス様、どうか最後まで威厳を保ってください。トーマ様にアイスキマイラを任せると言い出したのは、貴方でしょう」
セリアさんが疲れ切ったようにため息をつくと、ベリス姉さまは目に涙を浮かべて指をモジモジさせながら口をとがらせる。
「あのね、お姉さんっていうのは仕事には厳しいけどね、自分が心底可愛がっている弟に便宜上厳しく接さなくちゃいけないっていうのはね、ものすごく堪えるのよ。私が「いいよ」の一言であっさりと片付くはずなのに、トーマちゃんに魔獣と契約を交わすということがどれほどの覚悟があることか教えなくちゃいけないかってことがどれほど辛いと思っているのよ。これで『ベリス姉さまなんか大嫌い!』なんて言われたら、私今すぐにそこの崖から身を投げるからね?」
「・・・なるほど。ユキに対しても、トーマが身体を張って守ると言う行動を見せることで、トーマは何があっても絶対に裏切らないって言うことを伝えたかったのね」
え・・・?
そ、そうだったの?僕は思わず口を開いたまま、その場に座り込んでしまった。身体から力が抜けて、今更身体が震えてきている・・・!!
「・・・まさか、ベアトリクス様に正面からにらまれても一歩も引かないとはね」
「私もさすがに腰を抜かしそうになったぞ。だが、お前の覚悟をお前自身が見せなければ意味がないと思って、見ているしかなかったのだがな」
「・・・・・・だから団長がさっきからずっと黙って見ていた」
「ああ、これに関してはトーマが答えを自分で出さなければ意味がねえからな」
ベリス姉さまは僕を抱き上げると、僕の額をこつんと拳骨で小突いた。
「・・・大陸を支配していた魔獣アイスキマイラは爆発に巻き込まれて消滅した。ここにいるのは、新しく雇った使用人『ユキ』ということで【彩虹の戦乙女】の一員としてこれから働いてもらうことにするってことで、いいかしら?」
「使用人か。それなら悪くはないな。しかし、もしこのことを遠視の魔法などで見ているものがいたらどうするおつもりですか?」
「心配ないわよ。私も一部始終を遠視の魔法で見ていたけど、まさかこんな小さな子がアイスキマイラとは誰も思わないし、魔力の大部分を失って今ではそこらへんにいる獣人や亜人種と同じ強さしかないから、もしそこでつつかれても彼が危害を加えると言う心配はないわ。それでも何か言ってくるなら・・・魔王軍に喧嘩を売るっていうならいつでも買ってあげるわよ。そして、全力で潰してあげる。私の身内に手を出すって言うなら徹底的に相手になってあげるわ」
「相変わらずメチャクチャだねえ。でも、そういう豪快な所は好きだよ、お姉さま」
「ああ、それとハニーベルからお礼ということで、国の特産品が届いているわよ。今後は定期的にブラオベーレとこの屋敷に届けてくれるってさ」
「・・・まさかの無視ですか。ボク、泣いちゃうぞ」
「・・・あ、ありがとうございます!!本当に、ありがとうございます!!」
僕は涙があふれそうになるが必死に抑えて、その場で土下座をしてベリス姉さまにお礼を言った。
すると、後ろでユキちゃんが僕の服を引っ張っていた。
-我のことを、そこまで思ってくれていたのか。我は、お前を唯一無二の主として仕えることを誓おう。トーマ、我は嬉しい。我を受け入れてくれたこと、心から感謝する。・・・何だ、これは何だ。目からさっきからあふれて、止まらない・・・。熱くて、込み上がってくるこれは・・・何だ?-
ユキちゃんは目から涙をぽろぽろとこぼして、僕に抱き着いて身体を震わせながら泣き出した。
きっと生まれて初めて流す【涙】に戸惑い、抑えきれない感情に困惑しているのだろう。
僕は彼の小さな身体を抱きしめた。
安心していいよ。君のそばには僕がいるから。
レベッカさんたちも安心したのか、優しく微笑んでいた。
「・・・・・・ところで、報酬って何?」
「・・・可愛い男の娘が二人で抱き合って・・・ぐへへ、こりゃたまらん画ですな♥」
「あの、ベアトリクス様?今、何かものすごくゲスい顔で変なことをおっしゃっていませんでしたか?」
「何のことかしら。ああ、報酬のことね。ハニーベルの特産品らしいんだけど【リース】っていう穀物なのよ。ほら、デザートとかで甘く煮る穀物があるでしょう?」
そういって、魔族の従者の人たちが抱えて持ってきたのは、何と藁を編んで作られた【米俵】だった。
「ああ、あれですか。そのほかにはダンシャクの実にポワロ、カロット・・・雪国ならではの野菜ですね」
ちょっと待って・・・!
僕ははやる気持ちを抑えて、米俵を開くとそこには・・・つやつやに光る真っ白な宝石があった!!
「お米だぁぁぁーーーっ!!この世界にも、お米があったんですか!?」
「へっ!?り、リースのこと?」
「僕たちの世界にもこれと似たようなもので、米と呼ばれるものがあるんです!!」
一粒噛んでみると、普通の生米よりも味が甘いような気がする。でも、もしかすると・・・!!
「あの、これと同じもので、味が薄いものとかありますか?」
「味が薄いもの?ああ、それならドランブイのどこでも安く買えるわよ?ドランブイの数少ない特産品だから」
「もしよければ、その味が薄いものを定期的に送ってもらってもよろしいでしょうか!?」
「せ、セリア、出来るかしら?」
「ええ、それは可能ですが、それでよろしいのでしょうか?それって、確か家畜の飼料になっていたような気もしますが」
「是非ともよろしくお願いいたします!!」
よっしゃあーーーっ!異世界の地でついに、お米様と再会できるとは思わなかった!!
神様仏様、ありがとうございますっ!!今まで人をこんな目に遭わせやがってとか色々と文句を言いましたが、全て撤回いたします!!
「ず、随分と嬉しそうだけど、そっちのほうがいいのかい?」
「そりゃそうですよ。僕たち日本人って言うのは、米のためなら打ちこわしも戦争も辞さない、米に命を懸けていると言っても過言ではない種族なんですから!!」
「打ちこわし!?戦争!?アンタたちが住んでいた世界の人間ってどれだけ物騒なのよ!?」
グリゼルダさんがツッコミを入れるが、僕は気にしない。
お米は手に入るし、アイスキマイラのユキちゃんが仲間になるし、今回は大成功だ!!
「ユキちゃん、あとで晩御飯にご飯を炊くから手伝ってもらってもいい?今日はご馳走を作るよ!」
-承知した。ふふふ、楽しみだな。-
ユキちゃんはそういって、見惚れるような笑顔で笑った。
【彩虹の戦乙女】に新しい仲間【ユキ】が入りました。ポジションは屋敷で斗真と一緒に中mたちの身の回りの世話をする【使用人】となります。まだ人間らしい感情に乏しいですが、斗真に対しては絶対的な忠誠を誓い、甘えん坊な一面を見せる猫耳男の娘キャラを登場させました。
そして、異世界でお米を定期的に手に入れるルートも手に入り、今後は米を使った異世界料理も披露していきます。
次回はギャグ多めの番外編を書きます!
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます!!




