第二十三話「邪眼王動く~ヤバい幼女魔王に目をつけられた~」
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魔界。
魔族や魔物が跳梁跋扈する、人間たちが住まう人間界とは異なる世界。
果てしなく広いこの世界は、4人の【魔王】と呼ばれる魔族の当主が治める4つの勢力に分かれていた。
【魔王軍】の最高責任者にして、魔界と人間界における調和と均衡を保つ二つの世界を跨ぐ巨大な治安組織を持つ【ベレト家】当主の【ベアトリクス・フォン・ベレト】。
【万魔殿】を根城とする魔物化した神族、堕天使が集まって生み出された国家【タルタロス】を治めている【ベリアル家】当主の【バルバラ・フォン・ベリアル】。
【不死者の国】と呼ばれている、アンデッド型の魔物達が多く集まり、闇夜が明ける事の無い暗黒の国【ホーンテッド】を治めている【ビフロンス家】当主の【ベルナデッダ・フォン・ビフロンス】。
そして・・・。
邪神を崇拝し、邪神と契約を交わしたことによって先祖代々より魔族にはない強力な身体能力と特殊能力を持つが、残虐的かつ好戦的な気性を持つ【邪眼族】が治める【暗黒の国ザラム】を支配する【ヴィネ家】当主の【ヴェロニカ・フォン・ヴィネ】である。
一見童女のようにしか見えない愛くるしい姿とは裏腹に、全身から低級の魔族であれば一瞬で心臓の鼓動を止めてしまうほどの圧倒的な威圧と殺意を放ち、玉座に鎮座している姿からは王としての風格と威厳を感じさせる。艶やかな黒髪を、血のように赤く、禍々しい光の環が瞳の奥に宿している【邪眼】に見た目よりも艶めかしく見える大胆なデザインの赤色と黒色を基調とするドレスに身を包んでいるこの少女こそがヴェロニカだった。
「・・・なかなかのものであるな。久しぶりに大変面白い余興を見せてもらったわ」
そういって、ヴェロニカは目の前に浮かんでいる巨大な水の玉に映し出されている映像を見ながら、不敵な笑みを浮かべて手を叩いた。水の玉に映っていたのは、崩壊が始まった図書館から脱出を試みる斗真たちの姿であった。
「・・・魔法裁縫師か。随分と前に聞かなくなったが、まさか異世界から召喚された人間の中からそのスキルの適合者が出てくるとはな。しかも、二人もだ」
『だああああああーーーっ!!死ぬ!死ぬ!急がなくちゃマジで死ぬーーーっ!!ユキちゃん、しっかり僕に捕まっていてね!!』
『トーマ、お前、アイスキマイラを連れてきてしまったのか!?』
『だってもうすぐここ爆発しちゃうんでしょう!?置いていくわけにはいかないですよ!!』
『で、でも、その子、一応この大陸を支配していた危険な魔獣なんじゃ・・・』
『僕が全責任を持って、この子を連れて行きますっ!!ちゃんと面倒を見ます!!』
「・・・しかも、あの伝説の魔獣の一体に数えられていた【アイスキマイラ】にかかっていた邪気を払い、契約を結ぶとはな。くくく・・・いや、こんなにも興奮したのは何百年ぶりになるかのう。実に愉快じゃ。このトーマとか言うおなご、妾をここまで楽しませてくれるとは大したものじゃ。くくく・・・ふふふ・・・ふはははははは!!」
お腹を抱えて心底楽しそうに笑い転げているヴェロニカの姿に、ザラムの守護神とも呼ばれている魔界でも五本の指に入る高い知能と身体能力、強力な魔法能力を持つ最強の戦士であり、邪眼族の中から選び抜かれた4人の最高幹部【四凶】の4人は全員驚いた。
-約束、しよう。我、もう人間は、襲わない。マスターと約束した。-
『え?あ、マスターって、もしかして・・・僕のこと?』
-ああ。そう呼んでも、いいか?我は、マスターと契約を交わした。我は、この契約が破棄されない限りは、マスターの命令に従う。-
『トーマでいいよ。それじゃ、僕は【ユキ】って呼んでもいいかな?その髪の毛、雪みたいに真っ白で、ふわふわしていて、綺麗だからいいかなって思って』
-・・・ユキ、か。それが、我の名前。悪くはない。むしろ、嬉しいかもな。そうか、今日から我はユキか。よろしく頼むぞ、トーマ。-
『うん、よろしくね!』
そう言って笑いあう斗真とユキの胸には、虹色の光を放つ紋様が浮かび上がっていた。これは魔獣と心を通わせて、魔獣が絶対的な主と認めた契約者に忠誠を誓った証である。
「・・・詠唱もなしで、S級ランクの魔獣と心を通わせて契約を結んだだと?」
「ああ。しかし、このおなごは魔獣と契約を交わしたという自覚もなければ、そのようなスキルを持っていることにも気づいていないようじゃな」
「・・・無自覚でそんな大それたことをやってのけたというのですか?」
「それってもしかしてものすごいバカなんじゃねえのか?」
「しかし、それはそれで油断できないな」
「そうだろう?ベアトリクスもなかなかの逸材を手に入れたものよ。じゃが、妾は他人がいいものを持っていると、どうしても手に入れたくなる主義での。ましてや、あの気に入らぬ年増女のものかと思えばなおさら欲しくなる。それに、まだ能力には目覚めていないが、クロスに召喚されたもう一人の魔法裁縫師も欲しいのぉ。名は確か”サクラ”とか言ったか」
ヴェロニカが手を水の玉にかざすと、映像が変わって、桜の映像が映し出された。
「まだ能力は目覚めてはおらぬが、竜装備を作り出すことが出来る専門の【仕立職人】を引き込むことが出来れば、妾たちの全世界征服の悲願にまた一歩近づくことであろう。・・・久しぶりに妾の退屈を紛らわしてくれる面白い奴らが出てきてくれたものじゃ。コイツらが今後どのような能力に目覚めていくのか楽しみじゃ。そこでだ、四凶よ。お主たちにこれから人間界侵略に向けて本格的に動き出してもらう時が来たぞ」
ヴェロニカの瞳が赤く光ると、水の玉に浮かび上がった【セブンズヘブン】の大陸図が浮かび上がり、4つの光が【橙の大陸コアントロー】の【グラン・マルニエ砂漠】、【赤の大陸シャンヴォール】の【キール火山】、【緑の大陸バーディネ】の【シャルトリューズの森】、【紫の大陸パルフェ・タムール】の【グレナデン山岳地帯】に浮かび上がった。
「・・・お主たちの能力を最大限に引き出せる禁書がこの地に流れ着いていることが判明した。カグラの愚かな神官たちが私腹を肥やすために魔法図書館から横流ししてきた本の中に、よもやお主たちの力を覚醒させる力を秘めた禁書があるとは夢にも思っていなかっただろうな。そこでだ、今からお前たちにはそれぞれの大陸に向かい、この禁書を手に入れてその力を身に着けるのだ。そして、お主たちの身体に眠る潜在能力を覚醒した暁には、人間界に宣戦布告を発して、魔界も人間界も妾たちが手に入れる」
「おおっ・・・!ついに、人間界侵略に乗り出すのですな!!」
「へへへっ、腕が鳴るぜ!派手に暴れてやろうじゃねえか!!」
「クロスの勇者たちはいかがいたしますか?」
「あん?そんな雑魚など知らん。最初から興味などないしな。まあ、クロスはいい加減目障りになってきたから、適当に頃合いを見計らって潰すとしようか。今はそんなことよりも、人間界征服に向けて準備を整えることが先決じゃ」
「・・・まずは【金剛の饕餮】、お主は【グラン・マルニエ砂漠】の【地下神殿】に流れ着いた【不死の禁書・ネクロノミコン】を手に入れよ」
「・・・御意・・・!」
「次に【狂風の窮奇】、お主は【紫の大陸パルフェ・タムール】の【グレナデン山岳地帯】に流れ着いた【風神の禁書・ハストゥール】を手に入れよ」
「お任せあれ!ちょっとばかし派手に暴れても、構わねえよな?魔王様!」
「・・・ああ、構わんぞ。そして【激流の渾沌】、お主は【緑の大陸バーディネ】の【シャルトリューズの森】に流れた【深海の禁書・ハイドラ】を手に入れよ」
「お任せ下さいませ、ヴェロニカ陛下。必ずやその任務、果たして見せましょう」
「そして【煉獄の橈骨】、お主は【赤の大陸シャンヴォール】の【キール火山】に流れた【獄炎の禁書・クトゥグア】を手に入れるのだ」
「・・・かしこまりました!」
暗がりの中で、四体の凶暴な獣の瞳に炎が宿り、激しく燃え上がった。
ヴェロニカが合図をすると、四凶はすでに姿を消していた。ヴェロニカは一人、血のように赤いワインを優雅に一口飲むと、再び斗真たちがいる古代図書館に映像を戻す。
魔導列車が走り出した後で目のくらむような閃光を放ち、古代図書館の建物から巨大な炎が噴き出して爆発を何度も起こし、黒い煙に覆われて見えなくなった。そして、傍らに置いてあった水晶玉の中で黒く揺らめく炎のようなものを見ながら、にやぁっと悪魔のような笑みを浮かべた。
「・・・面白くなってきたのぉ。なあ、お主もそうは思わないか?炎の勇者だったものよ。・・・お主にも我が忠実なる配下としていま一度命を与えてやろう。そして復活した暁には、我の手足となって働くのだ。もし妾の言うことを素直に聞くのであれば・・・もう一度あのトーマとかいうおなごと戦わせてやっても良いぞ?」
その言葉を聞いて、雁野美月の魂は水晶玉の中で激しく燃え上がった。それを見て、ヴェロニカは椅子から下りると部屋を出て行った。
「くくく・・・ふはは・・・ふはははははは!楽しくなってきたわい。妾が柄にもなく興奮するとはなぁ。さあ、楽しませてもらおうではないか。異世界からやってきた魔法裁縫師に、最凶最悪の悪名を持つ傭兵団よ・・・!」
魔王城の中に、何百年かぶりに主の心底楽しそうな笑い声が響き渡り、それを聞いた魔族たちは自分たちの血が高揚していくのを感じた。
今回第三勢力となる【魔王軍】と敵対する【邪眼一族】を出してみましたがいかがでしたか?
クロス王国と【邪眼一族】、この二つの勢力が斗真たちの敵となり、さらには世界を征服しようとする組織図となっております。次回、第二章完結です。
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます!!
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