表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/300

第二十一話「古代図書館の戦い⑤~人面獣心の女勇者の末路~」

いつも拙作を読んでいただき、本当にありがとうございます!今年最後の投稿になります。今年一年本当にお世話になりました。来年もどうぞよろしくお願いいたします。

 「はあああっ!!」


 「だあああっ!!」


 風を纏ったカットラスと、雁野が振るう炎を纏った刀が激しくぶつかり合う!

 一瞬でもスキが出来たら、相手はすかさず僕の急所目掛けて攻撃を仕掛けてくるだろう。


 しかし、最初に戦った時と比べると、雁野の動きにキレがないような気がする。


 斬撃も、気迫も、そしてあの時感じていた狂気さえもどこか色あせて見える。


 その原因は、何となくだけど僕にはわかったような気がする。


 「もうお前の動きは、見切った!!」


 「何ですって!?」


 雁野が振り下ろしてきた刀の一閃を、ギリギリでかわしてそのまま彼女がこっちに向かってくる勢いを利用して、カットラスの刃の先端を突き出して、雁野のアーマーに渾身の突きを繰り出した!


 ゴキッ・・・!!


 「なっ・・・!?ど、どうして・・・!?」


 雁野の目が大きく見開かれて、骨が折れるような鈍い音が聞こえた。


 「貪狼ドゥーベ!!」


 ドガァン!!


 雁野の右肩にカットラスの刃を叩きつけて、痛みでよろけたところで彼女の後ろに回り、振り返る前に今度は腰に刃を叩きつける!!


 「巨門メラク!!」


 ドガァン!!


 「ひぎぃっ!?」


 「禄存フェクダ!!」


 ゴシャッ!!


 「文曲メグレズ!!」


 ザシュッ!!


 「廉貞アリオト!!」


 ドカァン!!


 そのまま彼女の身体を回り込むようにして、肋骨の上部分に向かって刀を突き出して刃をめり込ませて、その反動でしゃがみながら回り込んで、彼女の左太ももを斬りつける!!さらに、よろめいたところで、胸部を覆っているアーマーに向かって逆刃の状態で叩きつける!!


 「武曲ミザール!!」


 そして雁野のすねに刃を叩きつけると、雁野の表情が苦痛に歪んで刀を手放した。

 カランカラン、と音を立てて炎に包まれた刀が地面に落ちる。


 「・・・破軍ベネトナシュ!!北斗七星、風魔法、暴風の円舞曲(サイクロン・ワルツ)!!」


 ビュオオオオオオッ!!


 荒れ狂う風を刃に集中させて、一気に横なぎに雁野の身体に叩きつけた!!


 「きゃあああああああああーーーっ!!!」


 雁野の身体が宙に舞い、回転しながら風に吹き飛ばされて、壁に思い切り全身を叩きつけられた。

 壁にめり込み、彼女が白目をむいて口から大量の血液を吐き出した。


 「・・・ごほっ・・・ひひっ・・・楽しくなってきた・・・わぁ・・・!」


 もう動けないはずなのに、彼女は狂ったように笑って、息を切らしながらふらふらと立ち上がろうとする。しかし、震える足はもう言うことを聞かない。さっきの打撃で関節がイカれたからだ。


 「・・・やる・・・わねぇ・・・ひゅー・・・ひゅー・・・これ・・・私・・・死ぬの・・・かしらぁ?」


 「そうだろうね」


 「・・・やっぱり・・・貴方は・・・最高にイカレているわ・・・あの時よりもさらに・・・冷酷さを増している・・・まともなふりをして・・・そんな狂気を隠し持っているんですもの・・・ごほごほっ!」


 「・・・あの人たちと一緒に戦っていけるなら、いくらでも狂ってやるよ。僕は【彩虹の戦乙女(グラン・シャリオ)】の梶斗真だ。目の前の敵を倒せないような腰抜けなんて、あそこにはいられない。一つだけ感謝しないとね。君のおかげで敵を倒す覚悟が出来た」


 感情の荒れ狂うままに暴れていたあの時とは違う、ずっと一緒にいたいと思える人たちといるために、大好きな人たちと過ごしていきたいから戦うという覚悟を決めた。


 「僕はお前のことなんか、大嫌いだ」


 「・・・おかしいわね・・・お母さんは・・・お父さんを捨てて・・・違う男の人を殺して・・・自分も一緒に死んで・・・永遠に愛し合うことが出来たのに・・・それが人を愛することじゃ・・・なかったの・・・?」


 うわごとのように、雁野が今にも消えそうな声で何かをつぶやきだした。


 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


 雁野美月の狂気を芽生えさせた原因は、彼女が5歳の時に目撃してしまった実の母親と不倫相手の無理心中だった。まだ普通の人間としての感覚を芽生え始めていた時、美月の母親は不貞を働き、その事を夫に責められて離婚を言い渡されていた。母親は望むところだと言わんばかりに、まだ幼い美月を押し付けて家を出ていき、父親はその後すぐに子持ちの女性と再婚をした。その女性と美月の姉に当たる少女こそが、美月が9歳の時に殺害した義理の母親と姉であった。


 しかし、多額の慰謝料を払うことを拒んだ浮気相手は母親の前から姿を消した。


 ただの遊びでしかなかった美月の母親の為に、莫大な金額の慰謝料を払うなどバカげていると思ったのだ。冷たく突き放された母親は気が狂い、雲隠れした浮気相手の居場所を自力で探し出して、彼の住んでいるアパートを突き止めてしまった。


 この時、母親が鬼のような形相を浮かべて、手に包丁を持ちながらケタケタとガイコツのように笑っている恐ろしい様子を目の当たりにして、気になってついていったことが美月の心を壊し、狂気を芽生えさせる出来事になった。


笑いながら、一心不乱に好きだった浮気相手の胸に包丁を突き刺し続ける母親。身体中に血しぶきを浴びて、真っ赤になった母親は心底嬉しそうに笑い続けていた。


その光景の一部始終を、美月は見ていたのだ。


ーアハハハハハハハハハハハハ!!これで貴方の全ては私のもの!!もう誰にも渡さないわ!!私だけのもの!!アハハハハハハハハハハハハ!!ー


そして、美月に気づいた母親は、怖気がするような笑みを浮かべて、美月の目の前で自分の胸に包丁を突き立てて・・・息絶えたのだ。


ー美月、覚えて・・・おきなさい。これが、本当に人を愛するということ・・・愛する人の命を奪い、自分だけのものにする。誰にも渡さないためにも・・・ねぇ・・・幸せになるためなら・・・それを奪おうとするやつらは・・・殺しなさい。ー


母親はそう言い聞かせて、そのまま息絶えた。

美月の心に刻み込まれた呪い、自分だけが不幸なままでは終わらせない。実の娘にも地獄のような人生を送ってもらわなくては。美月の母親は娘の人生を道連れにして、地獄に落ちたのだ。


そして、悪意の種は宿り、美月が9歳を迎えた時に最悪な形で芽生えてしまった。


義母と義姉からの暴力、陰湿ないじめ、育児放棄。

父親からの虐待、自分を裏切った女の面影を持つ娘への理不尽な報復。


溜まりにたまった恨み、怒り、憎しみに駆られた美月は家族が寝ている隙を突いて、母親が浮気相手を殺した時と同じように包丁でめった刺しにした。


罪悪感はなかった。


なぜなら、母親がそれが幸せになるためには必要だと教えてくれたのだから。


無限に湧き上がる苛立ちを止めるためには、苛立たせる相手を消せばいい。それが、幸せになる方法なのだから。


そう、教えてくれたのだから。


大好きだった母親が。


★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


「・・・私は・・・間違ってない・・・ママぁ・・・そうでしょう?私は・・幸せに・・・なりたいだけ・・・幸せになるためには・・・人を殺せば・・・いいんでしょう・・・?」


何を言っているんだろう?

雁野は舌足らずな子供のような口調にかわり、虚ろな瞳ですがり付くように呟き続けている。


「・・・梶くん・・・貴方はやっぱり最高だわぁ・・・貴方に殺されるなんて・・・素晴らしい悪夢だわぁ・・・ひひひ・・・あれぇ・・・?おかしいなぁ・・・思っていたよりも全然満たされない・・・?あれ?あれ?あれれれれれれ?どうして?どうして満足出来ないの?」


雁野は訳が分からないのか、頭を両手で抑えてガクガクと震え出す。いや、僕に聞かれても分からないから、何て答えればいいのか分からないんだけど。


「・・・ねえ?どうして?何で私、空っぽの、ままなの?・・・ああ、そうか。梶くんを私が殺さないから、納得出来ないんだ。殺さなくちゃ。梶くんを殺せば・・・きっと分かることなんだ」


しかし、その願いは叶うことはない。


雁野は死ぬ。


身体から致死量は超える血液は流れ出ている。


目から光が消えていき、瞳孔が開いていく。


「・・・梶くん・・・殺すわ・・・例え地獄に落ちても・・・悪魔に魂を売り渡しても・・・私がいつか・・・必ず・・・殺しに・・・・・・あはは・・・あはは・・・・・・」


雁野の動きが止まり、糸の切れた人形のように崩れ落ちた。


脈はもうなかった。


雁野の開ききった瞳を掌で閉ざし、僕は酷く疲れきってしまい、深くため息をついた。身体中の力が抜けていくような錯覚を感じるが、倒れるわけにはいかない。


これで残りは、雨野、松本、そして桜だ。


それに、レベッカさんたちも今戦っているんだ。僕も戦わなくちゃ。身体に鞭を打って、頬を両手で叩いて気合いを入れ直すと僕はレベッカさんたちが戦っている方に向かって歩きだした。


もう迷わない。

弱気をもらしそうになる自分を奮い立たせて、僕は振り切るように走り出した。

雁野、不穏な言葉を残して退場・・・。

雁野が猟奇的な性格になったのは、両親や家庭環境のせいとはいえ、彼女自身にもそういった気質が生まれつき備わっていたものでした。


今年一年本当にお世話になりました!

来年もよろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ