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第二十話「古代図書館の戦い④~火に油を注ぐヤツって最後まで責任を取らないことが多い~」

いつも拙作を読んでいただき、ありがとうございます。

新作が描きあがりましたので、投稿いたします。

どうぞ、よろしくお願いいたします。

寒波がやってくるので、皆様、風邪などひかれないよう、お体ご自愛下さいませ。

 「・・・クロスの勇者様が、私に何かご用かね?それにしても、随分と派手に暴れてくれたものだ。勇者様、いかような理由で我が聖域に土足で踏み荒らしたのか、その理由をお聞かせいただきたい」


 「・・・私はね、いつも喉が渇いているのよ。貴方たちでも倒せば少しは満足できるかもしれない。まあ、梶くんに比べれば全然足りないけどね」


 「・・・失礼だが、何を言いたいのか分かりかねますな。これ以上派手に荒らされても困りますので、大人しくしていただきたい」


 慇懃な物腰でバイロン神官が答えると、雁野が何かを取り出してバイロン神官に向かって投げつけた。それはバスケットボールほどの大きさの丸みを帯びたものだった。それをバイロン神官が受け止めて見た瞬間、端正な顔立ちが一瞬凍り付き、目がこぼれ落ちそうになるほどに見開かれて、顔から一瞬で血の気が引いて真っ青になった。


 「・・・なっ・・・ひっ、ひぃぃぃぃぃぃっ!?こ、こ、これは、い、い、イレーネぇぇぇっ!?ぎゃああああああああああああーーーーーーっ!!」

 

 バイロン神官が気が狂ったように叫び出して、あまりのショックで腰を抜かしその場に座り込んで、目の前に転がっているものを見て、ガタガタと震えだした。


 「ああ、その女が最後に呼んでいたバイロンって貴方のことだったのね。愛する女の首をそんな床に落とすなんて随分ひどいんじゃない?」


 「ど、ど、どうして、イレーネを・・・!!お、お、お前がイレーネを殺したのかぁぁぁーーーっ!!なぜだっ、なぜだぁぁぁぁぁぁっ!!」


 「人がイラついている時に目の前に出てきた、その女が悪いわ」


 「そ、そ、そんな理由で・・・!?」


 「だったら何だというのよ?敵討ちでもする?このイライラが治まるなら相手は誰でもいいわ」


 そういって、雁野が冷たい笑みを浮かべて、炎に包まれた刀を構えて悠然と歩きだした。






 その瞬間、僕の頭の中でまるで糸の束が「ブチブチブチッ!!」と音を立てて切れた音がした。






 ガキィィィィィィーーーン!!


 「うおっ!?」


 部屋中に響き渡る、高い金属音。


 目の前には、炎を纏った刀で僕が繰り出した大剣の一撃を防いでいる雁野の姿があった。


 そのまま力任せに刀を弾き、大剣を振り回して雁野の首を狙って次々と斬撃を叩きつけていく。


 「・・・あれ、マジでトーマなのか・・・?あんなにブチ切れたトーマ、見たことねえぞ!?」


 「お前の大剣は大人が5人がかりでやっと持ち上げられるほどの重さだったはずだろうが。それと同じものをアイツは片手で振り回しているというのか!?」


 腕がミシミシと悲鳴を上げて、筋肉の繊維がブチブチと音を立てる。


 でも、不思議と痛みが感じない。


 ただ、目の前にいる雁野を、殺すことだけに全てを集中させているせいだろう。


 頭の中にキーンと静かに音が響き、思考がシンプルになっている。


 


 「・・・アハハハッ、梶くん!!すっごい目をしているわね。あの時、私が一瞬で心を奪われたその瞳・・・その殺気・・・すごくいいわ!!そんなあなたと戦えるのを楽しみにしていたのよぉぉぉっ!!」


 「・・・もう黙れよ。お前には教えてやるよ、地獄の門の叩き方ってヤツをな・・・!!」


 僕は懐から、紫色の宝箱を取り出した。

 それは、ヴィルヘルミーナさんが封印されていた魔石を加工して作った、新しいフォームの魔法闘衣が封印されているものだ。


 『バフォメット!!』


 「変身!!」


 『闘衣召喚!!バフォメット!!』


 僕の身体をバックルから解き放たれた紫色の風が渦を巻いて覆い尽くすと、いつもよりも豊満なおっぱいにキュッと引き締まった腰つき、丸みを帯びたお尻に吸い付くように紫色のチャイナドレスを着込み、その上からバフォメット族の象徴である【山羊】をイメージした紫色の甲冑を装備していく。


 髪の毛が腰まで伸びると、紫色の山羊の巻かれた角が飛び出して、手には湾曲した刃を持つカットラスと呼ばれる刀剣が握られていた。


 『暴風の無法者(アウトロー)!!バフォメット・ナイト・・・ドレスアップ!!』


 なるほど、これは白兵戦専用の魔法闘衣ってことだね。大剣よりもこっちの方が扱いやすくて、いいかもしれない。カットラスを握りしめて振るうと、全身に紫色の風がまるで僕の身体を守ってくれているようにまとわりついてくる。


 「・・・覚悟しなよ・・・ああ、覚悟なんてしなくてもいいか。覚悟なんて、普通の人間がするものだしね。・・・テメェはただのケダモノだよ。ケダモノに人の言葉も道理も通じねえか!」


 「・・・・ひひひっ、いいっ、その顔、すごくいいっ!!やっと会えた、あの時の血まみれの貴方にやっと会えたぁっ!!待ち望んでいたっ、ずっと、貴方とこうして殺し合いがしたかった!!さっきはとっさに逃げてしまったけど、もう今度は・・・どちらかが倒れるまで殺り合いましょうよ!!」


 うるさい。


 そう思った時には、もう僕は駆け出して雁野に向かってカットラスの刃を振り上げて、切っ先を彼女の首めがけて振り下ろしていた。


 ガキィィィン!!


 バチバチバチッ!!


 火花が迸り、ぶつかり合う金属音がけたたましく鳴り響く。


 もう、終わらせてやる。


 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


 斗真と美月の戦いが始まったころ、レベッカはテラスをふらふらとまるで幽鬼のようにおぼつかない足取りで歩いていくバイロンの姿を捕らえた。彼はイレーネの首を抱きかかえて、瞳を閉ざし、子守唄を歌うようにブツブツと話しかけていた。


 「・・・イレーネぇぇぇ・・・君がいないこの世界などぉぉぉ・・・私の手でメチャクチャにしてやるぅぅぅ・・・ひひひ・・・全部おしまいだぁぁぁ・・・」


 「おい、アイツ何をするつもりだ!?」


 「止めるぞ!!」


 レベッカたちが駆け出すが、彼は研究室の奥に置かれている巨大なビーカーの前に立つと、ビーカーについている装置をメチャクチャにいじり出した。そして最後には拳でキーボードを殴りつけると、ビーカーの中身がぼうっと光り出し、心臓の鼓動が聞こえてくる。光はどんどん強くなっていき、今にもビーカーの中から飛び出しそうになるほど膨らんでいく。


 「おい!何をしたんだ!?」


 「あひゃひゃひゃ・・・アイスキマイラを復活させたのさァ・・・もうこのドランブイを、いいや、セブンズヘブンの全てをコイツで氷漬けにしてやるぅぅぅ・・・ひひひひひひ!!イレーネのいないこの世界など、私の手で壊してやるんだぁぁぁっ!!あーっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ!!」


 バイロンは完全に壊れていた。

 そして、ビーカーにひびが入り、ボンッと音を立てて煙が噴き出した。


 「ちっ!!」


 アイリスがとっさに制御装置を操作して抑え込もうとするが、もはやビーカーは限界を迎えていた。


 「まずい、まだ覚醒しきっていない状態で解放してしまっている。もうこの装置では抑えきれない!」


 「つまり、もうやるしかないってことだね」


 「オッサンはちったぁ大人しくしてやがれ!!」


 レベッカが拳をバイロンのみぞおちにめり込ませると、バイロンは目を大きく見開いて狂気に歪んだ笑みを浮かべたまま倒れこんだ。


 「コイツの首を差し出さないとならんからな。拘束して、ビビたちの所に送り付けてやれ!」


 アイリスに言われてヴィルヘルミーナが転移魔法の魔法陣にがんじがらめに拘束して身動きが取れない状態にしたバイロンを転送した。


 そして、ビーカーがけたたましい音を立てて割れると、レベッカたちの目の前には部屋の天井にまで到達する、全長5メートルはある巨大な体躯を持つ異形が姿を現した。


 -グオオオオオオオオッ!!-


 -ギシャアアアアアアッ!!-


 ーグオォォォォォォンッ!!-


 -ウ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ンッ!!-


 透き通るように美しい水色のタテガミと体毛に覆われた巨大な獅子、その背中から巨大な翼を生やし、さらには雄々しき角を持つ山羊の首と竜の首が生えて、尻尾のように太い毒蛇が飛び出して壁は裂けよと言わんばかりの咆哮を上げた。


 「・・・これが古の時代に、ドランブイを支配していた伝説の魔獣、アイスキマイラ・・・!?」


 「あのさぁ、副隊長さん。これって、3人だけでどうにかなると思う?アルバイトを募集かけた方がよくないかい?」


 「こんな状況で来るヤツなどいるわけなかろう。レベッカ、行くぞ!!」


 「お前ら戦闘の配置に着け!!いいか、アイスキマイラを完全に倒すことだけに専念しろ!!そして、絶対に全員生き残れ!!」


 レベッカが鬼気迫る表情で指示を出すと、アイリスとヴィルヘルミーナも一瞬微笑み、そしてそれぞれの獲物を取り出して身構えた。


 「・・・トーマ、そっちのイカレた女は任せるぜ。こっちのデカブツはオレたちに任せておきな!」


 「・・・ふっ、大陸のかつての支配者が相手となると、血がたぎるねえ・・・!」


 「油断はするなよ!」


 アイスキマイラがこっちに目を向けた瞬間、レベッカは中央、アイリスは後ろに下がり、先陣を切ってヴィルヘルミーナがカットラスを抜いて駆け出した。巨大な獣が口を開き、無数の牙が生えている地獄の入り口が目の前に迫っていてもヴィルヘルミーナは臆することはなく、カットラスの刃に風を集めて、一気に突き出した。


 「・・・歌舞音曲、風魔法、暴風の槍(マーチ)!!」


 風がドリルのように渦を巻き、突きと同時に弾丸のように放たれて、アイスキマイラの口の中に飛び込んでいった。獅子の口の中を蹂躙し、喉を貫通して、肉を食い破る。アイスキマイラの獅子が絶叫を上げて苦しそうに表情を歪める。


 さらに山羊と竜が大きく口を開いて攻撃を仕掛けようとした時、すかさずアイリスが雷の矢を放った。


 ヒュンヒュンヒュンッ!!


 雷の矢は蛇と竜の口の中に飛び込むと、バチバチバチっと大きく音を立てて感電し、竜たちの動きが一瞬だけ停止する。


 「ふん、古代の支配者であっても、身体の中までは鍛えられんか。レベッカ、いけっ!!」


 「よっしゃあ!!」


 レベッカが飛び出すと、大剣から勢いよく炎を噴き出して、勢いよくキマイラの頭部めがけて刃を叩きつけた!!頭蓋骨がきしむ音、肉や体毛が焦げる悪臭が鼻をつき、アイスキマイラは身体から水蒸気のようなものを噴き出してズシンズシンとろくに身動きが取れない狭い部屋の中でのたうち回る。


 「もしかして、コイツの弱点って炎か?」


 「属性上ではな。だが、油断はするなよ。まだ覚醒していないとはいえ、相手はかつての大陸の支配者だからな!」


 「なるほどねぇ、それじゃこのまま一気にイケイケドンドンでやるしかなさそうだね」


 軽口を叩き合いながらも、3人は攻撃と防御、回避の手足を緩めることはない。

 素早く動いて大きな口を開き、毒液が滴る毒牙を突き立てようとする毒蛇の尻尾を薙ぎ払い、山羊が吐き出す氷の塊、そして同時に竜が大きく裂けた口から放つ電撃をかわしながら、急所である頭部を狙って攻撃の手は緩めない。


 何せこいつらのモットーは「先手必勝、生き残るためなら手段は選ぶな!勝てば官軍負ければ死体!」だの「売られた喧嘩は買います、相手が殲滅するまで!泣きを入れようが、許しを乞おうが、知ったこっちゃねえ!」という超物騒な思考の集団なのだから。


 復活した早々にレベッカたちに喧嘩を売った時点で、アイスキマイラは崖っぷちに立たされるという状況に追い込まれていた。頭がおかしくなった神官が無理矢理禁書から封印を解いたせいで。その上こんな危ない連中に絡まれるとか、同情したくなるほどの不運っぷりである。

次回、ついに決着!!

斗真と美月の戦い、そして報復も気合を入れて書きますので、よろしくお願いいたします!!


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