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第十五話「神官と王女の悪企み~アイスキマイラ~」

いつも拙作を読んでいただき、本当にありがとうございます。

新作が完成しましたので、投稿いたします。

どうぞよろしくお願いいたします。

 古代図書館【ロニセラ】。


 世界中の貴重な魔導書が置かれている図書室と、古代の魔法の研究がかつて行われていた研究室などが置かれている【知識の宝庫】として、魔法使いたちから憧れの聖地として謳われている。


 しかし、その塔の周りには一度入り込んだら最後、二度と生きては出られないほどの強い吹雪が吹き荒れていて、さらには凶暴化した魔物が近づこうとする冒険者に襲い掛かる危険な場所となっていた。


 「・・・お茶が入りましたわ、バイロン様」


 「ああ、ありがとう。イレーネ姫」


 「・・・バイロン様、もうわたくしは王女ではございませんわ。王女の名も全て捨てて、わたくしはただの一人の女に過ぎませんわ。ですので、王女だった時の名前で呼ぶのは止してくださいませ」


 「・・・そうだったな、イレーネ」


 仲睦まじく、ほほえみを交わし合っている姿は一見どこにでもいる恋人同士のようにも見えるだろう。しかし、彼らこそが一連の事件の元凶ともいえるカグラの神官【バイロン・フォン・ビショップ】と、クロスの第三王女【イレーネ・フォン・イステル】であった。


 彼らは全く気付いていない。

 イレーネによるカグラの王子に対する不貞、さらには一方的な婚約破棄、そして駆け落ちという行為がカグラにかつてない大混乱を招いていることにも。


 苦労に苦労を重ねて、先々代の国王がクロスと友好条約を結ぶことによって、一年中雪と氷に覆われて作物が育たない枯れた土地で、飢えに苦しんでいた領民がクロスからの物資によって救われた過去があり、長い年月をかけて固く結ばれていた友好をぶち壊したことも。


 「クロスの勇者の一人が処刑されたそうですわ。異世界から勇者を召喚して、魔王軍を討伐するために召喚したにもかかわらず、他国に迷惑をかけたことでブラオベーレから散々叱責されたそうですわ。やはり父上は完全にボケてしまったようですわ。あのような老害がこれ以上世界の覇権を握るなど冗談ではありませんわ」


 「・・・クロス国王は魔王軍の度重なる襲撃に心を痛めておられたのだろう。もはやこれ以上の激務はお身体に毒だ。お労しいことだ。しかし、その前に、クロスに成り代わってこの世界の平和と均衡を保つ強大な国が必要だ。そのためにはまず新しい国家の王、そして王を支える唯一無二の王妃が必要だ。イレーネ、君はクロスを捨てて、カグラを捨てて、私と共に新世界を創り出す過酷な道を選んでくれた。君の献身ぶりに応えられるよう、私は今度の計画を必ずや成功させよう」


 「・・・どこまでもお供いたしますわ、バイロン様。わたくしたちがこの【セブンズヘブン】を統治する、新しい世界の統治者となるのですね。いかなる苦難が待ち受けていようとも、わたくしはどこまでもついてまいりますわ」


 自分たちには何の非もないと堂々と言い切る図太い態度。


 いや、そもそもこの二人にとってはそういったことに対する罪悪感など欠片もなかった。


 なぜなら、自分たちの方が勇者の扱いに手を焼いているようなクロスよりも、間違いなく優秀であるという根拠のない自信に満ち溢れており、その自信が一体どこから湧いて出てくるのか分からないほどに、彼らは現実というものを見ていなかった。自分たちが優秀だという驕り、それが目を曇らせて自分自身の存在を神にも匹敵するほどの優れた存在だと思い込んでいた。


 そんな自分たちこそが、今こそクロスに代わって新しい国家を立ち上げて、世界の覇権を手に入れるべきだと本気で思っていた。そのためならどんな手段を使っても構わない、自分たちが本来世界の平和と秩序を守るべき高次の存在なのだから、何をやっても正しいとさえ本気で思っていた。


 「・・・もうすぐ、古代の魔獣が永い時を経て復活を果たす。その魔獣の力を完全に支配して操る事が出来れば、今の平和ボケしている腑抜けた国など手に入れることなど容易いこと。クロスの勇者たちであろうと、古の時代にドランブイの大地を支配してきた最強の魔獣に勝てるものか。この閲覧禁止の書庫に封印されていた禁書【騶虞すうぐの禁書】に封じ込められし最強の魔獣・・・【アイスキマイラ】に」


 バイロンはこらえきれないといったように、端正な表情を醜くゆがめて笑みを浮かべて、くっくっと笑い出した。それを見て、うっとりとしたように見つめて悦に浸っているイレーネの表情も同じぐらいおぞましいものになっていた。


 「ええ・・・。そして、その力があればあの生意気な王宮魔導師もわたくしたちのことを認めざるを得ないでしょう。世界の破滅の危機を救った勇者の生き残りだか何だか知りませんが、時代は確実に進んでいる。セルマ様はしょせんは過去の遺物に過ぎない存在。わたくしたちの手にかかれば・・・【魔神八傑衆】でさえも思いのままに・・・」


 「・・・古の時代に、このセブンズヘブンにおいて神にも匹敵するほどの強力な魔導兵器を作り上げて、地上界はもちろん、魔界や天界まで支配しようと目論んでいた大国があった。その大国のあまりにも愚かな所業に怒りを爆発させた天界の神族と魔界の魔族が手を組んで生み出した、「炎」「水」「地」「風」「光」「鋼」「木」「闇」の属性の持つ災厄を引き起こす八体の【魔神】。全世界が災厄に見舞われて、文明が破壊されるほどの被害を出したが、その力は神族や魔族の想像をはるかに超える力だったために、もはや誰にも止める事が出来ず、天界や魔界も滅亡の危機を迎えそうになった」


 「・・・ええ」


 「・・・その時、地上界において精霊と心を通わせて意思の疎通を図る事が出来る、清らかな心を持つ若者が現れた。彼ならば暴走する魔神を倒し、封印できると確信を持った神族と魔族は精霊族の王【聖霊王】に頼み込んで、その若者に魔神を倒すための力を宿した伝説の【聖剣】を託し、若者には【勇者】の称号が与えられた。勇者は命を懸けて魔神を倒し、封印することに成功した。それが勇者の始まりとも言われている」


 バイロンは傍らに置いてあった一冊の黒い背表紙の本を手に取り、めくりながら話を続ける。


 「・・・ところが今はどうだ。勇者と名乗る存在が続々と現れて、魔王軍討伐を掲げているものの、どいつもこいつも勇者としての能力は未熟なものばかりだ。挙句の果てに略奪行為や他国にいきなり乗り込むような行為をあくまでも正義だと信じて疑わない愚か者たちまで出てきている。私が崇拝している勇者を汚す者たちの存在などどうして認める事が出来ようか」


 「ええ、その通りですわ。実に愚かしいことですわ」


 「それならば、私が今こそこの混沌とした世界の乱れを正す勇者として、今一度この世界には試練を与えようではないか。【魔神八傑衆】を復活させて、世界を再び滅亡の危機にさらし、クロスが異世界から寄越した勇者なのではなく、私こそが真の勇者にふさわしいということを見せつける。そのために、聖剣の研究に携わってきた。私の計算に狂いなどない。私が聖剣を作り出して、新たなる勇者となり、世界の危機を救う。そして、クロスという過去の遺物ではなく、私とイレーネが作り上げる新しい国家こそが新たなる世界の神として崇められる世界を作り出すのだ」


 「・・・ああ・・・素晴らしいですわ!」


 マッチポンプとしか言いようのない、あまりにも愚か過ぎる考えであった。

 捕らぬ狸の皮算用、絵に描いた餅にもほどがあるこのスカスカ過ぎる野望をたった二人で成し遂げようと言うのだから完全に頭のねじがぶっ飛んでしまっているとしか言いようがない。そもそも、二人はもうすでに他国との友好を結ぶ重要な婚約を破棄した国家反逆罪を犯した大罪人である自覚さえないのだ。


 「さあ、その野望の第一歩となる重要な儀式もいよいよ大詰めだ。アイスキマイラを目覚めさせたあかつきには、このドランブイを我が物にするのだ・・・!!」


 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


 一方、その頃。


 吹雪が吹き荒れているロニセラを見下ろしながら、【バルクーク山岳地帯】の山の上にテントを張って、状況を確認していた僕たちは、グリゼルダさんが見せてくれたカグラの神官とクロスの第三王女の会話を聞いていて・・・あまりにもアホ過ぎる考えに全員が絶句していた。


 「・・・・・・コイツら、マジでバカ過ぎるだろ」


 レベッカさんの一言に、思わず全員が頷いてしまった。

 だって、他になんていいようがあるんだよ!何、この二人、いい大人の癖に厨二病をこじらせているの!?神族や魔族も自分たちでコントロールできないようなヤバいものが自分たちだけで上手く制御出来るとかどうしてそんな風に思えるの!?他国との政略結婚を破棄して駆け落ちするような、それが国に大打撃を与えるようなヤバいことだっていうことにも思い至らないアホにそんなことが出来るかい!!


 そのうえ、そんなヤバいものを復活させて、自分たちが作り出した聖剣(笑)を使って倒して、自分たちがクロスに成り代わって新しい英雄になろうとしていることとか・・・それってマッチポンプですよね?


 それによって世界中が大変な目に遭っても構わないってことかい。

 そうか、そうか、もうこの人たち完全に色々と手遅れな人たちだわ。


 「・・・第三王子と言い、この王女と言い、クロス王国の王族の教育のレベルの低さがうかがえるというものだな」


 「普通のヤツだったらあり得ないと思う方向に全力で取り組むように教育されてンじゃねーの?」


 「・・・コイツら、もう生かしておく必要なんてなくない?どうせカグラに逃げ帰っても国家反逆罪で処刑は確定でしょうし。それに、もし禁書を使って封印されている魔獣を復活させようとしているとしたら、一刻も早く止めないと大変なことになるわ」


 「・・・・・・面倒くさい」


 「・・・でもさあ、そんなヤツらなんかに好き勝手されたら、それはそれで腹が立つよな?」


 「ああ、バカは嫌いだからな」


 「・・・・・・それ、お前が言っても説得力がない。トーマのことになると、バカになるくせに」


 「私はお姉ちゃんだ。弟を溺愛し、弟を甘やかし、弟を愛でることに命を懸けることが使命なのだ。どこがバカだというのだ?」


 「・・・コイツにはもう何を言っても無駄よ。ていうか、それ、アンタも言えないでしょ」


 「・・・・・・ムッツリスケベの陰キャが何をほざくか」


 「それじゃあ、作戦の確認をするぜ!今からオレたちは二手に分かれてロニセラに侵入する!オレとアイリスとグリゼルダはこの先にある井戸から水路を伝ってロニセラに侵入する!そして、ビビとトーマはビビの作ったパワードスーツに乗り込んで、アイツを回収してからロニセラに正面から乗り込んでくれ!」


 「・・・結局アイツを復活させるの?マジで嫌なんですけど。はぁ~、やる気出ねぇ」


 「アイツの力が必要なんだ。【七人の獣騎士】の切り込み隊長を務めていた、【七人の獣騎士】きっての武闘派であるヴィルヘルミーナの力がな」


 「ビビ姉、僕からもお願いします」


 「・・・・・・トーマの頼みなら仕方がない。でも、本当に、嫌なんだよね。アイツ、すぐ人に抱き着いてくるし、じゃれつくし、鬱陶しいし、ナルシストだし・・・ああ、会ったら一度はマジで殺すかもしれない。マジでウザい」


 「・・・アンタ、ヴィルヘルミーナには当たりがキツイからね」


 「まあ、気持ちは分からないでもないがな。あの色情魔を復活させるのは不本意だが・・・」


 そんなことを言いつつも、僕たちは一旦分かれてロニセラに向かうことになった。

次回、5人目の仲間【ヴィルヘルミーナ・ワイズマン】が登場します!!


ブックマーク登録220件も登録していただき、本当にありがとうございます!!

すごく嬉しいです!!これからも頑張って書きますので、よろしくお願いいたします!!

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