第十三話「炎の勇者VS風の勇者トーマ!?~いきなり謝罪をされましても~」
いつも拙作を読んでいただき、本当にありがとうございます。
新作が描きあがりましたので、投稿いたします。
どうぞよろしくお願いいたします。
「・・・次は貴方の番かしら?」
雁野の次の標的は、桜に狙いを定めた。
雁野の放った炎の矢を受けてダメージを負ったせいか、桜は歯を喰いしばって立ち上がろうとするが、足に力が入らないのか上手く立ち上がる事が出来ない。
「・・・ぐっ・・・!!」
「・・・あの世で鳳くんや島田さんが待っているわよ。死になさい!!」
ばっ!!
大きく雁野が刀剣を振りかぶり、銀色の光を放つ刀が桜の首めがけて振り下ろされる!!
ガキィーーーン!!
中庭に、高い金属音が響き渡った。
その音は、僕の大剣の刃が雁野の刀剣を弾き飛ばした音だった。
雁野が目を軽く見開き、いぶかし気に首をかしげる。
「・・・どういうつもりかしら?」
「・・・ど、どうして・・・?」
後ろから、桜の間抜けな声が聞こえてくる。
そんなこと、こっちだって知りたいわい。だけど、もう気が付いたらこうして雁野の攻撃を防いでしまっている自分がいるんだから説明のしようがない。
雁野が島田さんを殺して、桜に襲い掛かろうとしているところを見た瞬間、頭の中が真っ白になって、気がついたら雁野の刀を僕が大剣で弾き、不可抗力とはいえ桜をかばっている形になっていることに一番驚いているのは僕だろう。
桜は僕の命を狙った、絶対に許せないヤツであることには変わりはない。
でも、それ以上にムカついているのはさっきから人の神経を逆なでするようなことばかりをやってくる、雁野のことを今は思い切りブッ飛ばしたくて仕方がないんだ!!
「・・・雁野・・・僕は、お前が、大嫌いだ!!」
ブオンッ!!
「きゃっ!?」
力任せに大剣を振るうと、吹き飛ばした刀剣に引っ張られるようにして雁野がよろめいた。
そのスキに、僕は足元に転がっている大型の銃の魔道具を拾い上げると、銃口を彼女に向けた。
「・・・面白いわね、それで私を殺せると思っているのかしら?」
「思っているさ。お前のようなヤツは本気でぶっ殺すつもりでやらなきゃ、絶対に勝てないんだ」
-どうしても負けられない、大切なものを守るために戦わなくちゃいけない時が来たら、その時は・・・”相手を最初から殺すつもりでやらなくちゃ勝てない”-。
(・・・僕も結局は雁野と同じ、いや、もしかしたらそれ以上の救えないクズかもね)
まともなふりをしていて、自分だけはまともでいたいと思っていても、一線を越えた相手に対してはその存在を一瞬で全否定して、相手をどれだけ叩きのめしても何も感じないなんてまともなヤツの感覚じゃない。
でも、きっと僕はそういった異質な存在なんだろう。
人を傷つけること、自分が傷つくことが怖くて、争いごとなんてまっぴらごめんだと思っていた。
だけど、この世界ではもうそんな考えじゃ、生きていけないんだ。
そして、僕がこれからもずっと一緒にいたいと思っている人たちは、そんな死と隣り合わせの人生を送っている人たちなんだ。僕の甘さがいつかレベッカさんたちの足を引っ張ることになる。
それだけは、絶対に・・・嫌だ!!
「・・・お前は僕が倒す。変身!!」
≪魔導闘衣装填・ワイバーン!!≫
「なっ!?」
黄色の渦巻く風の弾丸が飛び出して、雁野のどてっぱらに直撃して彼女の身体が吹き飛ばされた。そして、その風の弾を殴りつけると、中から飛び出してきた黄色の【竜】をあしらった甲冑が僕の腕、足、身体に装着されていき、左腕には鋭い3本の刃が生えた鉤爪が現れた。
≪魔導闘衣装着・ワイバーン!!ダンシング・ストーム!!≫
「斗真が、どうしてオレの勇者の力を使えるんだ・・・!?」
「ふうん、面白いじゃない。そうこなくちゃねぇぇぇっ!!」
「行くぞ!!」
ガキィン!!
吹き荒ぶ風を全身に纏い、自分の身体をものすごく早く走らせるイメージを浮かべて地面を蹴り飛ばす。すると、もう目の前に雁野の顔が飛び込んできた。懐に潜り込むと、がら空きになっているアーマーに爪を突き出した。
ガシャンッ!!
ザシュッ!!
「ぐっ・・・!?は、速過ぎて、攻撃が読めない!?」
不思議だ。
さっきまでは雁野の狂気に怯えていて、彼女の繰り出す攻撃がもっと怖いもののように思えた。
だけど、今は彼女がただ刀を振り回しているだけにしか見えない。動きも良く見れば、単調でスキもある。それを彼女の狂気が何倍にも怖く見せていただけに過ぎない。
ああ、そうか。
僕の中で、雁野はもう「どうでもいい」存在なんだ。
だから、手にかけることに躊躇もないし、気遣うところが何一つない。
もう「倒す」一択しかないんだ。
それだけに専念すればいいと、割り切ったんだ。
すごいシンプルな思考だ。でも、余計なことを考えないで戦うことで、相手の動きがずっと読める。
「覚悟しな・・・!!」
ミニチュアを外して、爪の甲の部分についているギミックに取り付けると竜の瞳が黄色く光り出し、凄まじい勢いで風が吹き出して、僕の左腕に渦を巻いて集まり出した。
まるで風がドリルのように渦巻き、一気に僕は彼女のボディに向かって突き出した。
「竜驤麟振!!風魔法・飛竜の昇拳!!」
ドゴンッ!!
「ぐっ・・・!?」
竜巻のドリルをアーマーにめり込ませて、全身の力を込めたアッパーを叩きつける。
骨が折れるような鈍い音、雁野が口から赤い液体の塊を吐き出して地面に転がっていく。
しかし、雁野はよろめきながらも、不敵な笑みを浮かべてよろよろと立ち上がった。
「・・・うふふふ・・・あははは・・・この痛み・・・たまらなぁい♥梶くんの攻撃、すごくキくわぁ♥ごほっ・・・がはっ・・・この痛みが何とも言えないほどに・・・気持ちいい・・・!!」
痛みさえ快楽と感じているのか、それがただの強がりではないことが彼女の怖気がする笑みが証明しているような気がした。舌で口元の血液を舐め取って、不敵な笑みを浮かべながら彼女は背中から炎の翼を大きく広げて、空中に舞い上がった。
「・・・近いうちにまた、戦いを挑みにいくわ。貴方が生きている限り、何度でも、何度でも、な・ん・ど・で・も!!殺しにいくわぁ、梶くん♥」
「待て!!」
雁野はそう言い残して、ものすごい速さで灰色の雲で覆われていく空の彼方へと飛び去って行った。
どうやら、雁野の次の標的は僕だろうな。僕のことを徹底的に付け狙って襲い掛かってくるだろう。
でも、望むところだ。
もう僕も、雁野という存在をようやく割り切る事が出来たのだから。
「・・・梶っち・・・」
振り返ると、桜が震える身体を必死で踏ん張って立ち上がっていた。
その顔は、僕を突き落した時のあの悪魔のような人物と同じ人物とは思えないほどに、仲間を失ったことに対する悲しみ、そして僕が結果的に桜を助けることになったことに対する戸惑いが浮かんでいる。
「・・・何さ」
「・・・どうして、オレの魔道具を使ったんだよ?」
「・・・島田さんの弔い、かな。別に君を守るために戦ったわけじゃない」
「・・・そうか」
もう話すことなんてない。
この様子だと、桜が戦うのは無理だろうし、これ以上話し合う時間も無駄というものだろう。
僕は桜に背を向けて、中庭を立ち去ろうとした。
「・・・・・・ごめん・・・・・・なさい・・・・・・!!」
確かに、聞こえた。
嘘偽りのない、まっすぐでどこかひどく悲しい声。
わずかに振り返ると・・・。
桜は・・・地面に両手をついて、額を地面にこすりつけるようにして、頭を下げていた。
これって、まさか、土下座!?
「・・・オレは君を殺そうとした。やらなかったら、仲間を殺すと言われた。魔人に改造された仲間を・・・魔力で暴走させて人間だった時の記憶や心をなくして・・・完全な魔物に変えて人を襲わせるって。仲間を守りたかった。でも、そのためにオレはお前の命を天秤にかけて、あんなことをしてしまった。そして、花桜梨のことも守れなかった・・・!!オレがもっとしっかりしていれば、お前を殺せと言われたとき、クロスと戦う勇気がなかったからお前に怖い思いをさせた・・・!!」
何を言っているんだよ。
どうしてここでいきなりそんなことを言うんだよ。
自分は悪くないって、どうして言わないんだよ。
自分の不手際のせいで、島田さんが死んだって言うんだよ。
僕を殺そうとしたことを、どうして悪いと思っていたんだよ。
「・・・いまさらそんなことを言われても、知らないよ」
「・・・そう、だよな」
「これ以上何も言うな。僕の目の前から早く消えろ、怪我しているんだから引っ込んでいやがれ!」
そういってから桜の前を横切って中庭を出て行こうとする。
「どこで誰かに見られているのか、分からないんだろう?見つかったらどうするんだよ。クロスを裏切ったと誤解されたら、仲間が危ないんだろう?」
「え・・・!?」
「勘違いするな、雁野には僕もムカついているから僕個人の理由で雁野と決着をつける。怪我が治るまで、絶対に出しゃばってくるな!!」
もう、そこまで言うのが限界だ。
訳が分からず、思い切り叫びたい気持ちを必死で抑えて僕は走り出した。
走って、走って、走って・・・。
廊下の壁にもたれるようにして座り込み、かなり長い距離を勢いよく走り続けていたのか、呼吸が上手くできずに頭の中が真っ白になり、酸欠になった。呼吸を必死で整えようとする。目が涙でにじんだ。
今更、そんなことを言われても、どうすればいいんだよ・・・!!
ずるいよ、どんな理由を並べ立てられても許せないことはあるだろうよ。
それなのに、言い訳一つしないで頭を下げてくるなんて・・・!!
仲間が人質にとられている?セルマやクロス王国の人たちがいつでも仲間たちを完全な魔物に変える事が出来る?もし魔物になったら、人間だった時の記憶や姿、心を失って人間に襲い掛かる?
そんなことを言われても、それなら僕はどうなってもよかったのかよ。
勝手なことばかり言うんじゃねーよ!!
「・・・一体何がどうなっているんだよ・・・!!」
いくら悩んでも考えても、答えが見つからない。
僕は頭を抱えて、泣き出しそうになっていた。
自分がどうしたいのか、それさえも分からない・・・。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
斗真が走り去った後、桜がよろよろと起き上がって立ち去ろうとした時だった。
ふと、目の前にまばゆく輝く光の玉が浮かんでいるのが目に飛び込んできた。
「・・・なんだ?」
光の玉がまるで雪のように桜の掌の中に落ちると、ぱあっと輝き、桜の掌には・・・濃紺色の金属製のプレートらしきものがあった。中央に窪みがあり、何かを装填する装置がついている。
「・・・これって・・・梶っちが持っていたあのベルトと同じもの?でも、どうしてオレの所に?」
その時、桜の頭の中に直接話しかけてくる【声】が聞こえてきた。
『おめでとうございます!!新しいスキルが覚醒しましたので、ご連絡いたします!!』
『ステータスを開いて、確認してください!』
桜はステータスを開いた。
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名前 :サクラ・マクノウチ
種族 :人間(異世界人)
性別 :男性
年齢 :17歳
レベル:15
信頼度:A
強さ :A
器用さ:S
持久力:B
敏捷性:S
賢さ :A
精神力:A
運 :A
職業 :勇者→魔法裁縫師(竜装備限定)
スキル:身体強化 S
:精神強化 A
:鉤爪術 S
:魔力探知 A
:魔力操作 S
:風魔法 S
:危険探知 S
:嗅覚 S
:見切り S
:加速 S
:魔石加工(竜限定) S
:対話(竜限定)S
武器 :魔導爪【霊爪ストーム】
属性 :風
おめでとうございます!
貴方は二人目の魔法裁縫師、竜装備専門の【仕立職人】として認められました!
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「・・・え・・・何これ・・・?」
桜は自分の身体に起きた変化に、呆然としていた。
この時、この桜の能力がまさか斗真の命の危機を幾度となく救う心強い存在になろうとは、斗真も桜も夢にも思っていなかったのだ。
斗真の感情の表現がすごく難しかったです。
感情の変化や表現をどう書けば面白くなるのか、図書館で本を借りて読んだり、ライトノベルを読んでどういう表現の方法があるのか試行錯誤を繰り返して、何とか書きあがりました。まだまだつたないところがあり、今後も勉強をしながら作品を書き続けていきますので、よろしくお願いいたします。




