第十話「ディアドラ王とのご対面~殴り込みにもマナーはある~」
いつも拙作を読んでいただき、本当にありがとうございます。
年の瀬が迫ってきておりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか?
コロナやインフルエンザが猛威を振るっていますが、お互いに体調や健康には気をつけましょう。
さて、ようやく王都【フレップ】にやってきました。
書庫の国と呼ばれるだけあって、大通りには魔導書や古本を扱っている本屋や、本を書くために必要な文房具などを売っているお店が多いのが特徴的だった。しかし、なぜか人通りが少ないうえに、街の至る所に騎士らしき甲冑で武装している人たちが険しい表情で目を光らせている。
「・・・これ、ロニセラで起きている事件だけでここまで警戒しているというわけじゃなさそうですね」
「ああ、一体何が起こったのだろうな」
その時、街の調査に出ていたグリゼルダさんの影が戻ってきた。
そして、影が集めてきた情報を読み取っていくうちに、グリゼルダさんの表情が強張っていく。
「・・・・・・マジで?」
「ぐ、グリゼルダさん?どうかしたんですか?」
「・・・今、この街で何が起こっているのか調べてきたんだけど、ロニセラの事件に加えて、隣国の【雪原の国カグラ】に務めているダンタリオン家の血縁者の神官が、カグラに嫁いできたクロスの第三王女と駆け落ちして行方不明になったみたいよ」
・・・はい?
僕たちがその情報を理解するまで、少しだけ時間がかかった。レベッカさんは頭の上にたくさんクエスチョンマークが浮かんで首をかしげているが、アイリスお姉ちゃんは「・・・そういうことか」と納得したように頷いていた。
「なるほど、つまりこの警備は二人が逃げ込んできたときに保護という名目で捕らえるためということか」
「そういうことね。全く派手にやってくれるわよ。その二人、自分たちがどれだけとんでもないことをやらかしているのか分かっているのかしら?」
「嫁いできた他国の姫君と駆け落ちなどするような、頭の中がお花畑のような連中にそんな現実が見えているわけがなかろう」
「・・・・・・クロスとの友好も破棄される可能性、大。そのうえ、カグラとフレップの国交関係に亀裂が入ってもおかしくはない」
「・・・なるほど、つまりフレップはクロスとカグラの二つの国から挟み撃ちで叩かれている状態になっているというわけか」
つまり、カグラからは『お前の家の血縁者が他国から嫁いできた王女と駆け落ちしてトンズラこいたんだが、どういう教育をしていやがったんだ!』と責任を追及され、クロスからも『カグラとの友好を破棄するつもりか、お前の国は!!英雄の国の名に泥を塗るような真似をしやがって!!』と糾弾されているということね。最悪過ぎるダブルパンチだろう。というか、これ完全にフレップは巻き込まれただけだよね。
「・・・それって、カグラの監督不行き届きということで済まないんですか?」
「まあ、そう考えるのが妥当だな。他国の神官として働いている以上、その人間が過ちを犯したら神官を雇っていた国の責任として追及されるのが当然なのだが・・・」
「・・・カグラとフレップは隣国同士だけど、あまり国同士の仲は良くないらしいわよ。カグラの国王は野心家で、フレップの広大な領土や魔石、聖霊石が豊富に採れる鉱山を欲しがっているみたいだわ。だから、巷の噂じゃカグラが神官に駆け落ちを勧めて、その責任をフレップに追及して国を乗っ取ろうとしているのではないかとも言われているそうよ」
「そんなバカな国に、どうして神官なんてやっているんだよ」
「・・・・・・カグラの動向を探るために、隣国同士の交流を深めるという名目で送られたとも考えられる」
「・・・それがミイラ取りがミイラになった、という可能性があるということか」
なるほどね、つまり今度の駆け落ちを利用してカグラという国はこの大陸の支配国に成り代わろうとしているかもしれないってことか。国交関係や国の事情に詳しいアイリスお姉ちゃんとグリゼルダさんがそういうってことは、その可能性も考えられなくないほどにカグラという国はクズらしい。
「よく分からねえけど、国同士のごたごたに巻き込まれるのはごめんだぜ?面倒くせぇもん」
「・・・・・・国と国が絡む問題なんて、いち傭兵団に過ぎないうちらにどうこう出来る話じゃない」
レベッカさんとビビ姉がブーブーと文句を言いたくなる気持ちもわかるが、もしかすると、こういった事情も知っていたからベリス姉さまは僕たちにフレップに行かせたのではないだろうか。
まあ、とりあえずはフレップに行って、女王陛下から色々と話を聞いてみてから今後どう動くか話し合った方がいいよね。僕たちは気持ちを切り替えて、王宮に向かった。
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「・・・ようこそ、ハニーベルへ。私はハニーベル国王の【ディアドラ・フォン・ダンタリオン8世】です。この度は遠国からはるばるとお越しいただき、心から感謝の言葉を申し上げます」
玉座の間に通された僕たちを出迎えてくれたのは、玉座に座るこのドランブイで一番の大国の王であるディアドラ女王様だった。緑色のウェーブがかかったロングヘアー、紫色を基調とするローブを身に纏う姿は国王というよりは魔術師のような装いをしており、知的で落ち着いた雰囲気の女性だった。
しかし、彼女の疲労の色は隠しきれないほどに深いらしく、目の下にはうっすらとクマが浮かんでいるし、どことなく顔色が優れないようにも見える。
(おい、あの女王様、今にもぶっ倒れちまいそうじゃねえか?)
(・・・・・・疲労困憊、もはや体力的にも精神的にも限界を迎えている)
「女王陛下にお目通りを叶えていただき、光栄でございます」
「ベアトリクス女王陛下から丁重におもてなしをするようにとお申し付けがございましたので、どうぞ、気を楽にしてください」
「姐さんって何気に偉い人だったんだな」
「そりゃそうでしょう。魔界を支配する四大勢力の一角を担い、魔王軍の元帥を務めているんだから」
「というか、どうして団長のお前がそれを把握していないんだ?」
「だって、いつもの姐さんを見ていればそう思ったっておかしくねえじゃん。オレの知っている姐さんは毎晩のようにショタっ子専門の娼館でフィーバーしまくっているし、所かまわずロケットランチャーをぶっ放しまくっている危ないお姉さんのイメージしかねえもん」
「やめなさいっ!!こんな話をもしベアトリクス様に知られたら、私たち全員お陀仏になるでしょうが!!」
「死ぬならお前ひとりだけで逝ってくれ。道連れなどごめんだ」
他国の女王陛下が思わずぽかーんとした表情で、魔王軍のトップであるベリス姉さまの恥ずかしい一面を暴露しまくっている(おそらく他意はない。思ったことをそのまま口にしているだけ)レベッカさんを本気で止めないとヤバいと察したのか、グリゼルダさんとアイリスお姉ちゃんが必死で止める。
それにしても、ベリス姉さまって実は一国の女王様よりも偉い人だったのか。
そんな人がいきなり屋敷にロケットランチャーをぶっ放してきたり、室内で火炎弾を乱射しまくったり、僕のことをキャバ嬢でも口説くかのようにベタベタしまくってくるのはいいのだろうか。
「早速ですが、ベアトリクス女王陛下からお話は伺っているかと思いますが、改めて貴方たちに依頼を一つ頼みたいのですがよろしいかしら?」
「おうよ、確か古代図書館の周りで発生している吹雪や魔物の凶暴化の原因を突き止めればいいんだったっけ?」
レベッカさん、貴方は敬語とか目上の人に対する礼儀作法とか知らないんですか!?
「ええ、その通りですわ。実は1ヶ月ほど前からロニセラがある【ニパス雪原】で原因不明の吹雪が発生して、ロニセラに誰も近づけなくなってしまいましたの。それに、これまで雪原で確認されたことのない魔物が突然現れては調査に向かった学者や魔導師に襲い掛かってくるようになってしまいまして、一体ロニセラで何が起こっているのか、誰がこのようなことを仕掛けたのか調べていただきたいのですが、よろしいかしら?」
「依頼料を払ってくれるなら、どんな任務だってこなしてみせるぜ!」
「私たちもベアトリクス女王陛下からその異変の解決を命じられております。つきましては、ニパス雪原で発生している異変の経緯について詳しくお話をお聞かせいただきたいのですが」
レベッカさんの口をグリゼルダさんが塞ぎ、アイリスお姉ちゃんとバトンタッチしてディアドラ女王との話を続ける。難しい話はよく分からなかったけど、話を簡単にまとめるとこういうことらしい。
1・ニパス雪原は現在現不明の吹雪が発生していて、下手に足を踏み入れたら道に迷ってしまう。調査団の人たちも吹雪によって方向感覚を失い、遭難したらしく誰一人として戻ってこなかった。
2・さらに雪原に近づこうとすると、この付近では目撃された事例がこれまでにない魔物が現れて、襲い掛かってくるためロニセラに通じる唯一の街道は現在は封鎖されている。
3・ロニセラに入るためには、ダンタリオン家の家紋が刻まれている魔法の紋章印が必要だが、何者かの手によって紋章印の登録が上書きされていて、関係者でさえも中に入る事が出来ない。
とまあ、八方塞がりな状態になっているらしい。
そうなると、どうやって古代図書館に近づくことが出来るのだろうか。
「他に図書館に入る事が出来る道とかはありませんか?」
「・・・一応、緊急事態に備えて本を遠く離れた場所に避難させるための【地下通路】はあるのですが、その通路にもどこからか入り込んだのか、凶暴な魔物たちが巣食ってしまっているのです。かなりの力を持っていて、私たちも手を焼いているのです」
地下通路・・・!
どうやら、そこを通らない限り、図書館の中に入り込むのはかなり難しいだろう。吹雪の中を突っ切っていこうとしても、道に迷って遭難する可能性がある。
「・・・そうなると、地下通路を通っていくしかねえかもな」
「そうね。吹雪の中を突っ切るよりは安心かもしれないわね」
その時だった。
ドーーーーーーン!!
突然城全体が揺れて、何かが爆発するような耳をつんざく爆音が鳴り響いた。
「うおっ!?な、なんだぁっ!?」
「何が起こった!?」
「も、申し上げます!!」
玉座の間に、甲冑を身にまとった騎士が真っ青な顔で飛び込んできた。
「何事だ!!」
「はっ!!先ほど、クロスの勇者と名乗る人物が突然現れて、王宮に正面から乗り込もうとしたので兵士たちが止めたのですが・・・その勇者は兵士を斬りつけて、駆けつけた警備の騎士にも襲い掛かり負傷者が多数出ております!!そして勇者は玉座の間の方向に向かっております!!」
「な、何だと!?それは一体どういうことですか!?どうしてクロスの勇者がこの王宮に乗り込んできたのですか!?」
ちょっと待てっ!?
クロスのバカ勇者たち、鳳の一件があったっていうのに懲りずに他国に乗り込んできたって言うの!?学習能力がないにもほどがあるぞ!?しかも王宮の兵士たちを倒して、玉座の間を目指してくるってことはまさか女王陛下に襲い掛かるつもりなのか!?
「忍び込んだのは何人だ!!」
「・・・いえ、それが、単騎で乗り込んで来まして!!しかもその人物は女性なのですが、剣術の腕前と炎を自在に操る魔法の腕前がかなりのもので、護衛の騎士たちが必死で食い止めようとしているのですが、もはや鬼神のごとき強さで暴れまわっております!!」
嘘だろう!?
鳳でさえも何人か引き連れて部隊で乗り込んできたって言うのに、他国の王宮にたった一人で乗り込んで大勢の騎士たちとやり合っているだって!?誰、そんなメチャクチャなことをする奴は!?
「・・・ありえないぞ、そいつはレベッカ以上のバカだろう!?」
「・・・・・・まともじゃない」
その瞬間。
「ぎゃああああああっ!!」
突然報告をした騎士の身体が炎で包まれて、絶叫を上げながら床を転がりのたうち回るが、やがて全身から焦げ臭いにおいと煙を放ちながらピクリとも動かない炭の塊へと変わっていった。
・・・死んだ?
そして、倒れている騎士の遺体を蹴り飛ばして、その人物が姿を現した。
僕たちはその人物を見て、予想外の展開に息をのんだ。そして、その人物は、僕には見覚えがあった。
黒髪のロングヘア、赤いカチューシャ、雪のように白い肌を持つ美少女。
そして、手には赤々と燃え上がる炎を纏った刀を持っていた。
彼女が着ている制服にはもはや変色している、血しぶきのしみがついていて、真っ黒になっていた。
「・・・会いたかったわぁ・・・梶くん・・・♥」
「・・・雁野・・・美月!?」
僕を殺そうとしていた5人の勇者たちの一人は、狂気で血走った瞳を僕たちを睨みつけながら、にたぁっと狂気に満ちた笑みを浮かべた。
雁野に勇者の力を与える→しょっぱなから他国の王宮に単騎で殴り込みを仕掛ける。(犠牲者は20人以上にものぼる模様。次回、被害の詳しい状況を明らかにいたします)
鳳がまだ遥かにマシだと思えるほどのぶっ飛んだ行動をとる彼女の暴走に、修羅場をいくつも体験してきたレベッカたちでさえも茫然唖然。そして次回、斗真の気持ちにある変化が起こります。
次回もよろしくお願いいたします!!
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます!!




