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第十一話「男の娘も七日嬲ればブチ切れる~鬼姫覚醒~」

いつも拙作を読んでいただき、本当にありがとうございます。

新作が完成しましたので、投稿いたします。どうぞよろしくお願いいたします。

 突然城の方向から爆発音が起きたとき、大通りにいた桜と彼が率いる【黄の風騎士】のメンバーの麗音、和田仁美、そして小柄で茶髪のボブカットヘアーの小動物を思わせるような可愛らしい女の子【矢守やもりしのぶ】は飛び上がった。


 「桜!城の方から火の手が上がっているぜ!」


 「・・・敵襲か?」


 「こっちがようやく着いたばかりだっていうのに・・・どこのバカよ、いきなりドンパチやらかしてんのは」


 桜たちの元へ、花桜梨が真っ青な顔で駆けつけてきた。あちこち探しまわっていたのだろうか、陸上部で身体を鍛えているはずの彼女の顏からは色が失われていた。


 「た・・・大変だ、桜・・・!!」


 「かおりん!一体何があったの!?」


 「・・・雁野が・・・王宮に殴り込んだ・・・!!」


 『はあっ!?』


 桜たちは話の内容に絶句した。

 現在、王宮を大混乱に陥れた元凶が自分たちと同じ勇者軍の勇者だとは夢にも思っていなかったからだ。

 そして、他国の王宮にいきなり乗り込んで襲撃を仕掛けるなど、これは鳳がやらかした悪夢の再来、いや、それ以上の最悪な展開だった。


 「・・・よりによってうちのバカかよ・・・!!」


 「どういうことだよ、雁野はお前と松本が見つけて保護したんじゃねえのかよ!?」


 「確かに保護したわ。でも、桜に言いつけられている通り、桜が直接話をするまではあのジオチェンジャーは渡さないようにしていた。それなのに、アイツがジオチェンジャーをいつの間にか手に入れていて、それを持って王宮に乗り込んでいったって松本から報告があったの!!」


 「ね、ねえ、桜ちゃん。これって、まさか松本ちゃんからジオチェンジャーを奪い取って、雁野が暴走しているってことは考えられないかな?」


 「・・・仮にもしそうだとしたら、アイツが動く理由と言えば・・・まさか王宮に梶がいるということか?」


 「・・・恐らくね。どこでそんな情報を嗅ぎつけたのかは知らないけど、もしそれが事実だったら、雁野を早く止めないとヤバい!!あのバカ、派手にやりやがって・・・!!」


 いつになく苛立った様子で桜が舌打ちすると、そこへよろよろと千鶴が疲れ切った様子で、おぼつかない足取りで桜たちの方に歩み寄ってきた。今にも倒れそうな千鶴のただならない様子を見て、桜は慌てて千鶴に駆け寄る。


 「・・・桜くん・・・ごめん・・・」


 「千鶴!大丈夫なの!?一体何があったのさ!?」


 「・・・雁野さんにやられた。雁野さんに勇者軍に戻ってきてもらおうと思って、ジオチェンジャーを見せたの。そしたら、彼女がジオチェンジャーを奪って・・・取り戻そうとしたんだけど・・・殴られて気を失っていて・・・気が付いたら・・・王宮が・・・雁野さんがどこにもいなくて・・・!」


 弱々しく、消え入りそうな声でぽつりぽつりと話す千鶴の報告を聞いていくうちに、桜の表情がどんどん険しくなっていく。そんな桜の表情の変化を見て、千鶴は内心では『上手くいった』とほくそ笑んでいた。もちろんこれは演技である。


 雁野にやられたというのは真っ赤な嘘だ。


 雁野にジオチェンジャーを与えて、もうすぐこの街に斗真がやってくることを伝えて、彼を呼び出すにはどうすればいいかと前置きを置いてから、千鶴は雁野にこう言ったのだ。


 『町の中で一番目立つものを思い切り派手に叩けば、梶くんたちも何があったかと思って出てくるんじゃないかな』


 つまり、美月が王宮に乗り込んで大勢の騎士を殺害する要因を作ったのは、千鶴だったのだ。


 「・・・ごめんね・・・桜くん」


 「・・いや、情報収集が遅れて別行動を取るように指示したオレの責任だ」


 千鶴に頭を下げると、桜は思考をフル回転させる。


 「忍、千鶴を魔法病院に連れて行って。麗音と仁美は城で傷ついた兵士がいたら治療して、魔法病院に搬送する手続きの手伝いをしてくれ。クロス聖王国の紋章印があれば、手伝わせてもらえたり、医療班を多めに手配してもらえるはずだ!医者を呼ぶ金が足りないっていうなら、このカバンの中の金、全部くれてやれ!今は一人でも多くのケガ人を助け出すことが先決だ!」


 そういって、万が一の交渉の時に備えて置いた1億ゴールドの札束が詰まったカバンを麗音に差し出した。


 「桜はどうするのだ?」


 「・・・こんなことをやらかすようなバカに勇者を名乗らせるわけにはいかない。この手で、きっちりと落とし前をつけてやる!!」


 美月を自分の手で仕留める。


 もはやこの方法でしか彼女を止める方法はない。


 桜は覚悟を決めて、美月の処刑に踏み切った。


 「私も行くぞ!!」


 「・・・助かる!!」


 桜と花桜梨は王宮に向かって走り出した。後に続いて、麗音と仁美も続いていく。


 そんな桜の後姿を、千鶴は感情を感じさせない無機質な瞳で見つめていた。


 「・・・いつも誰かを必死で守ろうとしている・・・でも・・・そういうのは私の理想の勇者様じゃないんだよね。・・・桜くんも・・・結局は期待外れだったのかな?」


 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


 「・・・会いたかったわ、一秒でも早く貴方と戦いたくってね」


 「・・・そのために王宮に乗り込んできたって?どうやら完全に頭がイカレているみたいだね」


 「貴方がそういう風に言うのかしら?ー”彩鳥(いろどり)鬼姫おにひめ”さん?」


 美月の言葉を聞いて、僕は頭を思い切り殴られたような気がした。


 そして、その言葉は僕にとっては思い出したくない過去を引きずり出すには十分だった。


 心の奥から、冷たくてドロドロとしたヘドロのような感情が湧き上がってくる。


 「・・・もうとっくにそんな名前で呼ばれることはないと思っていたのにね」


 「かつて龍花市のワルを腕っぷし一つで従えていた伝説の不良【長崎ながさき椿希はるき】の再来とも呼ばれるほどの無類の強さを誇る、腕っぷしが恐ろしく強い女の子のような顔立ちをしている人の皮を被った鬼・・・梶くんのことでしょう?」


 「そんな人、会ったこともないから知らないよ。こっちとしてはいい迷惑だ。誰だか知らないけど、そんな人の再来なんて名乗った覚えもないし、降りかかる火の粉を払ってきただけだったんだけどね」


 「・・・私はね、一度貴方が派手に暴れているところに偶然居合わせたことがあったのよ。地元でも有名な半グレ集団をたった一人で血の海に沈めた貴方をね」


 美月がうっとりとした目になって、舌なめずりをしながら身体を自分で抱き寄せて悶えだす。


 「ああん・・・♥あの時の梶くんは素敵だったわぁ・・・♥まるで機械のように感情を一切感じさせない無表情で、武器を持っている半グレたちにも怯むことなく、肉体一つだけで挑んで、叩き潰し、相手が泣いて許しを乞うても絶対に許さずに殴り続けるあの姿は・・・美しかったわ。あれを見た瞬間、私の心は貴方の狂気に惹かれたのよ。生まれて初めて、男性に恋をした瞬間だったわぁ・・・!!」


 ふうん、まさかあの時の喧嘩を見られていたとはね。

 だいたい、こっちはそもそも喧嘩なんて好きじゃないし、出来れば平穏に暮らしていたいだけなのに。目立つことなんてしないで、町民Aとして平凡な人生を送りたいっていうのに、どうしてそういう連中やこういったバカに目をつけられるんだろうか。


 「私はね、もう一度あの時の貴方が見たいの。人を人とも思わずに平気で壊していく、冷酷非情な殺戮マシンのような貴方と思い切り殺し合いたいのよっ!!私の渇いた心を潤してくれるのは、梶くんだけなのよぉっ!!」


 荒く呼吸をして、口元から涎を垂れ流しながらもう我慢が出来ないと言わんばかりに飛び出し、美月が炎を纏った刀の切っ先を僕に向けて勢いよく突き出した。


 ああ、もう、我慢の限界だ。


 そう思った瞬間、僕は大剣を生み出すと、突き出してきた刀の切っ先を刃で防いだ。

 

 ガキィィィン!!


 そのまま、火花を噴き出して刀を弾き飛ばした。出来ればそのまま首を切りつければ良かったんだろうけど、本能で弾いたみたいだ。


 「・・・そんなに暴れたいなら、”俺”が相手になってやるよ・・・死ぬまでな」


 「・・・アハァッ♥いい、その顔、あの時の梶くんに会いたかったのよぉぉぉっ♥いい、すごくいい、梶くんが私のことを殺そうとしている。震え上がるほどのバチバチとした殺気、威圧、憎悪を私にだけ向けてくれている!!最高よ、愛しているわ、貴方の全てが欲しい!!私だけのものにしたいっ!!好きなのぉ・・・殺したいぐらいに!!」


 美月が桜が使っていた大型銃の召喚機を取り出すと、全身が燃え上がる炎のような体毛に覆われて、勇ましく翼を広げている怪鳥をイメージした甲冑のミニチュアが入っているケースを装填する。


 ≪魔導闘衣(アーマード・)装填(チャージ)!!フレスベルグ!!≫


 「・・・変身!!」


 ≪魔導闘衣装着(チェンジ)・フレスベルグ!!バーニング・デストロイヤー!!≫


 死者を飲み込む大きな口と、巨大な翼を持つ伝説の怪鳥【フレスベルグ】。

 血のように赤い甲冑を全身に纏い、左手には細身の刀剣型の武器が握られている。

 彼女が大きく腕を振るうと、背中から大きく燃え盛る炎の翼が飛び出して広がった。


 「・・・燃え上がる紅の心火しんか。炎の騎士フレスベルグ・・・!!」


 「トーマ・・・」

 

 「・・・ごめん、レベッカさん。コイツだけは、僕が決着をつけなくちゃいけないみたいだ」


 『闘衣召喚!!ヘルハウンド!!』


 「・・・変身!」


 ヘルハウンド・ナイトの宝箱を起動させて、バックルに装填する。


 鍵を回し、紅蓮の炎が全身を覆い尽くしていく。


 僕は全身に炎を纏ったまま飛び出した。


 「・・・行くぞ」


 『烈火の魔狼!!ヘルハウンド・ナイト・・・ドレスアップ!!』


 ガキィィィン!!


 僕が渾身の力を込めて振るった大剣の一撃を、雁野が刀剣で受け止めた。


 その反動で身体を回転させながら、逆刃さかばを雁野の身体に叩きつけてそのままありったけの力を込めて振るった。


 雁野の身体は浮き上がり、そのままものすごい勢いで回転しながら吹き飛んでいく。

 

 玉座の間の扉に全身を叩きつけられて、木製の巨大な扉がへし折られて床に転がっていく。


 「・・・ちっ」


 雁野の身体がステンドグラスに叩きつけられて、高い音を立てて粉々にガラスが砕け散る。


 「・・・ふうん、なかなかやるじゃない」

 

 光を受けて反射するガラスの破片。


 雁野は背中から炎の翼を大きく広げて態勢を立て直すと、中庭の上に悠然と降り立った。


 僕も中庭に降りて、再び身構えた。


 「・・・なるほど、勇者の力っていうのも面白いわね。これなら思う存分戦いを楽しむことが出来そうね」


 「・・・それはよかったね!」


 ガキィン!ガキンッ!!ガキィィィン!!


 大剣の刃と刀剣の刃が激しくぶつかり合い、火花を散らせる。


 まるで舞うように、無駄な動きなど一切なしで、お互いに相手の急所を狙って攻撃を繰り出し、刃と刃がぶつかり合い、火花と金属音を散らしながらぶつかり合う。


 「喧嘩なんて嫌いだ。勝っても負けても結局自分が傷つくだけの虚しい戦いなんてもう二度とやりたくなかった。でも、お前だけは絶対に許せない。倒さなくちゃいけないって今は思っている!!」


 「ウフフフ・・・、それでいいのよ。さあ、楽しみましょう!二人きりの殺し合いを!!」


 どちらかが死ぬまで、決着がつくことのない戦い。

 いつかは、こういった戦いをどうしてもしなくちゃいけない時が来ることなど分かっていたはずなのに。負けたら死ぬ、勝っても何も得られるものなどないということを分かっているのに、迷いが消えない。


 でも、今だけは迷いを全てかなぐり捨てて、戦う!!


 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


 一方、その頃。


 王宮の中に入り込んだ桜と花桜梨は、変わり果てた中庭の光景に言葉を失った。


 事切れている騎士たちの変わり果てた姿。

 美しかった中庭に置かれていた彫刻のほとんどが粉々に吹き飛び、普段は見る者の心を癒す美しく手入れされていた花壇や緑豊かな芝生などが踏み荒らされて見る影もないほどに荒れ果てていた。


 「桜、この先に雁野がいる!!」


 「分かった。もうアイツを野放しになんて出来ない。オレたちがアイツを仕留める!!」


 「変身!」

 「変身!!」


 緑色の稲妻と黄色の風が中庭に吹き荒れて、桜と花桜梨がそれぞれ騎士の甲冑を身に纏いながら大地を蹴り飛ばして、美月の下へと向かって走り出した。


狂乱の限りを尽くす美月に、斗真もついに覚悟を決めて戦いを挑みます。


そして次回、主要登場人物の中からついに犠牲者が・・・!!

斗真は美月の暴走を止められるのでしょうか。そして誰が犠牲になるのか。


次回もよろしくお願いいたします!!


ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。



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― 新着の感想 ―
[気になる点] そんな狂犬まがいに暴れた過去があるなら 何で斗真はプロローグでその時みたいに立ち向かわなかったのだろう? 半殺し状態にする事を「殺す」と表現する いわゆる子供の喧嘩とは違う、本気で命狙…
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