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第八話「暗黒の仕事人・キャットナイト~リュエル街道の戦い~」

いつも拙作を読んでいただき、本当にありがとうございます。

今回、斗真の新しい女装・・・もとい新しいコスプレ変身を登場します。

どうぞ、よろしくお願いいたします。

 翌日。


 昨夜の吹雪が嘘のように、雲一つない青空が広がっていた。

 降り注ぐ太陽の光を反射して、キラキラと光り輝く銀色の絨毯のような雪原に敷かれたリュエル街道を、僕たちを乗せた馬車が目的地の【フレップ】に向かって走っていく。


 「一昨日、この近くにあるグミの村で魔王軍討伐の任務を受けていた勇者パーティーが全員惨殺されたそうだ」


 新聞を読みながら、アイリスさんが眉間にしわを深く刻んだ。その殺し方はあまりにも残酷で、全員が完全に炭となるまで身体を焼き尽くされるというものだったそうだ。


 「犯人は長い黒髪の女だったそうね」


 「幕ノ内たち以外にもいたんですね、勇者って」


 「ああ、魔王軍が人間界に侵略を仕掛けようとしていると言って、世界各国で選ばれた勇者が次々と現れているそうだ。これだけたくさんの勇者が出てくると、逆にありがたみがなくなると思うがな」


 「ていうか、勇者って結局は国のパシリじゃないですか。もしくは殺され要員。魔王軍との戦いの口実のための生贄。ろくなもんじゃないですよ」


 「・・・トーマ、かなり勇者に対するヘイトが溜まりまくっているわね」


 「そりゃそうだろう。クロスの勇者様に命を狙われて殺されかけたわけだしな」


 アイリスさんたちが僕のことを見て何か話しているようだけど、特に気にするような内容ではないだろう。僕はカバンからこれまでに作ってきた変身用の宝箱を取り出して整理していた。


 「・・・・・・これが、トーマの魔道具?」


 ビビ姉が僕の背中におぶさり、首だけを前に出して話しかけてきた。

 僕のことを世界に二つとない最高級品の抱き枕だと言って、四六時中そばから離れようとしない。

 そのため、現在の僕はビビ姉をまるで赤ちゃんのようにおんぶをしている状態だ。


 アイリスさんたちが鬼のような形相になって引きはがそうとしたけど、ビビ姉は死んでも離さないと言って、僕の身体に両手両足をひっかけてアイリスさんとグリゼルダさんの二人がかりでも引きはがせなかった。


 現在、僕が持っている宝箱は・・・【ヘルハウンドナイト】、【ハヌマーンナイト】、【ストリクスナイト】、そして昨日の夜に完成させたグリゼルダさんの魔石から加工した緑色の宝箱と、ビビ姉の魔石から加工した青色の宝箱だ。


 その時、馬車が急に止まった。僕は思わず前のめりになりそうになるが、何とかこらえた。


 「・・・・・・きゃー」


 「ビビ姉!!」


 ビビ姉が反動で飛んでいったかと思うと、アイリスさんのおっぱいに頭を挟まれるようにしてめり込んでいた。


 「ビビ、大丈夫か!?」


 「・・・・・・乳牛のおっぱいのおかげで無事です」


 「誰が乳牛だ!?私の胸はクッションではないぞ!!」


 「それよりも、外で何かあったみたいね!」


 僕とグリゼルダさんがいち早く馬車から顔を出して、外の様子をうかがう。

 すると、300メートルほど先に雄々しく生やした二本の角を持つ牛の頭とがっしりとした筋肉で覆われている人間のような身体を持つ魔物【ミノタウロス】と、全身を銀色の毛並みで覆い、鋭い爪と大きく裂けた口に生えた無数の牙をぎらつかせている【アイスドッグ】、さらには全身の皮膚が緑色をして、筋肉質の身体と巨大なこん棒が特徴的な【トロール】がこっちに向かっているのが見えた。


 「あ、アイツら、この辺りで旅人を襲っている魔物たちだ!!」


 よく見ると、近くには襲撃された別の馬車の残骸が無残に打ち捨てられていた。おそらくこの馬車に乗っていた人たちはアイツらにやられてしまったのかもしれない。僕たちを見つけると、ニヤリと醜く歪んだ笑みを浮かべて、地面を揺らしながらこっちに向かってものすごい勢いで突き進んできた。


 「魔物か!」


 「よっしゃあ!!戦闘開始だぜ!!全員配置につきなっ!!」


 「・・・・・・面倒くさいから私はパス」


 「僕も行きます!!」


 「・・・・・・前言撤回、お姉ちゃんのカッコいいところ見せてやる。ふんすー」


 「・・・貴方が自分から戦いに出ていくなんて・・・動機は不純だけど、まあいいわ」


 「危ないから隠れていてください!!」


 御者さんと馬車を避難させると、僕はベルトを腰に押し付けて装着し、緑色の宝箱を取り出した。


 「新しいコスプレ変身か!?」


 「そういう風に言うのはやめてください・・・!」


 レベッカさんの身もふたもない一言が胸に突き刺さる。


 「変身!!」


 窪みに宝箱を装填すると、鍵のギミックを回し、宝箱の蓋が開いた。


 『闘衣召喚!!ワーキャット!!』


 ベルトのバックルから渋くて低めな男性の電子音声が鳴ったかと思うと、足元の影が膨れ上がり、僕の身体を飲み込んだ。漆黒の闇が僕の両腕や両脚にまとわりつくと黒く光る防具に変わり、手の先の爪がギラリと光を放つ黒い爪に変わっていく。そして、僕の頭には黒い毛並みに覆われた猫の耳が生えて、身体は女の子の身体になったかと思うと露出度の多いミニスカートの忍者服を身に纏っていく。お尻からも猫の尻尾が飛び出して、口元を隠す緑色のスカーフを巻き付けて変身が完了した。


 『暗黒の仕事人・・・キャット・ナイト・・・ドレスアップ!!』


 「・・・・・・おおおおおお、トーマが女の子の身体になった」


 「今度は猫耳ニンジャか!!しかし相変わらずエロくてイイ身体してるよな~!!」


 レベッカさん、あとでグーでシバく。


 「・・・・・・ムチムチでエロい身体をしているのに、恥じらう初心な仕草・・・・・・いい・・・ムラムラするぜぃ♥・・・・・・さすがは私の弟分・・・・・・あとでその姿のままで一緒に添い寝を所望する。朝まで色々と揉み放題、イチャイチャチュッチュッ、ペロペロし放題のラブラブプランでいいね?」


 ビビ姉、ちょっと何を言っているのか分からない。


 「グリゼルダさん、一気にケリをつけましょう!!」


 「そうね!」


 僕は片手に4本ずつ、影で作り出したクナイを取り出すとそれをトロールたちに向けて投げ放った。

 

 クナイはトロールたちに向かって真っすぐ飛んでいき、ミノタウロスが巨大な戦斧で薙ぎ払おうとするが、斧の刃に当たった瞬間。


 ドォォォォォォン!!


 クナイが大爆発し、戦斧の刃には無数のひびが入り、風が吹くと斧の刃がサラサラと光りながら消えていった。ミノタウロスは自分の獲物が粉々になったことに目が飛び出すほど驚いていた。


 「そうか、このクナイは爆弾なんだ。それなら、遠慮なくどんどん投げちゃえ!!」


 ポイポイポイ、とクナイ型爆弾を作っては投げつけ、作っては投げつけまくり、そこらじゅうで雪が舞い上がった。


 『モオオオオオオッ!?(この女、マジで頭がおかしいんじゃねえか!?)』


 『ワオオオオオンッ!!(嫌だーっ!!どうしてちょっと襲ったぐらいで、爆弾の雨あられを食らわなくちゃいけないんだっ!?)』


 ドォォォォォォン!!


 ドカァァァァァン!!


 チュドォォォォン!!


 『グオオオオオオンッ!!(も、もう、嫌だぁぁぁっ!!助けて、母ちゃんーーーっ!!)』


 「含沙射影がんしゃしゃえい・闇魔法・黒猫の殲雨(スナイパー・キャット)!!」


 『モ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ーーーッ!!(もうこうなったら、ヤケクソだぁぁぁっ!!)』


 『ワ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ーーーン!!(やっちまえーーーっ!!)』


 トロールはおしりに火がついて、涙を流しながらものすごい大声を上げて地面をドスドスと揺らしながら走り去っていった。


 ミノタウロスが戦斧を振り回しながら大地を揺らしてものすごい勢いでこっちに向かって走り出すと、それに続いて、アイスドッグが懐から大きなナイフを取り出してブンブンと振り回しながら走り出した。


 「いっけぇぇぇぇぇぇっ!!」


 一本のクナイを投げつけると、クナイが次々と分裂していき、無数のクナイがミノタウロスたちに向かって降り注いだ!!


 ミノタウロスたちは必死でクナイを吹き飛ばそうとするが、クナイの一本がミノタウロスとアイスドッグの身体に当たった瞬間。


 ドカァァァン!!


 ドカンドカンドカンドカンドカンドカーーーーーーン!!


 『『ギャアアアアアアアアアアアアーーーッ!!』』


 数百本のクナイが次々と爆発を起こし、闇がいくつも爆発した。


 そして、全身から煙を放ちながらボロボロになったミノタウロスとアイスドッグが煙の中から現れると、その場でついに倒れこんだ。


 しかし、そんな彼らの前に、サクサクと忍び寄る死神の姿があった。


 「・・・ちょうどいい。昨日の夜はあまり寝てなくてストレスが溜まりまくっていてな。お前たちでスッキリするとしようか」


 「合縁奇縁・・・私たちと出会ったのが運の尽きね」


 「さ~てと、そっちから仕掛けてきたんだ。たっぷりと楽しもうぜぇ、なあ?」


 「・・・・・・どっちが魔物なのか、もはや分からない」


 顔面蒼白で全身から汗の玉を噴き出し、もはや目に涙を浮かべて必死で命乞いをし始めたミノタウロスたちに対して、レベッカさんたちは悪鬼羅刹のような凄惨な笑みを浮かべていた。


 ああ、これもう許すつもり全くないな。

 まあ、これまでにもたくさんの旅人たちを襲ってきたわけだし、その報いを受ける時が来たのだろう。


 「・・・南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏・・・」


 「・・・・・・トーマ、何それ?」


 「僕たちの世界のお経です」


 「・・・・・・おお、それなら私も。ナームー」


 ≪ただいま、ミノタウロスとアイスドッグがレベッカさんたちにボッコボコにされております。しばらくお待ちくださいませ≫


 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


 30分後。


 もはやモザイク処理でもかけたほうがいいのではないかと思われるほどに、顔の原型を保たないほどに殴られたミノタウロスとアイスドッグは魔石を抜き取られて(生きている状態でも専門の魔法を使えば取り出せることが出来るらしい)、縄に縛られた状態でハスカップから駆けつけてきた騎士団に引き取られていった。


 「ミノタウロスの魔石と、アイスドッグの魔石だ。トーマ、何かの役に立つかもしれん。持って置け」


 「ありがとうございます!でも、アイリスさんたちが倒したのに、僕がもらってもいいんですか?」


 「まあ、タダでとは言わんさ。・・・ビビアナには【ビビ姉】と言っているのに、私のことは【アイリスさん】だなんて他人行儀で呼ぶのはやめて欲しい。今から、私のことは【お姉ちゃん】と呼びなさい。いいか、これは命令だ。副隊長命令だ。私のことを【アイリスお姉ちゃん】と呼びなさい!」


 ど、どうしよう、アイリスさんの目がマジだ・・・!!

 ここでお姉ちゃんと呼ぶのは恥ずかしいけど、でも、アイリスさんがそこまで言うなら・・・。


 「・・・わ、分かったよぅ。・・・・・・アイリス、お姉ちゃん!」


 「・・・我が人生に一片の悔いなし・・・ゴフォォォッ(吐血)」


 「ええ!?ど、どうしたの、アイリスお姉ちゃん!?いきなりそんな血をいっぱい吐き出して!?」


 アイリスお姉ちゃんがふるふると震えたかと思うと、突然鼻と口から同時に血を噴き出してそのままアイリスお姉ちゃんは倒れこんだ。もはや致死量は行くんじゃないかと思えるほどの大量の血だまりの海に沈みながらも、アイリスお姉ちゃんは満面の笑顔で倒れていた。


 「・・・・・・どうするの、あの乳牛」


 「・・・・・・適当にその辺に埋めておきましょうか」


 「・・・・・・了解」


 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


 トロールは必死で山奥に続く道を走り、走り、足がもつれつつも必死で走り出す。


 まさかこんなことになるなんて。

 でも、今度は上手くやれる。

 たまたま今回は相手が悪かっただけ。

 

 ドスッ。


 そんなことを考えながら走っていたトロールの胸を、一本の槍が刺し貫いた。


 トロールの身体が糸の切れた人形のように倒れこみ、二度と動かなくなった。


 「・・・ご苦労様。もう、楽になっていいよ」


 槍が水に変わり、雪に赤と灰色のシミが広がっていく。

 トロールの遺体を見下ろしながら、松本千鶴は無表情で、抑揚のない声でトロールの死を悼んだ。


 「・・・桜くんは梶くんを連れ戻そうとしているけど・・・やっぱりよくないよね」


 木の陰に隠れて、千鶴は眼鏡越しに冷たい殺意と憎悪の闇が渦巻く瞳でじぃっと馬車に乗り込んでいる斗真を見る。感情というものがまるで感じられない、そもそもそういったものが最初からない人形のような無機質な表情だった。


 「・・・こっちがいらないって切り捨てたのに、やっぱり必要になったから連れ戻そうって、それはいけないね」


 抑揚のない独り言に、徐々にドロドロとした闇が込められていく。


 「・・・勇者はやっぱり・・・正義の味方じゃないといけないよね。正義の味方は悪い人を倒さなくちゃいけないよね。・・・正義の味方にとって邪魔な人はみんな悪い人だよね。つまり、梶くんは倒さなくちゃいけない人間だと思うよ。うん、多分きっとそうだよね」


 正義の味方である自分は常に正しくなければならない。

 勇者である自分は悪を倒し、世界を平和にしなくてはならない。

 それが、自分が勇者として選ばれた理由なのだから。


 自分はいつだって、正義の味方で、どんな時においても正しい存在でなくてはならない。


 だから、自分が邪魔だと思った人間や魔物は全て倒すべき【悪】なのだ。


 「・・・桜くんには悪いけど、とりあえず梶くんには死んでもらおうかな。きっとそれが正しいことだと思うし」


 あまりにも身勝手過ぎる危険な動機、そしてそれをあくまでも正義だと信じている独善的な思考回路。

 松本千鶴という女性は、自分にとって邪魔な人間や対象は全て悪であり、それを排除することに対しては一切悪だとは疑うことのない、人間としての感情が欠落している危険人物だった。


 そして、自分の正義の味方のイメージを損なわせないためなら、トロールたちを自分のスキル【催眠】で操って、集団で斗真を一斉に倒そうとする卑怯な行為でさえもあくまでも作戦と見なし、失敗したトロールを容赦なく処分することが出来る。彼女の中でそういった行為はあくまでも正義の味方の戦いとして正しいのだと疑うことがない。


 親友であり、彼氏である桜でさえも、彼女の異常性には気づいていなかった。


 美月とは違う意味での、人の心を持たない「化け物」である。


 「・・・桜くんたちと合流しなくちゃ。・・・ごめんね、君たちのこと、やっぱり邪魔だったから死んでもらうことにしたよ。だから・・・バイバイ」


 トロールの遺体に謝罪の意思などまるでない、身勝手な言葉をあくまでも心からの謝罪と思い込んで千鶴は涙を流してつぶやき、その場を立ち去った・・・。

梶 斗真 設定その2


黄色の宝箱(雷属性)を使用すると、髪の毛が金髪の七三分けのショートヘアーに変わり、瞳の色が金色になって眼鏡をかけた知的でクールな美女の姿に変身する。


緑色の宝箱(闇属性)を使用すると、黒い髪に緑色のメッシュを編み込んだ、短めのポニーテールになり、瞳の色が緑色に変わる。忍者のように素早い動きや忍術を使うことが出来るようになる。


そして水の勇者【松本千鶴】も作中人物の中でもかなりの危険人物であることが判明。そしてそんな彼女の正体を彼氏である桜は知りません。


勇者に選ばれた人間って、ほとんどがヤバい人間ばかりです。


次回もよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[一言]  なんかビビアナとアイリスが"色欲"に支配されていませんか?(笑)  それと、ちょっと思ったのですが、千鶴と斗真ってどこか似てますよね。  一度"敵"と見定めたら、絶対に容赦しないところな…
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