第七話「ビビアナさんは不思議ちゃん~はじめての・・・~」
いつも拙作を読んでいただき、本当にありがとうございます。
新作が描きあがりましたので、どうぞよろしくお願いいたします。
登場人物紹介で、ビビアナのプロフィールを更新しました。
ビビアナさんと再会を果たした後、僕たちは衛兵さんたちが紹介してくれた宿に飛び込むようにチェックインをした。灰色の空からははらり、はらりと舞うように雪が降り始めてきた。
最初は羽毛のようにふんわり、ふわりと落ちていた雪が、1時間ほど経つと激しい雪と風が吹き出し、窓ガラスを打ち付けてくるほどになった。外を見ると町の街灯に目の前が見えなくなるほどの吹雪が照らされている。
「・・・本当に吹雪いてきちゃいましたね」
「う~っ、寒くなってきやがった。オレ、寒いの苦手なんだよな」
「よく言うな。雪が降ってきたら真っ先に外に飛び出してはしゃぎまくっているくせに」
「薄着一枚で飛び出していくんだもんね。よくそれで今まで風邪とか引かなかったわよね」
「オレ、18年間生まれてこの方一度も風邪なんて引いたことがねえぞ!すげえだろ!!ニャハハハ♪」
アイリスさんが「まあ、何とかは風邪をひかないとは言うからな」と言って苦笑するが、レベッカさんは満面の笑顔を浮かべて胸を張って喜んでいた。うん、アイリスさんの言葉の意味が分かっていないみたいでよかった。
「・・・・・・大体の事情は理解できた」
ビビアナさんが眠たげな表情で、アイリスさんとグリゼルダさんが説明してくれたここ最近に起こった出来事を聞き、少し考えてから言った。
「・・・・・・私も手伝おう」
「おっ、やる気マンマンじゃねえか!」
「・・・・・・依頼金を踏み倒された上に、仲間をこんな目に遭わされて、黙っていられるほど腑抜けじゃない」
「全くいつもはマイペースでグータラしまくっているくせに、ちゃんと仲間のことは考えているんだから。そういうところが妬ましいわ」
「・・・・・・お前もそういうところは変わっていないようで何より」
グリゼルダさんが照れくさそうに、頬を赤く染めて微笑んでいた。
「・・・・・・それで、この子が8人目の隊員?」
「おう、トーマって言うんだ!魔法裁縫師で、何と異世界人なんだぜ!!」
「は、初めまして。梶斗真と言います。よろしくお願いいたします!!」
「・・・・・・【アイスドワーフ族】のビビアナ・ブルックス。好きなように呼ぶといい」
アイスドワーフ族とは、雪原地帯や雪山に生息する魔物の一族で体内に無尽蔵に湧き上がる冷媒エネルギーで空気中の水分を瞬時に凍らせて作り出した氷の塊を利用して、武器や防具、美しい細工の装飾品を作り出すことを生業としている。見た目は幼い子供のような姿をしているが、もうれっきとした成人の女性らしい。
「・・・あの、ビビアナさん。その寒くないんですか?そんな薄着じゃ風邪引いちゃいますよ?」
「・・・・・・私は元々アイスドワーフだからこの程度の寒さぐらい、どうってことはない」
「だが、そんな裸同然のような薄着で外に出るわけにもいくまい。まさか、外に出るたびに魔力を消費して巨大な甲冑で武装するというのか?」
「・・・・・・あれなら、すぐにでも戦えるし、いちいち着替えるのが面倒くさい」
うーん、そう言われてもいちいち魔力を使って甲冑を作り出して、鎧姿で街を歩いていたらものすごく目立つわけだしな。
そう思っていた時、僕はあることを思いついた。
幸い、カバンの中にはさっきビビアナさんが封印されていた魔石の欠片をいくつか入れていた。そのうちの一つを取り出すと、炎の聖霊石や風の聖霊石、木の聖霊石などを取り出してテーブルに置いていく。
「おっ、何かまた面白そうなものを作るのか!?」
「ええ、ビビアナさんのお近づきのあいさつ代わりに、ちょっとしたものを作りますよ」
水色のきらきらした神秘的な光を帯びた魔石を糸に変えてほぐすと、僕はその糸と他の聖霊石をほぐして取り出した糸を紡ぎ、糸車を回して糸を布に仕立てていく。布地はふんわりとしていて肌触りがいい上質のものに仕立てて、保温性と通気性が良くって、撥水効果もばっちりなものを作る。
「あの、好きな動物とかありますか?」
「・・・・・・熊。熊は山の神の化身。アイスドワーフが神の使いとして崇めている動物」
そうか、そういえば彼女の左肩の後ろに刻まれていた紋章も確か【熊】だったっけ。
水色の毛並みは光を受けて反射し、なめらかですべすべとした手触りをしている。チャックで簡単に着替える事が出来て、これを着れば夏には涼しく、冬には暖かく快適な温度を保つことが出来る上に、木の聖霊石から放たれる植物の成分によって疲れや体力と魔力の消費を通常の3分の1に抑える事が出来る。そして、僕のつたないイメージをフル回転させて、出来るだけ可愛らしい【熊】をイメージさせたものを織り上げていく。
20分ほど経った頃、ようやく完成した。
「・・・出来ました!これ、僕からのプレゼントで外出時にも使えるし、部屋着にも使えるカバーオールの白熊のフード付きの【着ぐるみ】です!」
水色の魔法石の影響で毛並みは雪のように真っ白なものに変わってしまったけど、何とか可愛らしいクマのデザインの着ぐるみが完成した。何故着ぐるみを作ったのかというと、これを教えてくれたのはグリゼルダさんだった。
『アイツはよく動物の着ぐるみを好んで着ていたわ。時々訳の分からない着ぐるみを見つけたりしてはそれを買って私たちを驚かしたりすることもあったのよ。まあ、とっつきにくくて話しかけにくいと思った時には、着ぐるみの話をすれば大抵は気分よく答えてくれると思うわ』
「・・・・・・おお?」
ビビアナさんが目をかっと開いて、着ぐるみを舐めまわすようにじぃ~っと見回している。
「・・・・・・おおお?」
そして、ビビアナさんが着ぐるみのジッパーを下ろしてゆっくりと着込んだ。
「・・・・・・おおおおおお!」
ビビアナさんの表情が興奮しているかのように目がキラキラと輝きだした。
「・・・・・・すごく、着心地がいい。まるで上質の羽毛布団で寝ているような錯覚さえ感じるほどの柔らかくてすべすべとした手触り・・・!!もこもこしていて暖かくてお布団にくるまっているようなこの温もり・・・!!・・・・・・体力や魔力も回復していくのが分かる。これを着て寝るだけで体力も魔力も全回復することが出来る・・・!!」
よかった、どうやら大成功のようだ、この【着ぐるみ】は。
部屋着や外に出るときにも着ていけるデザインのものも作れば、着ていて休んでいるだけで回復魔法をかける必要もなく、体力と魔力を自動的に回復させることが出来るものだ。
「これを着た状態で甲冑をイメージすれば、さっきの甲冑を装備することが出来るようになっています」
「・・・・・・どれどれ・・・・・・おおおおおおおおお!!これは、すごい!!」
試しにビビアナさんが左手だけに魔力を流し込むと、左手だけが先ほどの甲冑の一部を装備したものに変わった。全身を武装するだけではなく、身体の一部を甲冑で武装したものに変える事が出来るのだ。
「・・・・・・使えるだけじゃない・・・・・・私の大好きな熊をイメージして・・・・・・実用性も高いうえに着心地が良くって、これを着ているだけでまるで雲の上に寝そべっているかのような気分になれる・・・・・・素晴らしい・・・・・・!!」
ビビアナさんは興奮しているのか、鼻息を荒くして僕に顔を近づけてきた。
そして、僕の身体におもむろに抱きしめてきた。
僕の胸に顔を埋めて、両手を回してまるでさば折りでもするかのように強く抱きしめてくる。
しかし、彼女の動きが急に止まった。
そして、ギギギ・・・という音を立てながら僕の顔を覗き込むようにして見上げる。
彼女の目はさっきよりもさらに大きく見開かれていて、フルフルと震えていた。まるで信じられないものを見ているかのように愕然とした表情を浮かべている。
「・・・え?あ、あの、どうかされましたか?」
「・・・・・・素晴らしい!」
「・・・え?」
「・・・・・・君のカラダだよ・・・・・・体温が程よく暖かくて・・・・・・いい匂いがして・・・・・・肌もすごく綺麗ですべすべとしていて・・・・・・すんすんすん・・・くんかくんか・・・いい・・・気持ちいい・・・最高だよ・・・君のカラダ・・・ああ・・・こうしているだけで・・・身体が火照ってくる・・・すごく・・・蕩けそうだ・・・♥」
あの、すみません。
ビビアナさんの瞳がなぜかウルウルとしているような感じがするのですが、なぜでしょうか?
それに声のトーンが艶っぽくなってきたというか、ちょっとエッチな感じの声になってきているんですけど、どうしてかな!?
「・・・・・・気に入った」
「はい?」
「・・・・・・トーマ、私はそういう風に呼ぶ。だから、私のことは・・・【ビビ姉】と呼んで欲しい。今日から私もトーマのお姉ちゃんになる・・・・・・」
「ふええええええっ!?」
「・・・・・・呼んで、私のことを【ビビ姉】と呼んで。お願い」
うっ・・・!!
そんな、ウルウルとした目で見上げてそんなことを言われたら、すごく恥ずかしい!!
で、でも、もしかしたらこれはビビアナさんの方から打ち解けてきてくれているのかもしれないし。
「・・えーっと、その、ビビ姉・・・?」
その直後、僕の頭が急に引き寄せられたかと思うと、目の前にビビアナさんの顔がくっつきそうになるほど迫ってきた。
「・・・・・・トーマ・・・・・・いい子・・・・・・ちゅう♥」
ぷちゅっ♥
え・・・?
僕の唇に、暖かくて、柔らかいものが押し付けられたけど、これって、あの、もしかして・・・。
僕の目の前には、自分の唇を舌で舐めながら、口元の端をわずかに上げて、ビビ姉が妖艶に微笑んだ。
「・・・・・・その反応は・・・・・・初めてだった?・・・・・・女の子とのキス」
「・・・・・・・・え?」
「・・・・・・初物、ゲットだぜ。いえーい」
え、ちょっ、それって、僕・・・ビビ姉と今、キスしたってこと?
それに、僕、これが生まれて初めて女の人とキスしちゃったってことぉぉぉっ!?
「おお・・・っ!?ま、マジか、唇と唇でチューしたのかっ!?ふえええええっ!?」
レベッカさんが顔を真っ赤にして、なぜか慌てふためいていた。
「そ、そ、それって確かそういう風にチューとかしたら、その、こ、こ、子供とか出来ちまうんだろっ!?」
「いえいえいえいえいえいえいえ!?ちょっと話がぶっ飛び過ぎですからねっ!?」
いつもは豪胆なレベッカさんが真っ赤な顔であたふたしているのは、意外な一面だった。もしかして、そういったことに関しては初心というか慣れていないのかもしれない。そんな彼女のことがちょっとだけかわいく思えた。
「・・・ビビアナ・・・貴様・・・何をしてくれた・・・?私の可愛い弟に・・・私でさえまだ手の甲にしか口づけをしていないのに・・・・・・貴様はいきなり・・・・・・口にした、だとぉ・・・?」
「・・・妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい」
ぞくっと、寒気が全身を駆け巡る。
アイリスさんたちの方を見ると、アイリスさんとグリゼルダさんの全身から黒い影のようなものがもやのように湧き上がり、二人の目の色がまるで血のように真っ赤な色になってギラギラと輝きだした。しかも、彼女たちは目から血の涙を流していた。
マジでヤバい。これ、逃げなかったら僕死ぬわ。
「・・・くくく・・・許さん・・・許さん、絶対に許さん、私の可愛い弟を誑かした罪は重いぞ・・・その命・・・今すぐに天に帰してもらおうか・・・なあ、ビビアナァ・・・!!」
「・・・妬ましい恨めしい憎らしい妬ましい恨めしい憎らしい妬ましい恨めしい憎らしい、ブチ、ブチ、ブチ殺す・・・!!」
あのー、グリゼルダさん!?貴方確かこのメンバーの中では唯一の常識人ではありませんでしたか!?
そんな恐ろしい笑顔で、クナイを取り出して今にも投げつけようとするのは勘弁してください!!そしてアイリスさんもなぜに武器の弓矢を取り出してこっちに向けていらっしゃるのでしょうか!?
「敵前逃亡ぉぉぉっ!!」
「待てぇぇぇっ!!ビビアナをそこに置いていけ、トーマァァァッ!!」
「妬ましい憎らしい恨めしい妬ましい憎らしい恨めしい妬ましい憎らしい恨めしい!!」
部屋の扉を開き、僕は僕の身体にがっしりとしがみついて離れようとしないビビアナさんをお姫様抱っこしたままの状態で廊下に飛び出すと、後ろからこの世のものとは思えない恨みと怒りと悲しみに満ちた声を上げて、アイリスさんとグリゼルダさんが鬼のような形相で追いかけてきた。
「何でこうなるのさぁぁぁぁぁぁっ!!」
「・・・・・・トーマ・・・・・・これからも抱き枕として可愛がってあげる」
神様ァァァ!!アンタ、僕のこと絶対に嫌いだろっ!?
その後、旅館の主人に「他のお客様のご迷惑になるような行為は困ります!」と怒られたのは言うまでもない。
グリゼルダもやっぱりポンコツというか、このメンバーの一員だったんだなと改めて認識される展開にしました。本当にまともだったらとっくに見切りをつけて離れることが賢明ですし。
ビビアナのキャラはいかがでしたか?
次回、斗真たちは気持ちを切り替えて改めて任務に取り掛かります。
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。
次回もよろしくお願いいたします。




