第六話「脱獄大作戦!③~大地のオズボーン~」
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「くそっ、こうなったら、力ずくでもついて来てもらうぜ!」
「こっちが大人しくしていれば、調子に乗りやがって!!」
有馬と斎藤の瞳が不気味な光を放ったかと思うと、黒い光に包まれて、異形の姿へと変わった。
有馬は【アルマジロ】をイメージした、全身を甲冑で覆っている【リビングアーマー】。
斎藤は【サイ】をイメージした、強靭な筋肉の鎧と、鼻先に生やした巨大な角が特徴的な【ジャガーノート】の姿になると、一斉に襲い掛かってきた。
「・・・喧嘩を売ったのはそっちやからな?覚悟はええな?」
長槍を構えると、オリヴィアさんの細い目がギラリと光り、獰猛な笑みを浮かべた。
「女の槍ごときで、俺様の甲冑が破れると本気で思っているのか!?コテンパンにして、裸にひん剥いて、楽しませてもらうぜぇっ!!」
リビングアーマーが大剣を振り上げて、突進を仕掛けていく。
しかし、次の瞬間、オリヴィアさんの姿は消えた。
「え?」
そして、彼女は、土煙を舞い上げながら、リビングアーマーの背後にいた。
「せやから、最初に言うたやろ?覚悟はええな、て・・・」
リビングアーマーの身体には、巨大な穴が空いていた。
身体の中にあった、本体である青い宝石に無数のひびが入り、粉々に砕け散った。
「そ、そんなぁぁぁ・・・!!」
有馬の本体が消滅し、甲冑が地面に落ちて、灰になって崩れ落ちて消えていく。
僕も、一瞬、オリヴィアさんの姿が見えなかった。
相手の急所を見抜き、スピードと突進力を活かして、槍の強烈な一撃を放ったのか。
「・・・あ、有馬!?て、テメェ、よくも!!」
「悪いけど、僕ももう腹をくくったから。覚悟しろよ」
素早く宝箱を交換して、僕はヘルハウンド・ナイトに変身すると、燃え盛る炎を纏った大剣で、ジャガーノートが突き出した巨大なドリルを防いだ。
「くそがあああああああああっ!!」
ドリルを弾かれて、大きくのけぞったジャガーノートの懐に潜り込んで、あごを蹴り飛ばし、そのままの勢いで頭上に舞い上がると、一気に大剣を振り下ろし、ジャガーノートの頭に全力で叩きつけた。
頭蓋骨がきしむ音が聞こえたかと思うと、そのまま、頭から真っ二つに叩き切った。
「・・・う、嘘だ・・・こんなのって・・・嘘・・・だ・・・!!」
ジャガーノートは地面に倒れこみ、そのまま、身体が灰に崩れて、消滅した。
「何やねん、この連中は」
「・・・魔人ですよ。セルマの儀式で怪物になった、僕のクラスメートです」
「何やて!?セルマのヤツ、そないなモンにも手を出しとったんか!?」
「それどころじゃありません。セルマは禁忌と呼ばれている【パラケルススの魔石】の錬成にまで、手を出していたんです。今回も、その魔石を譲り渡すという条件で、四大禁書の【ネクロノミコン】を手に入れようとしているんです」
僕は、スマホを開いて、アイリスお姉ちゃんから、これまでの話を出来るだけ簡潔にまとめて、オリヴィアさんに説明してもらうことにした。
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「・・・・・・なるほどなぁ。それで、300年前の報復も兼ねて、クロス王国とセルマの計画を潰そうとしてるちゅうわけか。やっと理解出来たわ。そら、止めんとエライことになりよるしなあ。せっかくシャバに出られたっちゅうのに、世界が滅亡の危機を迎えるやなんて、冗談やないしな」
『ああ、それで、お前にも力を貸してほしい。もちろん、無料とは言わん。引き受けた依頼を無事解決すれば、陛下や冒険者ギルドから報酬が支払われる』
「おっ、報酬が出るんやったら、話は早いがな。ウチも、参加させてもらいまっせ。タダ働きなんて死んでもごめんやけど、世界の危機を救うっちゅうことになれば、がっぽり稼げそうやないかい♥」
ま、まあ、慈善事業でやっているわけじゃないもんな。
僕も最近、ようやくギブアンドテイクというものが、分かってきたような気がする。
「まあ、とにかくここを出ないと話にならんからな。どないするん?」
「この先に水路があったんです。その水路から出れば、砂漠に出られるみたいなので、まずは外に出ましょう」
「せやけど、それから先が問題でっしゃろ?ここがホンマにあの【ハルク監獄】やったら、昼間は、太陽の光を受けてなべ底のような状態になっとるんや。魔物でさえも、熱と光にやられて、倒れるような危険地帯ですわ」
「歩いて脱出しようとしても、近くの街に着くまでにミイラになってまうで?」
「大丈夫です!僕に、いい考えがあるんです」
材料は一通りそろったし、作り方も頭の中にバッチリ叩き込んでいるから、これで準備は整った!
「ここから出るんやったら、ちょっと待ってもらってもええか?ここにあるお宝らしきモンや、武器とか、全部いただいておこうか♥」
そういって、オリヴィアさんは倉庫に積まれた備品や、宝箱を前に立つと、太ももに刻まれた狐の紋章が、藍色の光を輝きだした。
彼女が手をかざすと、藍色の布のようなものが現れて、彼女が風呂敷のように備品の山にかぶせた。
そして、布を引くと、そこに置いてあったものが全て、綺麗さっぱりなくなっていた。
「えっ!?ちょ、今の、どういうことですか!?あの宝箱はどこにいったんですか!?」
「ああ、この布の中や。ウチだけが生み出せるマジックアイテムでな、これがあれば、大量のお宝も全部いただけるっちゅうわけや♥」
藍色の大地の加護を受けた、狙った獲物は決して逃さない狐。
大地の急所を見抜き、一点集中で放つ突きで全てを破壊し、奪い去る【強欲】な獣。
「これが傭兵団【七人の獣騎士】の槍術士、【大地のオズボーン】の力や」
そういって、オリヴィアさんはニコッと笑った。
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「それで、いったい何を作るつもりなんや?」
「絨毯です!」
「絨毯?」
僕は素材屋で買ってきた材料、鋼の糸、そして宝箱の中から見つけた【浮遊石】というものを浮かばせる効果のある石を使って、さっそく絨毯作りに取り掛かった。
厚手の布を糸にほどいて、糸にほどいた素材と組み合わせて、一気に縫い上げる・・・!!
ステータスを確認すると、渾沌さんや、邪竜セルヴァンスを討伐したことで、僕の魔法裁縫師のレベルが急上昇していた。それによって、僕は新しい道具の【中級の織機】を召喚することが出来るようになった。
さすがに糸車や、簡単なものしか作れない【初級の織機】では、絨毯は作れなかった。
でも、この織機なら、作れる!
頭の中でイメージした絵柄に合わせて、赤、青、黄色、色とりどりの素材の糸を組み合わせて、結んで、縫い上げていく。
「・・・す、すごい、こら、プロの職人でもこれほどの技術を持っとる人は、そうおらんやろ・・・」
「・・・実に見事や・・・!」
(・・・なるほどなぁ。この絨毯とかいうマジックアイテムを作る技術は、そんじょそこらの裁縫師や職人では、逆立ちしても敵わんな。それに、このジャケットといい、靴といい、今の魔法技術でこれほどのものが作れるのなら、相当の腕前の持ち主や)
オリヴィアさん、どうして、僕が作ったジャケットを真剣に見ているんだろう?
ああ、そうだ。あとでオリヴィアさんのジャケットと、探検セット、渡しておこうっと。
(マジックアイテムとしても、これほどなまでのレアな効果のあるものはない。・・・この技術を使えば、ひょっとしたら、今までに見たことのない、ものすごいマジックアイテムを作ってしまうのも、夢やないかもな・・!)
縫い始めてから、30分ほど経っただろうか。
「・・・やっと、完成した・・・!!」
「・・・これは・・・何て見事な絨毯や・・・!!」
「お、王宮にある絨毯よりも、ものすごく、綺麗な絵柄やないかい・・・!!」
完成しました・・・!
ペルシャ絨毯をモデルにして、縫い上げた一枚の絨毯・・・!
これを地面において、魔力を注ぐと・・・!
ふわっ・・・。
「やった、浮いたぁっ!!大成功だ!!」
完成したぞ!
これが僕特製の【空飛ぶ絨毯】だ!
「そ、空飛ぶ絨毯やてぇぇぇぇぇぇっ!?」
「う、嘘やろ、ウチらが乗っても大丈夫なんか!?」
「ええ、耐久度も鋼の糸と、土属性の【魔法の粘土】があったから、頑丈性はバッチリです!」
テントや探検セット以来で、久しぶりに自信作が出来上がりました!
絨毯に恐る恐る、アルビナ王妃様とアンジェリカ王女様、オリヴィアさんが乗り込んでも大丈夫!
そして、全員が乗り込むと、僕たちの周りを光が包み込んだ。
「この光は、太陽の光を反射して、絨毯の上の環境を一定の温度に保つことが出来るんです。だから、太陽の光もへっちゃらですし、寒いところに行っても、冷気を防いでくれるんです」
「ホンマや!この絨毯の上、涼しくて、ええ気持ちや~!」
「まさか、鉄格子やあの素材から、こないなものを作ってしまうなんて・・・!」
「なるほどなぁ。これが、ベアトリクス陛下にも認められた、魔法裁縫師の実力っちゅうわけか」
「さて、ここから脱出しましょうか!」
魔力を通すと、絨毯は長い長い水路を抜けていく。
天井に岩があっても、光の壁で打ち壊して、絨毯は傷一つ負うことなく進んでいく。
ハーピーの羽根を取り込んでいるため、絨毯から噴き出す風の魔力を強くすると、スピードがさらに加速していく。
そして、目の前に光が見えてきた!
水路を抜けると、目の前には黄金の砂漠が地平線の彼方まで続く、幻想的な光景が飛び込んできた。
「よっしゃあーーーーーーっ!!」
「ほ、ホンマに監獄を脱獄してしもた・・・!!」
「やったぁぁぁっ!!やるやないかい、トーマ!!」
そういって、アンジェリカ王女が満面の笑みを浮かべて、僕に抱き着いてきた。
「ウチ、アンタのこと、見直したで!ホンマに、ありがとうな~!!これは、お礼や♥」
ちゅっ♥
「・・・え?あ、あの、その、王女様・・・!」
「・・・ウチ。殿方のほっぺたにチューするの、生まれて初めてやねん♥他の男やったら嫌やけど、トーマやったら・・・その・・・ええよ?」
いやいやいやいや、ちょっと待ってください!?
王女様が、そんな簡単に、お礼にチューとかしたら、まずくないですかね!?
「大した男やないか!ウチも、お礼をさせてもらおうか♥」
ブッチュウ~~~♥
「王妃しゃまっ!?」
あかん!王妃様も、反対側のほっぺたに、何と情熱的なチューを!?
「この場を借りて、改めて、王妃として、そして、アンジェリカの母親として、礼を言わせてもらおうか。本当に助け出してくれて、何とお礼を申し上げればよろしいか・・・!本当に、ありがとうございます!おおきに!」
「アハッ、トーマ、顔が真っ赤になっとる!可愛いなぁ~♥」
あの、アンジェリカ王女様、そんなに腕に胸を押し付けてくっつかないでくれませんか!?
アルビダ王妃様も、大きなおっぱいの間に、僕の腕を挟み込んでがっしりと捕まらないでください!
こんなところを、大アネキやアレクシアさんに見られた日には、僕、今日が命日になりますからぁっ!
「なあ、このまま、拠点に戻るんか?」
あ、そうだ。
大事なことを忘れておりました。
「・・・王妃様、アムレットからも、ここで何かあったら見る事が出来ますか?」
「遠視の魔法でも使えば、見えんこともないと思うけど、どういうこっちゃ?」
「・・・デカい花火を上げてやろうと思っているんですよ」
その時の僕の顔は、きっと、かなりヤバいことになっていたのだろう。
しかし、オリヴィアさんは僕の顔を見て、いたずらっ子のように、にぃっとっ微笑んだ。
「・・・どうせやったら、砦の一つや二つ、落としておいてもええかもなぁ?」
「ああ、なるほど!いきなり王宮にやったら、面倒なことになりますもんね!」
「そういうこっちゃ。砦が陥落したっちゅうニュースは、大陸の注目が一斉にアムレットに向けられるには十分やからな」
「オリヴィアさん、お主も、悪よのう」
「いえいえ、裁縫師様ほどではございません」
さてと、とりあえず、最初の花火を挙げるとしますか。
監獄の上空に浮かび上がると、魔力を操作して、絨毯の裏側にはバチバチと青白い放電が発生して、巨大な電気の球が膨らんでいく。
「アムレット王のアホンダラァァァッ!!死にさらせぇぇぇっ!!」
ドッカーーーーーーン!!
超特大級の稲妻を落として、監獄は光に飲み込まれた。
そして、黒い煙が立ち込めている辺りには、もはや、焦土と化した地面と、建物の残骸のみがわずかに残っている状態となった。
魔力を込めた電撃の威力はどんなもんですかい!
監獄はもはや見る影もなくなっていた。
さてと、まずは一発目の花火を挙げましたが、こんなものではまだ終わりませんよ?
アムレット王、側室、絶対に楽には死なせませんよ?
禁忌にまで手を出して、好き勝手にやらかしたその罪は、きっちりと償ってもらいますからね?
「お、おかん、砦まで攻めてもええんか?」
「まあ、ええんとちゃう?現国王の甘い汁を啜るために、武器の横流しや、横領にまで手を出しとる騎士団なんて、国の恥でしかないわ。その騎士団の部隊が担当しとる砦に、案内したるわ!」
王妃様も、やる気マンマンですな!
よし、王妃様の許可も下りたし、ガンガンやっていきましょうか!
脱獄に成功し、オリヴィアの救出、そして王妃様と王女様を無事保護いたしました。
しかし、それだけでは止まらないのが斗真。監獄を吹き飛ばして、開戦を告げるデカい花火をあげました。やはりメチャクチャ怒っていたようです。
そして、今回完成した【魔法の絨毯】は、今後の冒険でも度々出そうと思っております!
裁縫師だから、空を飛ぶアイテムは絨毯がいいかと思って、今回、作ってみました!
次回もよろしくお願いいたします!




